採用がうまくいかないと、多くの会社はまず「求人原稿が悪いのでは」「媒体が合っていないのでは」と考えます。もちろんそれも重要です。しかし、リクプル編集部が数百件の採用支援を通じて確信していることがあります。採用の難易度は、求人を出すより前から、職種ごとにほぼ決まっているということです。
言い換えると、勝敗の半分は「どう戦うか」ではなく「どの土俵に立っているか」で決まります。そしてその土俵の傾きを、求人を出す前に数字で読む方法があります。有効求人倍率です。
有効求人倍率は「採用難易度の天気予報」
有効求人倍率とは、厚生労働省が毎月公表している「1人の求職者に対して何件の求人があるか」を示す指標です。倍率が1.0なら求職者と求人が同数、2.0なら求職者1人を2件の求人が奪い合っている状態を意味します。
この数字は職種によって大きく異なります。建設・介護・ドライバー・保安といった職種は倍率が高く、慢性的に「人が足りない=奪い合い」の土俵です。一方で事務職のように応募が集まりやすい職種は倍率が低く、「待てば来る」土俵になります。
つまり有効求人倍率は、自社が求人を出す前に「これから立つ土俵がどれくらい傾いているか」を教えてくれる天気予報のようなものです。晴れの土俵と嵐の土俵では、同じ装備で戦っても結果はまったく違います。
ここで大切なのは、倍率を「絶対的な難易度スコア」としてではなく、方向感として使うことです。倍率が2倍を超えるような職種は「基本的に奪い合いで、待っているだけでは母集団が形成されにくい」。1倍前後の職種は「原稿と条件を整えれば、応募は自然に集まりやすい」。この2つのどちら寄りかが分かるだけで、そのあとの打ち手の優先順位は大きく変わります。細かい小数点の数字を追う必要はありません。
同じ「採用単価50万円」でも、成功と失敗に分かれる
ここから、多くの人が見落としている核心に入ります。採用単価の良し悪しは、絶対額では判断できません。
たとえば、ある専門職の採用で「1人あたり50万円かかった」とします。この数字だけを見れば高く感じるかもしれません。しかし、その職種の有効求人倍率が非常に高く、人材紹介会社に頼めば1人あたり200万円級の手数料がかかるような領域だったとしたら、話はまったく変わります。従来手法の4分の1のコストで採用できたことになり、これは明確な成功です。
逆に、応募が集まりやすい職種で1人50万円かかっていたら、それは何かが壊れているサインです。同じ「50万円」でも、土俵の傾きが違えば評価は正反対になる。だから採用単価は、次の2つとの相対で見る必要があります。
- その職種の有効求人倍率(=採用難易度)との相対
- 従来手法(人材紹介などの相場)との相対
この2つを無視して絶対額だけで「高い・安い」を語ると、成功している採用を「コストが高い」と切り捨てたり、たまたま楽な土俵だった採用を「うまくいった」と過大評価したりしてしまいます。
「業界の追い風・逆風」も成果を数倍変える
有効求人倍率という需給の数字とは別に、もう一つ効いてくる要素があります。その職種・業界が求職者から見て「入りたい方向」か「避けたい方向」かという、いわば風向きです。
支援の現場では、成長していて世の中の関心が高い領域の求人は、平均的な原稿でも応募が伸びやすい傾向があります。逆に、きつい・先細りといったイメージがつきまとう職種は、原稿を磨いても応募が集まりにくい。同じ原稿力でも、業界の追い風・逆風で成果が数倍変わるという感覚は、件数を重ねるほど強く実感します。
ここで大事なのは、逆風の土俵で戦うこと自体が悪いわけではないという点です。逆風だと分かった上で、後述するように手法や設計を変えれば十分に勝てます。問題なのは、逆風だと気づかずに「原稿さえ良くすれば」と原稿の微修正だけを繰り返し、時間と予算を溶かしてしまうことです。
逆風の土俵では、原稿改善より先に「手法選択」が勝敗を分ける
採用難易度が高い(有効求人倍率が高い、あるいは逆風の)職種では、打ち手の順番が変わります。まず原稿を磨くのではなく、そもそも検索型の求人広告で戦うべき土俵なのかを先に判断することが重要です。
たとえば、市場に転職者の絶対数が少ない職種では、待ち受け型の求人広告に予算を投じても母集団そのものが形成されないことがあります。この場合、原稿をいくら改善しても応募は増えません。手数料は高くても確実性のある紹介手法や、対象を狙い撃つ広告設計に切り替えたほうが、結果的に採用単価は下がります。
逆に、需給が緩く応募が集まりやすい職種なら、検索型の求人広告と原稿改善が最もコスト効率の良い打ち手になります。土俵の傾きを先に診断し、それに合った手法を選ぶ。順番を間違えないことが、無駄な予算を防ぐ最大のポイントです。
あわせて決めておきたいのが、撤退の基準です。難易度の高い土俵で検索型の広告を試すこと自体は悪くありませんが、成果が出ないまま予算を垂れ流すのが一番危険です。支援の現場では「一定期間まったく応募が動かなければ、原稿をいじり続けるのではなく手法そのものを切り替える」という損切りラインをあらかじめ決めておくことを勧めています。難易度を事前に把握しているからこそ、「この土俵は検索型では厳しいかもしれない」という撤退の判断も、感情ではなく計画として下せるようになります。
求人を出す前にやる「難易度診断」3ステップ
特別なツールは必要ありません。求人を出す前に、次の3つを確認するだけで、立つ土俵の傾きはかなり読めます。
- 1. 職種の有効求人倍率を調べる:厚生労働省の公表データで、募集職種が「奪い合い」か「待てば来る」かの当たりをつける
- 2. 従来手法の相場を把握する:その職種を人材紹介で採ると1人いくらか。これが採用単価を評価する物差しになる
- 3. 業界の風向きを言語化する:求職者から見てこの仕事は「入りたい方向」か。逆風なら、原稿より手法選択を優先する
この診断を挟むだけで、「なぜか採れない」という手探りが、「難易度の高い土俵だから、この手法で戦う」という戦略に変わります。
まとめ
- 採用の難易度は、求人を出す前から職種ごとにほぼ決まっている
- 有効求人倍率は「採用難易度の天気予報」。奪い合いか、待てば来るかを事前に読める
- 採用単価は絶対額で判断せず、有効求人倍率(難易度)と従来手法の相場との相対で評価する
- 業界の追い風・逆風でも成果は数倍変わる。逆風なら原稿より先に手法選択を見直す
- 求人を出す前に「倍率・従来手法の相場・風向き」の3点を診断してから戦い方を決める
自社の求人がなかなか採れないとき、原稿を直す前に一度立ち止まってください。それは原稿の問題ではなく、土俵の傾きに合っていない戦い方をしているだけかもしれません。