社員インタビューの質問例を探している方の多くは、「無難な質問リスト」を求めてはいないはずです。実際に困っているのは、質問はしたのに、当たり障りのない答えしか返ってこなかったという結果のほうではないでしょうか。
採用支援の現場で見てきた限り、その原因はインタビューを受けた社員の話し下手ではありません。質問の設計です。特に、多くの会社が最初に置いている「志望動機」を聞くのをやめるだけで、出てくる言葉は目に見えて変わります。この記事では、その理由と、そのまま使える質問例30個をまとめます。
なぜ「志望動機」を聞くと使えない答えしか出ないのか
「なぜこの会社を選んだのですか」と聞かれた社員は、ほぼ全員が採用面接の記憶を呼び出します。面接で話した内容、つまりすでに整えられた模範解答が出てくるということです。「風通しの良さに惹かれて」「人の温かさが決め手でした」。嘘ではないのですが、どの会社のインタビューにも載っている文章になります。
読み手である転職者は、その手の文章をすでに何十本も読んでいます。読み飛ばされる記事の多くは、内容が薄いのではなく他社と区別がつかないのです。
代わりに聞くべきは、過去の一点です。「入社前に一番不安だったことは何でしたか」「入って意外だったことは」。志望動機は解釈を尋ねる質問ですが、こちらは記憶を尋ねる質問です。記憶には固有名詞と具体的な場面が伴うので、模範解答になりようがありません。
質問設計の3原則
質問例に入る前に、リストを自社向けに組み替えるときの原則を3つ挙げます。
- 1. 解釈ではなく記憶を聞く: 「どう思いますか」ではなく「そのとき何がありましたか」。意見を聞くと一般論が返り、出来事を聞くと固有の話が返ります
- 2. 読み手の不安から逆算する: 質問は社員に向けていますが、答えの宛先は求職者です。求職者が不安に思っていることを、社員の口から答えてもらう構造にします
- 3. 大変な面と、その乗り越え方をセットで聞く: 大変さだけを載せると不安を煽り、良い面だけを載せると信用されません。必ず2つで1組にします
2つめの「読み手の不安」には参照できるデータがあります。転職者が入社前に抱く不安の1位は「人間関係がうまくいくか」で49.17%、2位が「希望の収入が維持されるか」で37.35%でした(出典: ベイジ「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」)。約半数が人間関係を気にしているのに、社員インタビューの質問リストにその話題が1問も入っていないことは珍しくありません。この観点は「採用サイトに足りないコンテンツは「不安1位・人間関係」への回答」でも掘り下げています。
社員インタビューの質問例30
入社前後のギャップを引き出す(6問)
- 1. 入社前、一番不安だったことは何でしたか
- 2. その不安は、実際に入ってみてどうなりましたか
- 3. 入社して「思っていたのと違った」ことはありますか
- 4. 面接のときに聞いておけばよかった、と思うことはありますか
- 5. 前の職場と比べて、一番変わったことは何ですか
- 6. 入社前の自分に一言伝えられるとしたら、何と言いますか
1日の仕事を具体的にする(6問)
- 7. 昨日一日、何時に出社して何をしていましたか
- 8. 1週間のうち、一番忙しいのは何曜日ですか。それはなぜですか
- 9. 一日のなかで、一番好きな時間帯はいつですか
- 10. お昼はどこで、誰と食べていますか
- 11. 残業が発生するのは、どういうときですか
- 12. 入社1ヶ月目は、具体的に何をしていましたか
人間関係と職場の空気(6問)
- 13. 困ったとき、最初に誰に相談しますか
- 14. その人は、どんなふうに助けてくれましたか
- 15. 上司に意見を言いにくいと感じたことはありますか。そのときどうしましたか
- 16. 年齢や社歴が違う人と、どんな話をしますか
- 17. 新しく入った人が最初に戸惑うのは、どんなところだと思いますか
- 18. この職場で「これは合わないかも」と感じる人がいるとしたら、どんなタイプでしょうか
大変さと、その乗り越え方(6問)
- 19. 今までで一番きつかった時期はいつですか
- 20. そのとき、何があって乗り越えられましたか
- 21. 失敗した経験と、そのあとの周囲の反応を教えてください
- 22. この仕事で、慣れるまでに時間がかかったことは何ですか
- 23. 未経験で入る人が最初につまずくのは、どこだと思いますか
- 24. 辞めようと思ったことはありますか。踏みとどまった理由は何でしたか
これからと、待遇のリアル(6問)
- 25. 入社してから、給与や役割はどう変わりましたか
- 26. 今、目標にしている先輩はいますか。その人のどこがすごいですか
- 27. 3年後、どんな仕事をしていたいですか
- 28. 有給はどんなときに取っていますか。直近では何に使いましたか
- 29. 家族や友人に自分の仕事をどう説明していますか
- 30. どんな人と一緒に働きたいですか。逆に、来てほしくないのはどんな人ですか
「面白い質問」を入れるなら、目的とセットで
「社員インタビュー 面白い 質問」もよく検索されています。企画性のある質問を入れること自体は有効ですが、面白さだけを狙うと社内向けの読み物になり、応募にはつながりません。面白い質問は、読み手の不安を溶かす目的とセットにするのがコツです。
- 「この会社の"あるある"を1つ挙げるなら?」→ 職場の空気が伝わる
- 「入社してから増えた私物・道具はありますか」→ 仕事の実態が伝わる
- 「休憩中によく話題になることは?」→ 人間関係の距離感が伝わる
逆に、聞かないほうがよい質問もあります。「やりがいは何ですか」「最後に一言お願いします」「どんな会社ですか」。いずれも抽象度が高く、答える側が模範解答に逃げ込みやすい質問です。
質問内容より、最後の「載せ方」で差がつく
良い質問で良い答えが取れても、記事の見せ方を誤ると応募にはつながりません。転職者が採用サイトで「まず見たい情報」の1位は募集要項で51.1%(前掲の同調査)。つまり、読み手の関心は最終的に条件へ戻ります。
インタビュー記事を読み終えた位置に、給与・休日・勤務地といった条件と応募ボタンが見えている構成にしてください。気持ちが動いた瞬間に、条件を確認して応募まで進める。そこまで含めてインタビューの設計です。記事そのものの作り方は「社員インタビューが採用に効く3つの理由と作り方のコツ」にまとめています。
まとめ
- 志望動機は聞かない。面接の模範解答が再生され、他社と区別のつかない記事になる
- 解釈ではなく記憶を聞く。「どう思うか」ではなく「そのとき何があったか」
- 質問は社員に向けるが、答えの宛先は求職者。不安1位「人間関係」(49.17%)に触れる質問を必ず入れる
- 大変な面は、乗り越え方とセットで聞く。片方だけでは不安を煽るか、信用されないかのどちらかになる
- 面白い質問は、職場の空気や仕事の実態が伝わる目的とセットにする
- 読み終えた位置に募集要項と応募導線を置く。関心は最後に条件へ戻る