転職活動でいちばん不安なのは、たいてい人間関係です。実際、転職者が入社前に感じる不安の1位は「人間関係がうまくいくか」で49.17%。一方で、採用サイトでまず見たい情報の1位は「募集要項」で51.1%でした(出典: ベイジ「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」)。
この2つを並べると、転職活動の構造的な問題が見えます。いちばん見に行く場所(募集要項)に、いちばん不安な情報(人間関係)が載っていない。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業側の採用を支援し、求人票を作る側にいます。この記事では、なぜ人間関係が求人票に書かれないのかという内幕と、その代わりに入社前に事実として確かめる方法をお伝えします。
内幕: 求人票には、人間関係を書く欄がそもそもない
求人票のフォーマットを思い出してください。仕事内容、給与、勤務地、勤務時間、休日、待遇・福利厚生、応募資格。どの欄も、条件を書くための箱です。
人間関係を書ける欄はありません。書けるとしたら「その他」や「アピールポイント」といった自由記述で、しかも文字数は限られています。求人検索サイトの一覧に至っては、職種名・給与・勤務地しか表示されないことがほとんどです。
その結果、限られた自由記述に押し込まれて出てくるのが、あの3語です。
- アットホームな職場です
- 風通しの良い社風です
- 若手が活躍しています
正直に言うと、企業へのヒアリングで「御社の職場の雰囲気は?」と聞いたとき、最初に返ってくる言葉もほぼこの3つです。嘘をついているわけではありません。雰囲気を言語化する習慣がある会社のほうが珍しく、しかも求人票には長さの制約がある。だから誰もが使う形容詞に収束します。
ただ、読む側にとっては何の情報にもなりません。この言葉が生まれる事情については「「アットホームな職場」がやばいかは、書く側の事情で見分けられる」でも扱っています。
だから、形容詞ではなく事実を探すことになる
私たちが企業側のヒアリングで実際にやっているのは、形容詞をひたすら事実に変換していく作業です。「アットホーム」と言われたら、こう聞き返します。
- その部署は何人ですか。年齢構成は
- 直近1年で入った方は何人で、いま何人残っていますか
- 入社した人は、最初の3ヶ月を誰と過ごしますか
- 今回の募集は、欠員の補充ですか、増員ですか
ここまで聞くと、同じ「アットホーム」でもまったく違う職場像が出てきます。求職者のみなさんが入社前に確かめるべきなのも、この4つと同じ質問です。
見極め方①: 募集背景を聞く(欠員か、増員か)
最も情報量が多いのがここです。増員なら事業が伸びている合図で、既存メンバーは残っています。欠員補充なら、その席にいた人が辞めています。
欠員補充が悪いわけではありません。定年退職も、家庭の事情も、キャリアチェンジもあります。聞くべきは「前任の方はどのくらい在籍されていましたか」です。5年なら普通の入れ替わり、半年で2人続いているなら、その席には何か構造的な理由があります。
これは面接で聞いても失礼になりません。むしろ選考が進んだ段階では、会社側も説明しておきたい情報です。
見極め方②: 社員インタビューは「誰が」「何年目で」語っているかを見る
求人票に書けない情報を載せられる場所が、社員インタビューです。ただし読み方があります。
- 登場するのが役職者だけの記事は、情報量が下がります。管理職は会社を代表する立場なので、語り口が公式になりやすい。知りたいのは、自分と同じ立場・近い年次の人が何を感じているかです
- 全員が同じ言葉を使っている記事にも注意。「風通しが良い」が3人から出てきたら、それは取材で使われた質問がそう誘導しているか、書き手が整えすぎています
- 逆に、具体的な作業や失敗が書かれている記事は信頼できます。誰に教わったか、何につまずいたか、1日の時間の使い方——このあたりが書かれているほど、実際に働いている人の話です
たとえば福祉用具コンサルタントの仕事を紹介した記事のように、日々の動き方や誰とどう関わるかまで書かれているものは、条件欄だけでは分からない部分が読み取れます。企業側の視点で言うと、こうした記事を用意している会社は「不安に答える必要がある」と自覚しているぶん、聞かれることにも慣れています。
見極め方③: 面接で人数と時系列の事実を聞く
面接では、感想ではなく数字で答えられる質問をします。答え方そのものが情報になります。
- 「配属予定の部署は何名で、年齢構成はどうなっていますか」——即答できるかどうかで、現場と採用担当の距離が分かります
- 「直近1年で入社された方は何名で、今も在籍されているのは何名ですか」——最も直接的な質問です。数字を濁されたときは、その反応が答えです
- 「入社後3ヶ月、誰に教わることになりますか」——教育の担当者が決まっているかどうかは、受け入れ体制の有無そのものです。「みんなで見ます」は、裏を返すと担当者が決まっていないことがあります
これらは待遇交渉ではないので、一次面接で聞いても問題になりにくい質問です。
見極め方④: 一緒に働く人に会わせてもらえるか
いちばん確実なのはこれです。「配属予定の部署の方と、短時間でもお話しさせていただけますか」と頼んでみてください。
快く応じる会社は、見せられる状態にあるということです。断られた場合も、理由が「現場が繁忙期で日程が取れない」なのか、曖昧に流されるのかで意味が変わります。最近は面接とは別に現場社員との面談の場を設ける会社も増えていて、依頼として珍しいものではなくなりました。
そして忘れがちですが、面接官の態度そのものが、いちばん早く手に入る一次情報です。質問に対する答え方、こちらの話をさえぎるかどうか、現場の人の話をするときの言い方。求人票の「アットホーム」より、その30分のほうが確度は高いと考えていいと思います。
まとめ
- 転職者の入社前の不安1位は人間関係(49.17%)だが、まず見に行く募集要項には、それを書く欄がそもそもない
- だから「アットホーム」「風通しが良い」という形容詞に収束する。企業が隠しているというより、書ける形式がない
- 確かめる方法は、形容詞を事実に変換すること。募集背景(欠員か増員か)と前任者の在籍年数が最も情報量が多い
- 社員インタビューは「誰が・何年目で・どれだけ具体的に」語っているかで読む。役職者だけ・全員が同じ言葉なら情報量は低い
- 面接では部署の人数構成、直近1年の入社者数と現在の在籍数、入社後3ヶ月の教育担当の3つを数字で聞く
- 可能なら配属予定部署の社員と話す場をもらう。断られ方も含めて情報になる