「採用単価の計算方法を知りたい」と検索する採用担当者の多くは、期末に広告費や紹介手数料を集計して「今回の採用は一人あたりいくらだったのか」を後から出そうとしています。もちろんその計算は必要です。ですが、リクプル編集部が数多くの求人運用を支援してきて確信しているのは、採用単価は「計算する」ものである以上に、応募が集まる前に「決めておく」ものだということです。
なぜなら、採用単価には職種や地域が違っても一定のレンジに収束する性質があり、それを知っていれば広告予算の上限を先に引けるからです。そしてそのレンジは、人材紹介に払ってきた金額のおよそ10分の1です。この記事では、採用単価の基本的な計算方法(エクセルでの出し方)を押さえたうえで、KD3の現場で見えてきた「採用枠×15万円で予算上限を決める」という実務を解説します。
採用単価の計算方法:まずは事後計算の式を押さえる
採用単価(採用コスト単価)の計算方法自体はシンプルです。基本の式は次の通りです。
- 採用単価 = 採用にかかった費用 ÷ 採用人数
「採用にかかった費用」には、求人広告費だけでなく、人材紹介の手数料、採用担当者の人件費、面接や説明会にかかった経費などが含まれます。エクセルで出す場合は、費用の項目を行に並べて合計し、その期間に採用できた人数で割るだけです。外部に支払った費用だけを見る「外部コスト単価」と、社内工数まで含めた「総コスト単価」を分けて管理すると、後で施策を比較しやすくなります。
ここまでは検索すればどこにでも書いてある一般的な計算方法です。問題は、この式がすべて終わった後にしか計算できないという点にあります。
事後の計算式だけでは、予算を決められない
採用単価を事後計算だけで捉えていると、実務で困る場面が出てきます。「この求人にいくらまで広告費をかけていいのか」を、採用が終わる前に判断できないからです。
ここで見落とされがちな事実があります。応募がどれだけ集まっても、採用枠を超えた人数は採れないということです。支援の現場では、応募が想定の何倍も集まったのに採用枠は数名だった、というケースを何度も見てきました。ある求人では応募が300件を超えましたが、募集していたのは2名。応募一件あたりの単価(CPA)はとても安く見えても、採用枠で割り直すと一人あたりのコストは跳ね上がります。集まりすぎた応募に払った広告費は、採用単価を押し上げるだけのコストになってしまうのです。
だからこそ、採用単価は「かかった費用を後から割る」だけでなく、「採用枠から逆算して上限を先に決める」発想が要ります。その逆算を可能にするのが、次の収束の性質です。
KD3の現場で見えた「採用単価は7〜15万円に収束する」
職種も地域もバラバラの求人を数多く運用していると、あるパターンが浮かび上がります。原稿の質と媒体運用が噛み合った求人は、一人あたりの採用単価がおおむね7〜15万円のレンジに収まるという傾向です。例えば、地方の農業系の求人で約7万円、都心の事務職で約9万円、専門性のある福祉用具の職種で約15万円といった具合に、条件が違っても近いレンジに着地します。
なぜ収束するのか。カギは、応募単価(CPA)と決定率がシーソーの関係にあることです。応募が安く集まる職種は一件あたりの本気度が低く決定率が下がり、逆に応募単価が高い職種は応募者の本気度が高く決定率が上がります。この掛け算の結果が、職種をまたいで似たレンジに落ち着くのです(応募数と決定率の関係は応募数と決定率の逆相関で詳しく書きました)。単価がなぜ相場に収まるのかは採用単価の相場の記事も参照してください。
7〜15万円は人材紹介の約10分の1。従来手法と比べて判断する
「一人7〜15万円」と言われても、それが高いのか安いのかは比較対象がなければ判断できません。並べるべきは、多くの会社がこれまで使ってきた従来手法──人材紹介です。
人材紹介の手数料は、一般に理論年収の30〜35%が相場とされています。年収400万円の職種なら1人あたり120〜140万円、年収500万円なら150〜175万円。しかも採用が決まった時点で、この金額が一括で発生します。
これに対して、原稿と運用が噛み合った求人広告の採用単価は7〜15万円。つまり同じ1人を採るのに、コストが1桁違うということです。仮に2名採用するなら、人材紹介では240〜280万円かかるところ、広告予算の上限は「2名×15万円=30万円」。差額は200万円を超えます。これが「採用枠×15万円」という予算設計の本当のインパクトです。
もちろん、すべての職種が7〜15万円に収まるわけではありません。有効求人倍率が高い職種では単価が上がります。例えば施工管理のように倍率が約6倍に達する職種では、1人あたり50万円程度になることもあります。ですがその場合でも、人材紹介なら1人150〜200万円かかる職種ですから、依然として約4分の1です(この評価の考え方は施工管理の採用で詳しく書きました)。
易しい職種なら人材紹介の約10分の1、難しい職種でも約4分の1。採用単価は「絶対額が高いか安いか」ではなく「従来いくら払っていたか」と比べて判断する──これが予算を決めるときの正しい物差しです。
だから予算は「採用枠×15万円」で上限を引く
採用単価が7〜15万円に収束するなら、逆算はかんたんです。広告費の上限=採用予定人数×15万円(収束レンジの上限)を目安に予算を組みます。2名採るなら30万円前後が一つの上限ラインです。
この予算設計には、もう一つ実務上の効用があります。応募が採用枠の10倍を超えたら配信を止める、という判断基準を先に持てることです。前述の通り、枠を超えた応募は採用単価を悪化させるだけ。上限を先に決めておけば、「まだ応募が来るから」と広告費を垂れ流す事態を防げます。採用単価をあとで計算して青ざめるのではなく、はじめに上限を引いて、その範囲で運用する。これが現場で機能する採用単価の“決め方”です。
収束しないときは「計算式」ではなく「構造」を疑う
ここまでの前提には条件があります。7〜15万円への収束は、あくまで原稿と運用が噛み合っている場合の話です。予算を採用枠×15万円で引いたのに、いつまでも採用に至らず単価が青天井になる求人もあります。そのときに計算式を見直しても意味がありません。疑うべきは構造です。
よくある構造的な原因は二つです。一つは、資格や専門性が必須の職種を検索型の求人広告に載せてしまい、そもそも母集団が形成されないケース。もう一つは、先ほどの過剰配信のように、採用枠に対して応募を集めすぎているケースです。前者は手法そのものを変える必要があり、後者は配信の止めどきを決めることで解決します。採用単価が収束レンジに入らないときは、原稿を微調整する前に「この職種と媒体は噛み合っているか」を先に確認してください。職種ごとの採用難易度は有効求人倍率での診断が参考になります。
まとめ
- 採用単価の基本の計算方法は「採用にかかった費用 ÷ 採用人数」。外部コストと社内工数を分けてエクセル管理すると比較しやすい
- だが事後計算だけでは予算を決められない。応募が集まりすぎても採用枠以上は採れず、余った広告費は採用単価を押し上げるだけ
- 原稿と運用が噛み合った求人の採用単価は7〜15万円に収束する(CPAと決定率のシーソー)
- 7〜15万円は人材紹介(理論年収の30〜35%=年収400万で1人120〜140万円)の約10分の1。2名なら紹介240〜280万円に対し予算上限30万円で、差額は200万円超
- 難易度の高い職種(施工管理など)は50万円程度に上がることもあるが、それでも紹介の約4分の1。単価は絶対額でなく「従来いくら払っていたか」と比べる
- だから予算は「採用枠×15万円」で上限を先に引く。応募が枠の10倍を超えたら配信停止が目安
- 収束しないときは計算式でなく構造(資格必須職の媒体ミスマッチ・過剰配信)を疑う
採用単価は、終わってから計算する数字であると同時に、始める前に決めておく数字です。次に求人を出すときは、まず「採用枠×15万円」で上限を引いてみてください。