「地方に戻りたいけど、そもそも仕事がない」「田舎で探しても、いい求人が出てこない」。地方転職を考える人からよく聞く声です。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業側の採用を支援し、求人票を作る側にいます。加えて2026年から、実際に出ている求人票を職種ごとに1件ずつ開いて集計する「求人相場ウォッチ」を続けてきました。8職種・合計1,300件超を都道府県ごとに採取した結果、「地方に仕事がない」の中身は、職種によって実は違うことが分かりました。この記事では、その内幕をお伝えします。
内幕①: 全国どこにでも求人がある職種は、実際にある
まず伝えたいのは、「地方には仕事がない」という前提自体が、職種によっては成立しないということです。私たちの実査では、次の2職種で47都道府県すべてに求人が存在することを確認しました。
どちらも生活インフラに直結する職種で、事業所が全国にまんべんなく存在するという実態が、求人の分布にそのまま出ています。少なくともこの2職種については、「地方だから求人自体が存在しない」という思い込みは実測では支持されませんでした。
内幕②: それでも、本当に地域差が大きい職種もある
一方で、「地方は不利」が実測で裏づけられる職種もあります。溶接工は、実査した職種の中で地域差が最も強固でした。首都圏の月給下限24.5万円に対し、北海道・東北は19.0万円。信頼区間が重ならず、基本給で引き直しても、業種構成を揃えても順位は変わりませんでした。
反対にドライバーは、実査職種で地域差が最も小さい職種でした。5ブロックすべてで信頼区間が重なり、件数の多い近距離配送に絞ると月給下限は22.5万円〜24.5万円とほぼ横並びです。
「地方は給料が安い」は職種によって成立したりしなかったりする、というのが実測から言えることです。一律の答えを求めず、自分が目指す職種の実態を確認することが、地方転職の最初の一歩になります。
内幕③: 一覧に出てくる「求人の数」は、見ている媒体で変わる
「求人がない」と感じる原因のもうひとつは、探している媒体そのものにあります。看護師の実査では、全国型の大手転職サイトの掲載件数がそもそも少なく、ある媒体は全国で109件、別の媒体は全国で126件(うち北海道はわずか5件)しかありませんでした。地方在住者がこうした媒体だけを見れば、「求人がない」と感じるのは当然です。
私たちが実査で最終的に使っているのは、公的職業紹介(ハローワーク)を軸にした構成です。理由は、都市部への掲載偏在が少なく、地方でも一定件数を安定して確認できるためです。逆に、ドライバー専門の民間求人サイトは件数自体は痩せた県でも100件を超えて多いものの、給与欄が自由記述で基本給が読み取れない、という別の弱点がありました。「求人が少ない」と感じたら、それは実在しないのではなく、見ている媒体に地域的な偏りがあるだけかもしれません。公的職業紹介を探し先の1つに必ず加えることをおすすめします。
内幕④: 一覧の「月給」に日給・時給の換算が混ざる
もうひとつ、地方の求人が「安く」あるいは「バラバラに」見える理由があります。求人一覧は、日給制・時給制の求人も月額換算で表示するため、賃金形態の違う求人が同じ「月給」欄に混在します。
溶接工の実査では、正社員求人の21.6%(1,249件中265件)が日給・時給制で、しかもこの比率には地域差がありました。中国四国九州が34%と高い一方、甲信越北陸北関東は9%です。日給制の求人が多い地域では、一覧の月給表示だけを見比べても、実態と違う印象を受けやすくなります。詳細画面を開いて「賃金形態等」が本当に「月給」かどうかを確認しないと、同じ「月給20万円」でも中身がまったく違う可能性があります。
実践: 地方で求人を探すときに確認する3つ
ここまでの内幕を、実際の探し方に落とし込みます。
- 公的職業紹介(ハローワーク)を必ず探し先の1つに含める。全国型の民間サイトだけでは、地域による掲載件数の偏りをそのまま「求人の少なさ」と誤認しやすい
- 一覧の月給だけで判断せず、詳細で賃金形態を確認する。日給・時給の月額換算が混ざっていないかを見る
- 自分が目指す職種の地域差の実態を先に調べる。地域差が大きい職種(溶接工など)と、ほぼない職種(ドライバーなど)では、地方転職の考え方そのものが変わる
- 通勤圏を少し広げてみる。近距離だけでなく隣接エリアまで探索範囲を広げると、同じ都道府県内でも見える求人数が変わることがあります
「本当にいい求人がないのか」「探し方の範囲が狭いだけなのか」を切り分けるには、実際にその地域で働く人の声を聞くのも有効です。リクプルは「入社前から、リアルに分かる。」をコンセプトに、地方で働く方のインタビューと募集要項をセットで掲載しています(掲載中のインタビュー記事)。
まとめ
- 電気工事士・ドライバーは実査で47都道府県すべてに求人を確認。「地方に仕事自体がない」は職種によっては成立しない
- 一方で溶接工は実査職種で最も地域差が強固(首都圏24.5万円 vs 北海道・東北19.0万円)。地域差の大きさは職種依存で一律ではない
- 看護師など一部の職種は全国型の大手転職サイトの掲載自体が薄く、公的職業紹介を併用しないと求人が「見えない」
- 一覧の月給表示には日給・時給の月額換算が混ざる。溶接工では正社員求人の21.6%が該当し、地域によって比率も違う
- 「地方に仕事がない」と感じたら、まず公的職業紹介を確認し、一覧ではなく詳細の賃金形態を見る