応募する前に、一度職場を見ておきたい。そう思って「職場見学 転職」と調べると、「職場見学 落ちる」「面接前 職場見学 不採用」「職場見学 採用サイン」といった言葉が並びます。見学を申し込みたい一方で、「見学も選考のうちなのでは」という不安を持つ人が多いということです。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業側の採用を支援し、求人票を作る側にいます。先に内幕をお伝えすると、「見学は採否に関係ない」と公的な資料にはっきり書かれているのは、高校生向けの求人票です。転職の職場見学には、その約束を書く欄がありません。この記事では、見学が会社の中でどう扱われているのか、そして申し込む側ができる工夫をお伝えします。
「採否に関係ない」と書かれているのは高卒の求人票
ハローワークの高卒向け求人票には「応募前職場見学」の欄があります。厚生労働省の「求人票(高卒)の見方のポイント」では、この見学について参加したかどうかで採否が決まるものではないと説明しています。
一方、転職する人向けの見学はどうか。たとえばハローワーク大隅(鹿児島労働局)の応募前の職場見学の案内には、ハローワークが会社に日程を申し込むことや、見学後に紹介状を受け取ってから面接になることが書かれています。求人票で「応募前職場見学可」となっていなくても相談できる、という一文もあります。ただ、見学が採否にどう影響するかについての約束は、この案内にはありません。
つまり転職の場合、見学をどう扱うかは会社ごとの運用次第です。「選考ではありません」と言う会社が多いのは事実ですが、それが社内で実際にどういう意味なのかを知っておくと、不安の中身がはっきりします。
内幕①: 見学を案内するのは現場の人。その感想は人事に届く
求人を作る現場で企業にヒアリングしていると、応募前の見学を案内するのは人事担当ではなく、店長・所長・現場の責任者であることがほとんどです。特に中小企業では、人事専任の担当者がいないことも珍しくありません。
そして見学が終わると、採用の担当者は現場の人に「どうでしたか」と聞きます。評価シートのような正式なものはなくても、印象は必ず伝わります。「選考ではない」は「点数はつけない」という意味であって、「何も伝わらない」という意味ではない、というのが支援の現場の実感です。
とはいえ、現場の人が気にしているのは服装やお辞儀の角度ではありません。申し送られやすいのは次のようなことです。
- 日程の連絡や、遅れそうなときの連絡があったか
- 案内した人以外のスタッフにも同じ態度で接していたか
- 質問が仕事の中身に向いていたか(休みと給与の話だけで終わらなかったか)
裏を返すと、仕事を知りたくて見学に来た人が普通にふるまえば、見学が不利に働くことはまずありません。
内幕②: 同じ「見学」でも、タイミングで意味が変わる
サジェストに「応募前」「面接前」「面接後」「内定後」と並ぶとおり、見学はいつ行くかで会社にとっての意味が変わります。
- 応募前: 会社にとっては応募を増やすための機会です。仕事の中身が求人票の文字だけでは伝わりにくい職種ほど、会社のほうから勧めてきます。リクプルに掲載中のインタビュー記事47本を読み返すと、調剤薬局、遊技場の店舗運営、福祉用具、ポスティングの4社が「見学だけでも」「応募前に確認いただけます」と自分から呼びかけていました
- 面接の前後・同じ日: 面接とセットになっている場合は、実質的に選考の一部と考えたほうが安全です
- 面接の後: 「採用サイン」と受け取られがちですが、現場の時間を割く以上、本気で検討していることは確かでも、最後の判断を現場に確認してもらう工程であることも多く、合格の約束ではありません
- 内定の後: 入社前の不安を減らし、辞退を防ぐためのものです。ここで評価が覆ることを心配するより、自分の最終確認の場として使ってください
なお、派遣の仕事で行われる「職場見学」は、派遣会社と派遣先のあいだの別の仕組みで行われるもので、この記事の話とは前提が異なります。
「見学で落ちた」の多くは、見学が役目を果たした結果
見学のあとに不採用になった、という話はたしかにあります。ただ、採用側から見ると、その理由の多くは見学中のふるまいではありません。
- 勤務時間、立ち仕事の多さ、通勤の距離など、条件のズレが見学で双方に見えた
- 現場の責任者が、仕事の進め方との相性を気にした
- 同じ時期に別の応募者の選考が進み、枠が埋まった
1つめと2つめは、見学がなければ入社してから表に出ていたズレです。落ちたこと自体はつらくても、入社後3か月で辞めることに比べれば、見学は役目を果たしていると考えることもできます。
見学で見るべきは「案内されるルート」の外側
ここからは実用の話です。求人を作る側として正直に言うと、見学のルートはある程度準備されています。整理された作業場、話しやすいスタッフ、落ち着いた時間帯。悪意ではなく、来客を迎えるときの自然な準備です。だから見るべきは、その外側です。
- 休憩室・更衣室・トイレを見せてもらえるか。毎日使う場所ほど、ふだんの手入れの状態がそのまま出ます
- 見学の時間帯。可能なら現場がいちばん動いている時間を指定してみてください。「その時間は難しい」と言われた場合も、忙しさの目安になります
- 壁の掲示物。シフト表、ホワイトボードの予定、人員の配置表は、何人でどう回しているかをそのまま示しています
- 案内してくれた人が、入社後に誰になるか。配属先の上司なのか、見学の対応だけを担当する人なのかで、見学で受けた印象の意味が変わります
面接で聞くとよい人数や入社者の定着についての質問は、「「人間関係が良い職場」が求人票に書けない理由と、入社前の見極め方」にまとめています。見学と組み合わせると、確かめられることが増えます。
申し込むときの一言で、見学を選考の場にしない
「見学も選考なのか」という不安は、申し込みの段階で確認してしまうのがいちばん確実です。
- 目的を先に伝える: 「応募を検討しており、仕事の流れと職場の環境を拝見したいです」。見学だけの目的だと伝われば、会社も面接と区別して対応しやすくなります
- 面接を兼ねるかを聞く: 「当日は面接も兼ねていますか。その場合、履歴書を持参したほうがよいですか」。聞いて失礼になる質問ではなく、会社側も準備が変わるので助かる質問です
- ハローワークの求人は窓口を通す: 前述の案内のとおり、窓口を通さずに見学すると、あとで紹介状の扱いが変わる場合があります
- 工場や建設現場では会社の指示に従う: 服装や靴の指定は、印象のためではなく安全のためです
- 応募しないと決めたら連絡する: 見学後に応募を見送るのは珍しいことではありません。ひと言伝えれば、それで十分です
見学を受け入れている会社がどんな説明をしているか知りたい方は、福祉用具コンサルタントの仕事を紹介したインタビュー記事も参考になります。入社後の研修で各部署を見て回る流れと、応募前の事業所見学について、会社の担当者が具体的に話しています。
まとめ
- 「見学への参加の有無で採否は決まらない」と公的に説明されているのは高卒の求人票。転職の見学は会社ごとの運用に委ねられている
- 応募前の見学を案内するのは現場の人で、印象は人事に伝わる。ただし見られるのは連絡・態度・質問の向きで、服装の細部ではない
- 応募前は会社にとって応募を増やす機会、面接の前後は選考の一部、面接後は現場の確認、内定後は辞退を防ぐための場。タイミングで意味が変わる
- 見学後の不採用の多くは、条件や相性のズレが入社前に見えた結果
- 見学では休憩室・時間帯・掲示物・案内役が誰かを見る。申し込み時に「目的」と「面接を兼ねるか」を確認すれば、不安の大半は消える