「飲食店 採用 難しい」というご相談をいただくとき、話を伺うとほとんどのケースで、実は2つの別の問題が1つに混ざっています。アルバイトの応募がそもそも集まらないという問題と、正社員(店長候補)の応募は来るが決まらないという問題です。この2つは原因も対策も違うのに、同じ求人票、同じ媒体戦略で両方をまとめて解決しようとして、結果的にどちらも中途半端になっているケースを数多く見てきました。
この記事の主張は1つです。飲食店の採用単価は、アルバイトと正社員で別の物差しを使う必要がある。それぞれをどう管理すべきか、実務的な考え方を解説します。
「飲食店 採用 難しい」の相談は、実は2つの別問題が混ざっている
アルバイト採用の悩みは、たいてい「応募数そのものが足りない」という母集団形成の問題です。時給という分かりやすい指標で他店と横並びに比較され、近隣の競合が時給を上げれば、その瞬間に自社の求人は相対的に見劣りします。
一方、正社員(店長候補)採用の悩みは、応募数がゼロというケースは少なく、むしろ「応募は来るが、求めている経験・マネジメント適性を持つ人が決まらない」という質の問題であることが多いです。これは母集団形成ではなく、原稿での見極めと選考プロセスの設計の問題です。
この2つを同じ求人票で追いかけると、タイトルも給与欄の書き方も両方の要求に引っ張られて中途半端になります。まずこの2つを分けて考えることが出発点です。
市場環境としても、飲食業界の採用競争は緩んでいません。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年6月分)」によると、宿泊業・飲食サービス業の新規求人数は前年同月比5.4%増でした(出典: 厚生労働省 一般職業紹介状況(令和8年6月分)。数値は毎月変動するため、実際の判断には最新月をご確認ください)。求人が増え続けている業界であるほど、アルバイトと正社員を同じ土俵で管理する非効率は、そのまま採用コストの差になって表れます。
アルバイト採用は「応募単価」で管理する
アルバイト採用は、時給ベースで応募数の勝負になりやすい領域です。母集団が比較的厚く、応募から採用までの意思決定コストが正社員より低いため、応募単価(広告費÷応募数)を主要な管理指標として使っても、大きな害が出にくいという特徴があります。
ただし、応募単価だけを下げようとして時給以外の条件表現をあいまいにすると、勤務日数や勤務時間帯の希望が合わない応募が増え、結局は面接設定や採用の手間が膨らみます。応募単価の正しい出し方と、追いかけてはいけない一点については「応募単価の計算方法と、それを追ってはいけない一点」にまとめています。アルバイト採用でも、応募単価はあくまで一次的な指標として扱い、最終的にはシフトに入れる人数(実働ベースの採用数)で評価することをおすすめします。
正社員(店長候補)の採用単価は7〜15万円の収束レンジがそのまま使える
一方、正社員・店長候補の採用は、経験者を狙う「少数精鋭型」の採用です。この場合、原稿と媒体運用が噛み合えば、他業種の中途採用と同様に1人あたりの採用単価が7〜15万円のレンジに収束していく傾向があります。この収束レンジの根拠と、そこから広告予算の上限を「採用枠×15万円」で先に引く実務手順は「採用予算の決め方は「積み上げ」でなく採用枠からの逆算」で解説しました。
飲食店の店長候補採用でこのレンジがそのまま使える理由は、応募単価と決定率がシーソーの関係にあるという構造が、業種を問わず成立するためです。店長候補という条件を絞り込んだ求人ほど、応募は少なくても決定率が高くなりやすく、掛け算の結果は他職種と同じレンジに落ち着きます。人材紹介で店長候補クラスを採用する場合と比べても、この予算感は大きく下回ります。
同じ求人票で両方を狙うと、両方失敗する
実務でつまずきやすいのは、1枚の求人票で「アルバイトも正社員も同時募集」としてしまうケースです。タイトルに「アルバイト・正社員同時募集」と書くと、時給表記を探しているアルバイト希望者と、月給・キャリアパスを確認したい正社員希望者の両方にとって、必要な情報にたどり着くまでが遠くなります。
給与欄も同様です。時給と月給を同じ枠内に併記すると、検索結果の一覧表示ではどちらか一方しか反映されない媒体も多く、狙っていない層にばかり見られる結果になりがちです。可能であれば、アルバイト用と正社員用で求人票そのものを分けることをおすすめします。分けられない場合でも、タイトルと給与欄の冒頭に主対象をどちらか明示することが、最低限の対策になります。
予算配分の実務:飲食店の採用予算は2本立てで組む
採用予算も、アルバイトと正社員を別枠で組むことを前提にしてください。実務上のポイントは次の3つです。
- アルバイト枠: 応募単価を目安にしつつ、最終評価は「実働できる人数」で行う。時給を近隣競合と横並びで確認する頻度を、正社員より高く保つ
- 正社員(店長候補)枠: 採用枠×15万円を上限の目安に予算を組み、人材紹介との比較で予算の妥当性を確認する
- 求人票は分ける: 同じ店舗・同じ会社でも、アルバイト用と正社員用は別の求人票として掲載し、媒体側の検索結果でも別々に表示されるようにする
まとめ
- 「飲食店 採用 難しい」の相談は、アルバイトの応募数不足と正社員(店長候補)の質の問題という別の2つが混ざっていることが多い
- アルバイト採用は応募単価を一次指標に、最終的には実働できる人数で評価する
- 正社員(店長候補)採用は、他業種と同じ採用単価7〜15万円の収束レンジと「採用枠×15万円」の予算設計がそのまま使える
- 同じ求人票でアルバイトと正社員を同時に狙うと、タイトルも給与欄も中途半端になり両方失敗しやすい。求人票は分けるのが望ましい
- 採用予算もアルバイト枠と正社員枠を分けて組み、指標も評価タイミングも別に管理する
まずは自社の飲食店求人が、アルバイト向けと正社員向けのどちらの情報を優先して書かれているかを確認してみてください。両方に配慮しているつもりの求人票ほど、実際にはどちらにも刺さっていないことが多いものです。