「採用予算の決め方」を検索する採用担当者の多くは、来期の予算を組む段階で「去年はいくら使ったか」から出発しています。一見合理的に見えますが、これは毎年予算が膨らみ続ける原因になります。前年の実績に少し上乗せする「積み上げ」方式は、前年の使いすぎまでそのまま来期の基準値に引き継いでしまうからです。
リクプル編集部が採用予算のご相談を受けるときに必ず提案しているのは、逆の順番です。過去の実績からではなく、今期の「採用枠」から予算を逆算する。この記事では、その逆算を実際の予算表に落とし込む4ステップの手順を解説します。
積み上げ方式の予算が膨らむ理由
積み上げ方式とは、前年の広告費実績に「今年は物価も上がっているから」といった感覚的な上乗せをして次年度の予算にする方法です。多くの会社が採っているやり方ですが、実務では2つの問題を抱えています。
1つは、過去の失敗(媒体と職種のミスマッチ、応募が集まりすぎた過剰配信など)にかかったコストまで、来期の基準値にそのまま含めてしまうことです。もう1つは、「使った金額」から出発するため、予算表のどこにも「今期は何人採るのか」という採用枠との対応関係が存在しないことです。結果として、期中に採用人数が減っても予算は減らず、逆に急な増員が決まっても予算の根拠がないという事態が起きます。
逆算方式:採用枠から予算表を作る4ステップ
逆算方式では、まず「何人採るか」を確定させ、そこから予算表を組み立てます。手順は次の4ステップです。
- STEP1 採用枠を1行1ポジションで洗い出す: 部署・職種・予定人数・充足期限を一覧にします。「営業2名(〜9月)」「事務1名(〜11月)」のように、期限まで含めて書き出すのがポイントです。期限のない枠は予算の使い切りが後ろ倒しになりがちです。
- STEP2 ポジションごとに上限単価を掛ける: 原稿と媒体運用が噛み合った求人は、職種を問わず採用単価が1人あたり7〜15万円のレンジに収束する傾向があります。まずは上限の15万円を目安に各ポジションへ掛けてください。この収束レンジの根拠は採用単価は「計算」より先に決める。採用枠×15万円で予算上限を引くにまとめています。資格必須の専門職など有効求人倍率が高い職種は別枠で考え、施工管理のように倍率が約6倍に達する職種では50万円程度を目安にするケースもあります(施工管理の採用が「できない」会社に共通する、たった一つの誤解)。
- STEP3 ポジション別上限を媒体に配分し、損切りラインを書き込む: 検索型の求人広告、人材紹介の併用、SNS広告など、どの手段にいくら配分するかをポジションごとに決めます。同時に「3ヶ月応募ゼロなら媒体を変更する」といった損切りラインを、その行に文章として書き込みます。判断基準を先に決めておくと、期中に「まだ応募が来るかもしれない」という感覚論で予算を垂れ流さずに済みます。
- STEP4 月次モニタリング列を追加する: 予算表に「消化額」「応募数」「入社数」の3列を月次で追加します。見るべきは消化率そのものではなく、入社数に対して消化額が上限単価の範囲に収まっているかです。消化率が低くても入社が決まっていれば問題なく、逆に消化率が想定内でも入社がゼロなら赤信号です。
人材紹介と並べて、初めて予算の妥当性がわかる
「採用枠×15万円」という上限が高いのか安いのかは、比較対象がなければ判断できません。並べるべきは、多くの会社がこれまで使ってきた人材紹介です。人材紹介の手数料は一般に理論年収の30〜35%が相場とされています(業界慣行として一般に知られる水準です)。年収400万円の職種なら1人あたり120〜140万円。予算表の上限15万円は、このおよそ10分の1です。
この比較は、採用予算が限られる中小企業ほど効果が大きくなります。2名採用する枠であれば、人材紹介では240〜280万円かかるところ、逆算方式の予算表なら上限30万円。差額の200万円超を、他の採用枠や採用後の定着施策に回せる計算になります。
予算表に必ず書き込む「止めどきの1行」
逆算方式の予算表が機能するかどうかは、STEP3で決めた損切りラインを、期中に実際に守れるかどうかで決まります。よくある失敗は、予算表は作ったものの、止めどきの基準がどこにも書かれておらず、担当者の感覚で配信を続けてしまうことです。
目安は2つです。応募が採用枠の10倍を超えたら配信を止める(それ以上の応募は採用単価を悪化させるだけのコストになります)。もう1つは3ヶ月動かして応募がほぼゼロなら、原稿の修正ではなく媒体そのものを見直す。この2つを予算表の各行に文章として明記しておくことで、期中の判断が担当者の経験や勘に依存しなくなります。
採用担当が1人の会社でも回る簡易フォーマット
「4ステップと言われても、専任の採用担当がいないので回せない」というお声もよくいただきます。その場合は、エクセルやスプレッドシートに次の6列だけ用意してください。①ポジション名 ②予定人数 ③充足期限 ④上限単価(人数×15万円) ⑤配分先の媒体 ⑥損切りラインです。これだけであれば、採用枠が数名規模の中小企業でも、四半期に一度の更新で十分に運用できます。
重要なのは列の数を増やすことではなく、⑥の損切りラインを空欄のままにしないことです。ここが埋まっていない予算表は、結局のところ積み上げ方式と同じように「なんとなく続ける」運用に戻ってしまいます。
まとめ
- 採用予算を「前年実績+α」の積み上げで決めると、過去の失敗コストまで引き継ぎ、採用枠との対応関係もないまま予算だけが膨らむ
- 逆算方式は「採用枠から上限を先に決める」発想。STEP1採用枠の洗い出し→STEP2上限単価を掛ける→STEP3媒体配分と損切りラインの明記→STEP4月次モニタリングの4ステップで予算表を組む
- 上限単価の目安は1人15万円(収束レンジの上限)。資格必須の専門職などは別枠で考える
- 人材紹介の手数料(理論年収の30〜35%)と並べれば、逆算方式の予算がいかに小さいかが具体的にわかる
- 予算表には「応募が採用枠の10倍を超えたら停止」「3ヶ月応募ゼロなら媒体変更」という止めどきを必ず文章で書き込む
次に予算を組むときは、まず今期の採用枠を1行ずつ書き出すところから始めてみてください。積み上げでは見えなかった予算の根拠が、そこで初めて言語化できます。