「採用がうまくいかない」と検索するとき、多くの担当者はすでに理由の見当をつけています。知名度がない、予算が足りない、そもそも人がいない。どれも事実ではあります。ただ、そのどれもが「自社では動かせない理由」だという点で共通しています。
採用支援の現場で、うまくいっていない会社の求人を数多く見てきて、もっと手前に共通点があると考えています。それは自社の求人を一度も「点数」で見たことがないということです。良い・悪いという感想では持っているのに、どの項目が何点で、どこが空欄なのかを誰も数えていない。この記事では、その採点のやり方と、点が落ちる決まった場所についてお話しします。
「うまくいかない」には3種類ある。混ぜたまま議論しない
まず切り分けが必要です。採用がうまくいかない、という一言には少なくとも3つの状態が混ざっています。
- 応募が来ない: 求人が見られていないか、見られたうえで選ばれていない
- 応募は来るが決まらない: 求める人物像と応募者の層がずれている
- 決まるが辞める: 入社前に伝えた情報と実態が違っている
この3つは打ち手が全く違います。応募が来ないときの打ち手(露出を増やす、条件を見直す)を、応募は来るが決まらない会社が実行すると、状況は悪化します。母集団だけが膨らんで、面接工数が増え、決定率がさらに下がるからです。
「応募数」を採用のKPIに置いている会社ほど、この間違いを起こしやすい傾向があります。応募数と決定率の関係については「「応募数は多いほど良い」は誤解。応募数と決定率の逆相関の話」で詳しく書きました。
採点しない限り、原因はいつまでも「知名度」のせいになる
切り分けた先で必要になるのが、自社の求人を客観的な数字にすることです。ここを飛ばすと、社内の議論は必ず「うちは知名度がないから」に着地します。反論できる材料が誰の手元にもないからです。
環境が厳しいこと自体は本当です。中途採用を実施した企業の割合は84.4%と過去最高を更新しており(出典: リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2025年度実績、正規社員)」・2025年度下半期の値)、ほぼすべての会社が同じ人材市場に出てきています。全職種計の有効求人倍率も1.17倍(出典: 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年5月分)」・季節調整値)で、求職者1人に対して1件以上の求人がある状態が続いています。
ただ、この数字は競合他社にも等しくかかっています。環境は今日変えられませんが、自社の求人の採点は今日できます。順番として、変えられないものの話は後回しでかまいません。
25項目で自社の求人を採点する
採点といっても難しいことはしません。求職者が知りたい情報を項目として並べ、自社の求人に「書いてあるか/書いていないか」を機械的に付けていくだけです。支援の現場では25項目前後の一覧で見ています。
- 条件: 給与の下限と上限、固定残業代の有無と内訳、賞与の実績、年間休日、勤務時間、休日の取り方、転勤の有無、試用期間の条件
- 仕事: 業務内容、1日の流れ、担当範囲、使う道具やシステム、繁忙期、入社後の教育、配属先の人数構成
- 人と環境: 一緒に働くメンバーの年齢層、先輩社員の声、上長の人物像、職場の写真、代表や事業責任者の考え
- 選考: 選考フロー、面接回数、選考期間、応募から入社までの目安、必須要件と歓迎要件の区別
この採点をやると、多くの会社で意外な結果が出ます。だいたい7割前後は埋まっているのです。うまくいっていない会社の求人も、土台そのものは壊れていないことのほうが多いというのが現場の実感です。
問題は、残りの3割が毎回ほぼ同じ場所に固まっていることです。
点が落ちるのは、いつも同じ3ヶ所
採点結果で空欄になりやすいのは、次の3つです。
- 1日の仕事の流れ: 業務内容は書いてあっても、朝何時に来て何をして、どこで区切りがつくのかが書かれていない
- 先輩社員の声: 実際に働いている人の言葉がゼロ。求人の中に登場人物がいない
- 代表・事業責任者の想い: なぜこのポジションを募集するのか、採用した人に何を期待しているのかが書かれていない
この3つに共通するのは、条件表に載らない情報だという点です。給与や休日はフォーマットの穴埋めで埋まりますが、この3つは現場に取材しないと書けません。だから最後まで空欄で残ります。
そして厄介なことに、求職者が不安に思っているのはまさにこの領域です。転職者が入社前に抱く不安の1位は「人間関係がうまくいくか」で49.17%(出典: ベイジ「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」)。同じ調査で、採用サイトで「まず見たい情報」の1位は募集要項の51.1%です。つまり求職者は、まず条件を見て、次に人を見ている。条件で足切りされなかった求人だけが、人の情報で比較されます。条件は7割書けているのに人の情報が空欄の求人は、比較の土俵に上がった瞬間に落ちていることになります。
点数は絶対値でなく、競合の求人と並べて読む
採点で出た点数そのものに意味はありません。80点でも、同じエリア・同じ職種の競合が90点で並んでいれば選ばれません。逆に60点でも、周りが40点台なら十分に戦えます。点数は必ず相対で読むということです。
並べ方は単純です。自社の求人と、同じ条件で検索して上位に出てくる他社の求人を3〜5件、同じ25項目で採点します。他社を採点すると、自社だけを見ていたときには気づかなかった差が見えます。「うちだけが1日の流れを書いていない」「全社が写真を載せていて、うちだけ載せていない」といった具合です。
この相対で見るという発想は、採用難易度の診断でも同じです。職種や地域によって競争の激しさは大きく違うため、絶対値での自己評価はほとんど役に立ちません。この考え方は「求人を出す前に勝敗は半分決まる。有効求人倍率で採用難易度を診断する」でも扱っています。
採点後に手を付ける順番を間違えない
空欄が見えたあと、着手の順番は次の通りです。逆にすると費用だけが増えます。
- 1. 原稿の空欄を埋める: 費用がかからず、当日から着手できます。特に上の3ヶ所は取材1回で埋まります
- 2. 求人の着地先を整える: 求人ページや採用サイトが、スマートフォンで問題なく読めるかを確認します
- 3. 媒体・掲載方法を見直す: 職種と媒体の相性が合っているかを見ます
- 4. 予算を追加する: ここが最後です。空欄のままの求人に広告費をかけると、より多くの人に選ばれない求人を見せることになります
採用がうまくいかない会社ほど、この順番が逆になっています。予算の議論から始まり、媒体を変え、それでも駄目で原稿に戻ってくる。原稿から始めていれば、途中の費用は不要だったというケースが少なくありません。
まとめ
- 「うまくいかない」を3つに切り分ける。応募が来ない/決まらない/辞める、は打ち手が別物
- 採点しない限り、社内の議論は必ず「知名度がないから」に着地する。環境は今日変えられないが、採点は今日できる
- 25項目で機械的に採点する。多くの会社は7割前後埋まっていて、土台は壊れていない
- 空欄はいつも同じ3ヶ所。1日の仕事の流れ・先輩社員の声・代表の想い。いずれも現場に取材しないと書けない情報
- 点数は絶対値でなく、同条件で上位に出る他社3〜5件と並べて相対で読む
- 着手は原稿 → 着地先 → 媒体 → 予算の順。予算から始めると、選ばれない求人の露出だけが増える