「有給なんて取れる雰囲気じゃない」「人手不足だから言い出せない」。転職を考えるきっかけとして、これはとても多い理由です。そして次に来るのが「じゃあ次の会社は有給が取れるのか、応募前に分かるのか」という問いです。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業側の採用を支援し、求人票を作る側にいます。この記事では、その立場だから知っている「求人票の休暇欄に、有給の実態が書かれない理由」と、それでも読み取れることを正直にお伝えします。
取得率は66.9%。「取れない」はあなたの職場だけの話ではない
まず全体像です。厚生労働省の令和7年就労条件総合調査によると、労働者1人平均の年次有給休暇は付与18.1日に対して取得12.1日、取得率66.9%(令和6年1年間の実績)でした。前年調査の65.3%からわずかに上がっています。
言い換えると、平均でも付与された有給の3分の1は消えているということです。「取れないのが当たり前」という感覚は、少なくとも多数派の実感としては間違っていません。
なお、2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者については、会社が年5日を取得させることが求められています。ご自身の職場がこれに照らして問題ないかどうかの判断は、労働基準監督署や社会保険労務士など専門家にご相談ください。この記事は法的な評価には踏み込まず、求人票から何が読めるかに絞ります。
内幕①: 有給の実態が求人票にないのは、隠しているからではなく数字がないから
求人票の休暇欄は、たいてい「年次有給休暇(入社6か月後に10日付与)」で終わっています。取得率も平均取得日数も書かれていない。求職者からすると「都合の悪いことを伏せているのでは」と思えます。
ところが、求人を作る現場で企業に「有給の取得率を載せませんか」と提案すると、返ってくる答えのかなりの割合が「集計したことがない」です。悪意ではなく、そもそも数字を持っていない。勤怠を紙やエクセルで管理していて、部署ごとの取得日数を足し上げたことがない会社は、いまも珍しくありません。
裏を返せば、これは読み手にとって使える情報です。「有給取得率○%」「昨年度の平均取得日数○日」と数字で書けている求人は、それだけで勤怠を集計できる管理体制がある会社だと分かる。数字の高さより、書けていること自体が代理指標になります。
求職者側がここを見ていることも、私たちは実際に確認しています。ある医療機関の求人票を現役の看護師10名に読んでもらい「応募をためらう理由」を挙げてもらったところ、「有給や休暇の実態が分からない」は全員に共通する上位の理由でした。求人票に嘘があったわけではなく、判断材料が無かったのです。
内幕②: 取得率の差は、会社の規模より業種で開いている
「大きい会社なら有給が取れる」とよく言われます。同じ調査を規模別に見ると、確かに差はありますが、思ったほどではありません。
- 1,000人以上: 69.0%
- 300〜999人: 66.8%
- 100〜299人: 65.5%
- 30〜99人: 64.9%
いちばん大きい会社といちばん小さい会社で、差は4.1ポイントしかありません。ところが、同じ調査を産業別に見ると景色が変わります。
- 電気・ガス・熱供給・水道業: 75.2%/製造業・金融業,保険業: ともに72.8%
- 医療,福祉: 68.4%/運輸業,郵便業: 65.3%
- 建設業: 60.7%/教育,学習支援業: 60.5%/卸売業,小売業: 59.9%/生活関連サービス業,娯楽業: 59.6%
- 宿泊業,飲食サービス業: 50.7%
上と下で24.5ポイント。規模差の6倍近く開いています。つまり「有給が取れるか」を大きく決めているのは、会社の大きさよりもその仕事の回り方です。
これは求人を作る現場の実感とも一致します。休むと誰かが代わりに入らなければ止まる仕事(接客・調理・シフト勤務・現場常駐)は、制度がどれだけ整っていても人員に余裕がなければ取得日は増えません。逆に、担当が数日空けても回るように設計されている仕事は、制度が同じでも取得率が上がります。
ですので応募先を比べるときは、まず同じ業種・同じ働き方どうしで比べてください。異業種の求人と休暇条件だけを並べると、会社の姿勢の差ではなく業種の差を見てしまいます。
内幕③: 「年間休日」に有給が混ざっていることがある
もうひとつ、求人票を作る側から見て「これは読み手に伝わっていないな」と感じる論点があります。年間休日の日数に、自分の有給が使われているケースがあることです。
会社が有給の取得日をあらかじめ決めて割り当てる「計画的付与」という運用があります。同じ調査ではこの制度がある企業が40.8%、そのうち71.6%が付与日数を「5〜6日」としています。
この5〜6日は、多くの場合お盆や年末年始に充てられます。求人票に「夏季休暇」「年末年始休暇」と並んでいても、その中身が会社の特別休暇なのか、自分の有給を消化しているのかは、書き方からは判別できないことがあるのです。後者なら、自由に使える有給はその分だけ減ります。
年間休日そのものの読み方は「年間休日105日」の求人で、少ない休みが月給に反映されない理由に書きました。足しておきたいのは、年間休日の内訳と有給は切り離して確認する必要があるという1点です。
求人票の休暇欄は、3段階で読める
以上を踏まえると、応募前に休暇欄だけでここまで仕分けられます。
- 第1段階(情報なし): 「年次有給休暇」とだけ書かれている。法定どおり付与される以上の情報はゼロ。良し悪しの判断材料にはならないので、面接で聞く前提で進める
- 第2段階(制度は書いてある): 付与日数・付与時期に加えて「時間単位取得可」「半休制度あり」「入社時に前倒し付与」などがある。制度を作って運用している会社。ただし取得実績とは別の話
- 第3段階(実績が書いてある): 「昨年度の平均取得日数○日」「取得率○%」が数字で載っている。集計している=勤怠が可視化されている会社。数字が平均前後でも、書いている時点で情報の出し方は誠実です
あわせて見たいのが募集人数と募集の出方です。シフトで回す職場の有給は人員の余裕に左右されます。1名の欠員補充なのか増員なのか、募集がずっと出続けているのはなぜか(この読み方は「求人がずっと出てる会社」は危ない?出し続ける側の3つの事情にまとめています)。制度欄より、こちらのほうが実態に近いことがあります。
面接での聞き方と、答え方から分かること
結局、第1段階・第2段階の求人では聞くしかありません。聞き方にコツがあります。
- 「昨年度、この職種の方の年次有給休暇の平均取得日数はどのくらいでしたか」──「取れますか」ではなく実績の日数を聞く。「取れますよ」は誰でも言えますが、日数は答えられる会社しか答えられません
- 「夏季休暇と年末年始は、有給の計画的付与ですか。それとは別の特別休暇ですか」──内幕③をそのまま確認する質問です。採用側にとっては答えやすく、失礼になりません
- 「有給を取るときは、何日前までにシフトの希望を出す流れですか」──制度ではなく運用を聞く質問。すらすら出てくる会社は、実際に取得が回っています
- 「直近で長めに休まれた方は、何日くらい連続で取られていますか」──連続取得の可否は、代替要員がいるかどうかの裏返しです
これらは採用側にとって困る質問ではありません。本当に困るのは条件を聞かれることではなく、入社後に「思っていたのと違う」と言われて早期に辞められることです。むしろ、実績の日数をその場で答えられない会社は、入社後の勤怠管理も曖昧である可能性が高い──これも現場の実感です。答えの中身より、答え方が情報になります。
そのうえで、休み方まで含めて入社前に確かめたいなら、実際に働いている人の話がいちばん早いのも事実です。リクプルは「入社前から、リアルに分かる。」をコンセプトに、実際に働く人のインタビューと募集要項をセットで掲載しています(掲載中の求人一覧)。
まとめ
- 年次有給休暇の取得率は全体で66.9%(付与18.1日・取得12.1日)。「取れない」という実感は多数派のもの
- 取得率の差は企業規模では4.1ポイント(69.0%↔64.9%)だが、産業間では24.5ポイント(75.2%↔50.7%)。比較は同じ業種どうしで
- 求人票に有給の実績が書かれないのは、隠しているのではなく集計していない会社が多いから。数字が書けている求人は、それ自体が管理体制の代理指標
- 計画的付与制度がある企業は40.8%、うち71.6%が5〜6日。夏季・年末年始の休みが自分の有給である場合がある
- 面接では「取れますか」ではなく「昨年度の平均取得日数」「夏季・年末年始は計画的付与か」「希望はいつまでに出すか」を聞く
※出典: 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(令和6年1年間の実績。常用労働者30人以上の企業が対象)