「年間休日105日」。求人票でこの数字を見つけて、やめとけ、きつい、しんどいといった言葉と一緒に検索した方は多いと思います。そして多くの人がこう考えます。「休みが少ないぶん、給料は高いはずだ」と。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業側の採用を支援し、求人票を作る側にいます。あわせて、実際に出ている求人票を職種ごとに100件以上ずつ集計する求人相場ウォッチも行っています。結論から言うと、その「休みが少ないぶん高い」という関係は、求人票の月給欄にはほとんど現れていません。実測した数字と、なぜそうなるのかという作る側の事情を、正直にお伝えします。
まず「105日」が何日休みなのか、内訳を押さえる
年間休日105日は月に約8.75日の休みですが、重要なのは月あたりの日数より内訳です。1年は52週。毎週2日休むと52×2=104日で、105日は「週2日休み」でほぼ使い切る数字です。祝日・年末年始・夏季休暇のぶんはこの中にほとんど残りません。カレンダーどおりに祝日を休む会社は週休2日104日+祝日16日前後で年120日前後。105日と120日の差15日ほどは、おおむね「祝日に休めるかどうか」の差です。
最初のチェックポイントはここです。「土日祝休み」と書いてあるのに年間休日が105日なら、計算が合いません。祝日に出勤があるか、シフトで振り替えているか、夏季・年末年始が別枠扱いかのいずれかです。
なお「105日は違法ではないのか」もよく検索されています。これは所定労働時間の上限との兼ね合いで決まり、求人票の日数だけで判断できるものではありません。勤務実態に不安がある場合は、労働基準監督署や社会保険労務士などの専門家にご相談ください。この記事では法的な判断には踏み込まず、求人票の読み方に絞ります。
内幕①: 6職種で調べたが、休みの少なさは月給に上乗せされていなかった
「休みが少ない代わりに高給」は本当か。職種ごとに集めた求人票を、年間休日の区分別に月給下限の中央値で引き直してみました。
- 電気工事士(126件): 105日未満 22.0万円/105〜119日 22.0万円/120日以上 23.0万円。信頼区間はすべて重なり、差はありません。この職種の年間休日は75日〜130日(中央値110日)と55日も開いているのに、です
- 保育士(1,078件): 105日未満 20.3万円/105〜119日 21.1万円/120日以上 21.0万円。休みが少ない層のほうがむしろ低い結果でした
- 事務(365件): 105日未満 19.0万円/105〜119日 19.0万円/120日以上 19.5万円。こちらも休みが多い層が高いか、同じです
- 溶接工(132件): 105日未満 23.0万円/105〜119日 21.0万円/120日以上 21.0万円。高く見えますが該当16件と薄く、信頼区間は重なります
- 施工管理(126件): 105日未満 28.5万円/120日以上 25.5万円/105〜119日 25.0万円。これも該当13件で、信頼区間は重なります
「年間休日が少ないほど月給が高い」とはっきり確認できた職種は、ひとつもありませんでした。休日が少ないぶんは、少なくとも求人票の月給欄では取り返せていません。
内幕②: 差が出た1職種も、原因は休日ではなかった
ひとつだけ、数字の上で差が出た職種があります。ドライバー(136件)です。105日未満が26.5万円、105〜119日が24.0万円で、信頼区間も重なりませんでした。ところが長距離/近距離で分けてから同じ比較をすると、風景が変わります。
- 長距離・年間休日105日以上(23件): 30.0万円(最も高い)
- 長距離・年間休日105日未満(13件): 27.5万円
- 近距離・年間休日105日未満(8件): 26.0万円
- 近距離・年間休日105日以上(59件): 23.0万円
最も高いのは「長距離で、しかも年間休日が105日以上ある求人」でした。長距離の中だけで比べると、休みが少ないほうがむしろ低いのです。全体で「105日未満が高い」ように見えたのは、105日未満の30件のうち13件が長距離だったから。月給を押し上げていたのは休みの少なさではなく、長距離という働き方のほうでした(近距離では休日の少ない層が高く出ていますが、8件と薄い層です)。
「休みが少ない会社が稼げる」のではなく、「たまたま稼げる働き方の職場が、同時に休みも少ない」。原因と結果を取り違えると、応募先の絞り込みで判断を誤ります。
内幕③: 月給と年間休日は、社内で別々に決まっている
ではなぜ、休日を減らしたぶんが月給に乗らないのか。理由は素っ気ないものです。この2つは、社内で別々の人が、別々の材料を見て決めているからです。
月給は「同じ職種の他社の求人票がいくらで出ているか」と「社内の等級表でその等級はいくらか」から決まります。外部と比較され、応募が来るかを左右する数字だからです。一方の年間休日は事業の稼働日から逆算されます。工場のライン、店舗や施設の営業日、現場の工期、シフトの組み方。「何日稼働するか」が先に決まり、休日はその引き算の結果です。「休みを2日減らすから月給を5,000円足そう」と計算する場面は、支援の現場ではまず出てきません。
だから2つは交換関係になりません。年間休日は簡単には動かせない数字で、動かせないからこそ「どう書くか」で工夫が起きます。「完全週休2日制」ではなく「週休2日制」(=週2日休みの週が月に1回以上ある、の意味で使われます)、「4週6休」、「105日以上」の「以上」。日数を書かない求人票があるのも同じ理由です。
読み方: 月給と休日は「時間あたり」で並べ直す
2つが別々に決まるということは、求職者の側で並べ直さないと比較にならないということでもあります。やり方は、時間あたりに直すだけ。月給22.0万円・年間休日105日の求人と、月給21.0万円・年間休日120日の求人を、1日8時間として比べます。
- 年間休日105日 → 年間労働日260日 → 年2,080時間。年収264万円なら時間あたり約1,269円
- 年間休日120日 → 年間労働日245日 → 年1,960時間。年収252万円なら時間あたり約1,286円
月給が1万円高いほうが、時間あたりでは下になりました。年15日の差は8時間換算で年120時間、およそ3週間ぶんの労働です。実測の月給差は職種ごとにほぼゼロなので、この逆転は例外ではなく標準的に起きていると考えたほうが実態に近いはずです。
額面の中身にも注意してください。固定残業代が含まれていれば、その分は「働いた時間の対価の先払い」です(固定残業代の見方、給与レンジの読み方)。休日が少なく、かつ固定残業代が厚い求人は、時間あたりの目減りが二重になります。
応募前・面接での確認方法
105日の求人をすべて避けるのは、もったいない判断です。休日が少なくても残業がほとんどない職場はありますし、120日でも持ち帰り仕事が常態化していれば同じことです。確認すべきは日数よりその中身です。
- ①「年間休日◯日」と実数が書いてあるか。「週休2日制(シフト制)」だけの表記や「105日以上」の「以上」は、実際の日数が読めないサインです。応募前に数字で聞いてください
- ②内訳を聞く。「祝日は休みに含まれますか」「夏季休暇・年末年始は105日の中ですか、別枠ですか」。この2問で実質の休みがほぼ確定します
- ③実績を聞く。「昨年度、休日出勤は年間どのくらい発生しましたか」「発生した場合は振替休日ですか、手当ですか」。制度ではなく実績を聞くのがポイントです
- ④月平均の所定外労働時間とセットで見る。休日日数と残業時間は、片方だけ見ても意味がありません
- ⑤時間あたりに直してから比較する。上の式で迷っている求人を並べると、月給の順位が入れ替わることは珍しくありません
これらを面接で聞くのは失礼にあたりません。採用側が困るのは条件を聞かれることではなく、入社後に「思っていたのと違う」と言われて早期に辞められることです。むしろ休日の実績をその場で答えられない会社のほうが、入社後の勤怠管理も曖昧である可能性が高い──これも現場の実感です。
同じ「105日」でも、実際にどう働きどう休んでいるかは会社ごとに違います。リクプルは「入社前から、リアルに分かる。」をコンセプトに、実際に働く人のインタビューと募集要項をセットで掲載しています(掲載中の求人一覧)。
まとめ
- 105日は「週2日休みでほぼ使い切る」日数。120日との差15日は、おおむね祝日に休めるかどうかの差
- 実測した6職種のいずれでも、「年間休日が少ないほど月給が高い」という関係は確認できなかった
- 唯一差が出たドライバーも、正体は長距離という働き方。休みの少なさが理由ではなかった
- 月給は他社相場と等級表、年間休日は事業の稼働日から決まる。別々に決まるので交換関係にならない
- 比較は時間あたりに直す。月給1万円の差は、年間休日15日の差にあっさり逆転される
- 面接では日数ではなく内訳と実績(祝日の扱い・特別休暇が別枠か・昨年度の休日出勤)を聞く