「求人媒体の選び方」で調べると、媒体の種類・一覧・ランキングが出てきます。ただ、実務で媒体を決める場面はもう少し手前にあります。経営者から出てくる最初の問いは、たいてい「それは高いのか、安いのか」です。
この問いに、月額いくらですとも、応募1件あたりいくらですとも答えないほうがいい。リクプル編集部が支援の現場で学んだのは、相手は人材紹介の通貨——つまり「採用者1名あたりいくら」——で考えているということです。だから広告型も同じ通貨に換算して、並べる。この記事は、その換算の手順そのものを主題にします。
求職者側は「求人サイト」と「紹介会社」の両方を増やしている
比較が避けられない理由は、求職者側の動きに出ています。厚生労働省の「令和7(2025)年 転職者実態調査」(2026年9月25日公表・個人調査)で、転職活動に使った方法を5年前と比べるとこうなっています(複数回答)。
- 求人サイト・求人情報専門誌等 45.1%(令和2年 39.4%・+5.7ポイント)
- ハローワーク等の公的機関 29.6%(34.3%・-4.7ポイント)
- 縁故(知人、友人等) 22.2%(26.8%・-4.6ポイント)
- 民間の職業紹介機関 20.9%(14.8%・+6.1ポイント)
- 企業のホームページ 13.5%(15.1%・-1.6ポイント)
5年で伸びたのは求人サイトと民間の職業紹介機関の2つだけで、伸び幅は紹介機関のほうが大きい。ハローワークと縁故が落ちた分が、この2つに流れています。5年に1度の調査なので単月のノイズもありません。
つまり企業側から見ると、候補者は広告経由でも紹介経由でも来る状態になっています。どちらか一方だけを検討して決める段階ではないので、同じ物差しで並べる作業が必要になります。
月額や応募単価で答えると、比較が成立しない
支援の現場で費用の妥当性を聞かれたとき、最もよくある失敗は自分の得意な単位で答えてしまうことです。広告運用をしている側は応募単価やクリック単価で話したくなりますが、相手はその単位を持っていません。
実際、経営者や紹介者の側が先に相場を出してくることがあります。支援の現場では、「人材紹介は実質年俸の30〜50%。年俸600〜1,000万円なら1名あたり180〜500万円」という整理が相手から提示されることがありました。業界慣行としての紹介手数料は理論年収の30〜35%程度が一般的な水準とされますが(厚生労働省の職業紹介事業報告等で確認できる一般水準・断定は避けます)、幹部・専門職では50%まで見込んでいる経営者もいるわけです。
ここで重要なのは、相手が出した数字を訂正しないことです。相手の前提のまま比べたと明示するほうが、話が早く進みます。こちらに有利な低い数字に置き換えると、比較そのものの信頼が落ちます。
換算の式: 固定費と広告費を足して、採用人数で割る
広告型を1名あたりに直す式は単純です。
広告型の1名あたり総費用 =(支援料などの固定費 + 広告費の実費)÷ 採用人数
説明のために、月額固定の支援料を月25万円・6か月(合計150万円・税別)、広告費は建設系の実績である1名あたり約80万円と置いて、2職種・6か月で2〜3名採用する想定を計算します(金額は説明用の置き値で、実際の条件はサービスや職種によって変わります)。
- 固定費 150万円 + 広告費 80万円 × 2〜3名(160〜240万円)= 合計 310〜390万円
- 採用者1名あたり= 約130〜155万円
これを先ほどの「紹介なら1名あたり180〜500万円」と並べると、初回6か月の時点で紹介の下限を下回るという結論になります。ここまで出して初めて、「高いか安いか」に答えたことになります。
なお、この式を使うときに必ず確認すべき点が1つあります。広告費が支援料に含まれているのか、実費で別なのかです。ここが曖昧だと合計額が後出しになります。見積書側の確認事項は採用代行(RPO)の費用相場より先に、広告費の名義を確認するに整理しています。
「1名あたり」は職種で桁が変わる。自社の職種の実額を使う
ここが換算のいちばん危ないところです。1名あたり広告費は職種で桁が変わります。
リクプル編集部が支援してきた案件を匿名化して並べると、こうなります。
- 地方の土木・建築の施工管理: 1応募あたり広告費 約7万円、年8名採用 → 1名あたり広告費 約50万円
- 首都圏の職人・職長クラス: 3名採用 → 1名あたり広告費 約80万円
一方で、原稿と運用が噛み合った求人の採用単価は1名あたり7〜15万円のレンジに収束する傾向があり、これは採用単価の相場はいくら?「7〜15万円に収束する」という現場の答えで詳しく書いています。7〜15万円と50〜80万円では5倍から10倍違います。
矛盾しているわけではありません。資格や実務経験が必須で、転職者の絶対数がそもそも少ない職種——建設の施工管理や職人はまさにこれです——は、応募が薄いぶん1名あたりが跳ね上がります。逆に未経験可で応募が集まる職種は収束レンジに収まります。
したがって実務上の結論はこうなります。換算に使う広告費は、業界平均ではなく自社の職種の実績値を使う。手元に実績がなければ、同職種・同地域の支援実績を持っている相手に出させる。ここを他職種の数字で埋めると、換算した結論そのものが動きます。
広告型の本当の強みは、固定費が逓減すること
1名あたりで並べたとき、広告型が効いてくる構造がもう1つあります。固定費は採用人数に連動しないことです。
人材紹介は1名採るたびに年俸の数十%が発生するので、1名あたりの費用はほぼ一定です。対して広告型は、支援料の部分が採用人数に関係なく固定なので、職種と採用人数が増えるほど1名あたりの費用が下がっていきます。契約期間が延びるほど固定費の比重も薄まり、先ほどの置き値であれば7か月目以降は1名あたりが広告費の水準に近づいていく計算になります。
この逓減があるので、換算の試算は「複数名を採る想定」で置く必要があります。逆に言えば、1名しか採らない案件では、この換算は広告型に不利です。固定費150万円を1名で割ることになるので、紹介と比べて高く出ます。採用枠が1名だけの案件で「広告型のほうが安い」と言うのは、成立しません。
「採用できる確率が読めない」への答え方
1名あたりで並べると、次に必ず来る質問があります。「紹介は成功報酬だが、広告型は採用できるか分からないのに費用が出ていく」。これは正当な指摘です。
ここで採用確率を約束してはいけません。代わりに、確率は金額側に織り込み済みだと説明します。
- 支援の現場では、採用に至った職種で応募およそ10件に1名(中央値9%)が目安になる傾向があります
- 先に出した「1名あたり広告費 約80万円」は、応募単価 × 応募件数 ÷ 採用人数で計算した実績値です
- つまり採用に至らなかった応募の費用も、すでに分母ではなく分子に入っている。決定率の低さは金額に反映済みということになります
そのうえで、限界は自分から先に出して終えるのが誠実です。
- 広告型は成功報酬ではないので、採用人数を約束するものではありません
- 6か月で1名も採れなければ、1名あたりは紹介の下限を上回ります。最悪ケースを聞かれたら認めるべき部分です
- その代わり費用は月額で固定され、毎月の応募データを見ながら「続ける・止める」を判断できます。紹介にはこの止め方がありません
媒体の選び方という問いに対して、種類や一覧では答えが出ないのはこのためです。判断材料は1名あたりに換算した金額と、固定費が逓減するかどうか、そして途中で止められるかどうかの3つに集約されます。
まとめ
- 求人媒体の選び方は、種類や一覧では決まらない。広告型も人材紹介と同じ「採用者1名あたり総費用」に換算して並べる
- 求職者側は5年で求人サイト+5.7ポイント・民間の職業紹介機関+6.1ポイントと両方を増やしている(厚労省・令和7年転職者実態調査)。どちらか一方だけを検討して決める段階ではない
- 月額や応募単価で答えると比較が成立しない。相手が出してきた紹介相場(年俸の30〜50%等)は訂正せず、その前提のまま比べたと明示する
- 換算式は(固定費 + 広告費の実費)÷ 採用人数。使う前に広告費が支援料に含まれるのか実費別なのかを確定させる
- 1名あたり広告費は職種で桁が変わる。収束レンジは7〜15万円だが、資格・経験必須の建設系では50〜80万円になる。業界平均ではなく自社の職種の実績値で換算する
- 広告型の強みは固定費が採用人数に連動しないこと。人数と職種が増えるほど1名あたりは下がる。逆に採用枠が1名だけの案件ではこの換算は不利になる
- 採用確率は約束せず、応募10件に1名(中央値9%)という前提が金額側に織り込み済みだと説明する。そのうえで「人数は約束できない/ただし止められる」を自分から先に言う