採用が回らなくなったとき、多くの会社が最初に検討するのが採用代行です。RPO(Recruitment Process Outsourcing)とも呼ばれ、求人の作成から媒体の運用、応募者対応までを外部に任せる形を指します。中途採用を実施する企業の割合は2025年度下半期で84.4%と過去最高を更新しており(出典: リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2025年度実績、正規社員)」)、社内の担当者だけで回しきれない会社が増えています。
そこで「採用代行 費用相場」と調べると、月額10万円台から50万円超まで並んだ表が出てきます。ところが、この表を持って2〜3社から見積もりを取った瞬間に、比較が成立しないことに気づきます。同じ「月25万円」でも、求人媒体への出稿費が入っているものと入っていないものが混ざっているからです。
私たちも、ここで信頼を落としかけたことがあります。だからいまは提示の仕方を固定しました。株式会社KD3の見積もりは、支援費(当社の工数)と広告費(媒体への実費)を必ず別建てで出し、媒体のアカウントはお客様名義で開設いただきます。この記事は、その社内ルールを発注する側の確認事項に置き換えたものです。相場表の代わりに使ってください。
相場表が比較に使えないのは、いちばん大きい費目が人によって別の場所にあるから
採用代行の費用は、性質のまったく違う2つが合算されています。ひとつは支援費——要件の整理、原稿の作成、掲載設定、予算調整、応募者対応といった人の工数です。もうひとつは広告費——IndeedやAirワークなどの媒体に実際に支払う出稿費で、これは代行会社の取り分ではなく実費です。
厄介なのは、広告費のほうが支援費より大きくなる場面が普通にあることです。支援の現場では、募集人数が多い案件ほど広告費が膨らみ、支援費と同等かそれ以上になる傾向があります。つまり見積書のいちばん大きい数字が、相場表にはそもそも載っていないということが起きます。
この構造は、求人広告そのものを比べるときと同じです(参考: 求人広告の費用は、クリック単価が安いほど得とは限らない)。掲載金額ではなく、運用で動く部分がどこにあるかを先に見ないと、安く見えたほうが結果的に高くつきます。
支援費と広告費を1本にすると、あとから必ず「後出し」になる
私たちがこの分け方に固定したのは、1本の金額で提示したときの事故が読めたからです。総額で「月25万円です」と伝えると、お客様は当然それを上限として理解されます。ところが実際に掲載を始めると媒体への出稿費が別に発生します。ここで初めて説明すると、内容が正しくても「後出しされた」という印象だけが残ります。
実際、ある初回商談では、当日のお礼メールを送った直後にもう一通を追送しました。「ご提示した料金プランは当社の支援費用であり、これとは別に求人媒体への広告費が実費で必要となります」と明示するためです。言い漏れに気づいたら、翌日以降に回さず当日中に送る。1日置くだけで後出しになります。
発注する側がこれを防ぐ聞き方は一行で済みます。
- この月額に、求人媒体への出稿費は含まれていますか
- 含まれていない場合、想定している広告費は月いくらで、誰に支払いますか
- 含まれている場合、そのうち何円が媒体に渡り、何円が御社の支援費ですか
3つ目に答えられない相手は、広告費を丸めて持っている可能性があります。丸めること自体が悪いわけではありませんが、そのぶん出稿を絞っても差額が自社に戻らないことは知っておく必要があります。
媒体アカウントは自社名義で開設する。理由は3つある
私たちがお客様にお願いしているのは、媒体のアカウントは御社名義で開設していただき、広告費は御社から媒体へ直接お支払いいただくという形です。運用(掲載設定・予算調整・原稿の差し替え)だけを当社が代行します。代行会社としては手間が増える形ですが、この形にしている理由は3つあります。
1つ目は、広告費が実費であることが証明されること。媒体の管理画面に請求額がそのまま出るので、支援費との境目を毎月説明する必要がありません。
2つ目は、契約が終わっても掲載実績と設定が自社に残ること。アカウントが代行会社名義だと、契約終了と同時に過去の配信データも原稿も手元から消えます。次の代行会社に頼むとき、あるいは内製に戻すときに、ゼロからのやり直しになります。
3つ目は、契約前に掲載できるかどうかを確かめられること。求人媒体には審査があり、業種や職種によっては掲載自体が通らないことがあります。名義が自社なら、契約を結ぶ前にアカウントを開設して掲載可否を確認できます。掲載が通らないことが契約後に分かるのが、採用代行でいちばん避けたい事故です。
「業務範囲」より先に、月額の中身を工数と実費に割る
採用代行の比較記事はたいてい、業務範囲の表から始まります。スカウト送信は入るか、一次面接の代行は入るか、という比較です。これ自体は必要ですが、範囲の比較は金額の内訳が揃っていないと意味を持ちません。実費込みの見積もりと実費別の見積もりを範囲だけで並べても、どちらが安いかは出てきません。
順番としては、まず月額を「工数」と「実費」に割る。そのうえで工数側の範囲を比べる。この順にすると、各社の差がどこにあるかが1枚で見えます。
あわせて、支援費の絶対額は案件の規模で動くことも前提に置いてください。私たちの提示でも、現場職を複数名まとめて採る案件は月25万円前後を数か月という形になりますが、幹部を1名だけ採る案件では初月を厚くして2か月目以降を薄くする組み方にしています。幹部採用は要件定義と原稿作成に工数が集中し、掲載後の運用工数はむしろ軽いためです。月額が一定でない見積もりは、不誠実なのではなく工数の山に合わせている可能性があります。山がどこにあるかを聞けば、その会社が何に時間を使うつもりかが分かります。
なお、広告費の総額そのものは代行会社に決めてもらうものではありません。採用枠から逆算して自社で上限を決めます(参考: 採用単価は「計算」より先に決める。採用枠×15万円で予算上限を引く)。
広告費は「いつ始めていつ止めるか」まで見積もりに書いてもらう
広告費を別建てにすると、こんどは「結局いくらかかるか分からない」という不安が出ます。これは金額ではなく期間で消します。私たちが添えているのは次の2点です。
- 配信の開始時期——原稿と写真が整ってから始めるので、契約初月ではなく2か月目からになることが多い
- 停止の条件——採用が決まり次第すぐ止める。掲載期間を消化しきる必要はない
この2行があるだけで、総額の上振れ不安はかなり消えます。逆に言えば、開始と停止の条件が書かれていない見積もりは、広告費が青天井に見えるということです。発注側からは「配信はいつから始まりますか」「決まったらその日に止められますか」と聞けば足ります。
ここまでが費用の建て付けの話です。どの業務を外に出してよく、どれを出すと崩れるかという範囲の議論は別軸で必要になります(参考: 採用の外注でうまくいかない原因は、外注先ではなく渡し方にある)。採用代行は、費用の建て付けと業務範囲の両方がそろって初めて比較できます。
まとめ
- 採用代行(RPO)の費用相場表は比較の役に立たない。月額に求人媒体への広告費が含まれているかどうかが会社ごとに違い、いちばん大きい費目が相場表に載っていないことがあるため
- 株式会社KD3は支援費(当社の工数)と広告費(媒体への実費)を必ず別建てで提示している。1本にすると、掲載開始後に広告費を説明することになり、内容が正しくても後出しの印象が残る
- 言い漏れに気づいたら当日中に追送する。翌日以降に回すと後出しになる
- 媒体アカウントは自社名義で開設する。実費であることが管理画面で証明でき、契約終了後も配信データと原稿が自社に残り、契約前に掲載可否を確認できる
- 見積もりを比べる順番は、業務範囲より先に月額を工数と実費に割ること。内訳が揃っていない状態で範囲だけ並べても、どちらが安いかは出てこない
- 月額が一定でない見積もりは不誠実とは限らない。幹部採用は初月に工数が集中するので、山の位置を聞けばその会社が何に時間を使うつもりかが分かる
- 広告費の不安は金額でなく期間で消す。配信の開始時期と停止の条件を見積もりに書いてもらう