「看護師の採用サイトを作り直したのに、問い合わせが増えない」。写真や院長メッセージを整えても、反応が変わらないという相談はよくあります。
リクプル編集部が求人票の実査データを読むと、看護師の求人は月給の額だけを見ても、良し悪しが判断できない職種でした。採用サイトで募集要項を並べるときは、月給の隣に何を置くかで、求職者の比べ方が変わります。今回は、その並べ方を実査データから考えます。
採用サイトでまず見られるのは、募集要項
Web制作会社ベイジの「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」では、転職者が採用サイトで「まず見たい情報」の1位は募集要項(51.1%)でした。入社前の不安の2位にも「希望の収入が維持されるか」(37.35%)が入っています。
つまり採用サイトに来た看護師は、写真よりも先に、給与と働き方の条件で自分に合うかを確かめています。採用サイト全体の考え方は「採用サイトに足りないコンテンツは「不安1位・人間関係」への回答」で書きました。この記事では、その入口にあたる募集要項の中身に絞ります。
休みが少ない求人は、月給で埋め合わせていなかった
私たちは、ハローワークインターネットサービスに載っている看護師・准看護師の正社員(常勤・月給制)求人20,955件を、2026年10月19日時点で全件実査しました。年間休日ごとに、求人票の月給(手当込みの提示額の下限)の中央値を並べると、次のようになります。
- 年間休日120日以上(6,163件): 24.0万円
- 110〜119日(7,126件): 24.0万円
- 105〜109日(5,155件): 23.2万円
- 104日以下(2,511件): 22.4万円
104日以下の層は、120日以上の層より1.6万円低く出ます(差の95%信頼区間は1.3万〜1.9万円)。病院だけに絞っても0.8万円低いままでした。
「休みが少ない分、月給で報いている」とは読めません。採用サイトの募集要項で月給だけを大きく見せても、年間休日が少なければ、月給の高さで休日の少なさを打ち消すことはできていない、というのが実査の結果です。年間休日の中央値は112日でした。厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」の1企業平均(112.4日)とほぼ同じ水準です。日数の線引きの考え方は「求人票の年間休日は、日数より「閾値をまたぐか」で決まる」にまとめています。
採用サイトの募集要項では、年間休日も月給と同じ大きさの文字で書くのが安全です。休日の少なさを小さく書くと、求職者は求人サイト側の表記で気づき、「隠していた」という印象だけが残ります。
月給が低い病院は、賞与で一部しか取り返せない
施設区分で見ると、月給の中央値は訪問看護26.1万円、病院22.8万円で、3.4万円の差がありました。この差は、夜勤の有無や資格要件を揃えても残ります。
病院は月給が最下位でも、求人票に書かれた賞与月数の中央値は3.5か月で、施設区分の中では最上位でした。基本給の下限に賞与月数を掛けた年間賞与の目安は、病院67.2万円、訪問看護60.5万円です。
ただし、月給の差3.4万円は年に約40万円分あります。賞与の差6.7万円では埋まりません。提示額×12か月に年間賞与を足した粗い年収の目安でも、訪問看護374万円、病院340万円と、月給の順位とほぼ同じ並びでした。
賞与月数は前年度実績や見込みの記載で、支給の約束ではありません。それでも、病院が採用サイトで「賞与3.5か月」を月給の隣に書く意味は大きいといえます。書かなければ、求職者は月給の22.8万円だけを見て他施設と比べるからです。
月給は「基本給はいくらか」とセットで出す
看護師の求人は、月給に手当が組み込まれる職種です。固定残業代のない19,462件で、定額手当が乗っている求人と、手当の上乗せがない求人を比べると、提示額はほぼ同じ(23.3万円対23.6万円)なのに、基本給は19.5万円対23.6万円で4.1万円違いました。
「資格手当あり」「処遇改善手当支給」と書いてあっても、月給が高いとは限らないということです。採用サイトでも、月給の隣に基本給と手当の内訳を置いておくと、求職者が求人サイトで他の施設と見比べたときに食い違いが起きません。詳しくは「看護師の採用が難しいのは、月給が実額とズレる職種だから」で解説しています。
比べられる相手は、他業種ではなく同業の別施設
Indeed Hiring Labの「静かなる逼迫」(2026年8月19日)は、看護への転職の85%は看護からの移動で、看護から転職する人の81%は看護にとどまると報告しています。看護師を採用したいなら、他業種から連れてくるより、同業の別施設から選んでもらう設計になります。
だから採用サイトの募集要項は、同じ通勤圏の別施設の求人票と並べて見られる前提で作る必要があります。夜勤手当が月給に組み込まれていた求人は、夜勤ありの求人の3%ほどで、残りは別建てです。「夜勤手当は1回いくら」まで書いてあるかどうかが、比べられたときの差になります。夜勤手当の読み方は「看護師の採用単価は、夜勤の有無では動かない。求人358件の実査」を参照してください。
まとめ
- 転職者が採用サイトで最初に見るのは募集要項(51.1%)。写真より先に条件で比べられる
- 年間休日104日以下の求人は、120日以上より月給が1.6万円低い。休みの少なさを月給で埋め合わせてはいない
- 病院は賞与3.5か月で一部を取り返すが、月給差3.4万円(年約40万円)は埋まらない。賞与月数は月給の隣に書く
- 月給は基本給・手当の内訳とセットで出す。夜勤手当は「1回いくら」まで書く
- 比べられる相手は同業の別施設。募集要項は、同じ通勤圏の求人票と並べて見られる前提で作る
※本記事の数値は、ハローワークインターネットサービスの公開求人(執筆時点・2026年10月19日の実査)にもとづきます。人材紹介会社が抱える非公開求人は含まれていません。賞与月数は前年度実績や見込みの記載です。出典: ベイジ「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」、厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」、Indeed Hiring Lab「静かなる逼迫」。