「採用 歩留まり」で検索すると、歩留まりとは何か、平均は何%か、Excelの表の作り方、といった情報が並びます。採用担当者から受ける相談も「うちの面接設定率は低いのでしょうか」「内定辞退が多いのは平均と比べてどうですか」という、平均との比較から始まるものが多くあります。
リクプル編集部が株式会社KD3の採用支援で毎月つけている集計表は、媒体の管理画面にある対応状況のラベル14項目をそのまま横に並べたものです。この表を数十社分見てきて言えることは1つです。採用の歩留まりは平均と比べない。見るのは「どの段で落ちているか」で、落ちている段を1つ特定してから打ち手を決める。平均と比べて「低い」と分かっても、何を直すかは出てこないからです。
歩留まりの表は、媒体の対応状況ラベルをそのまま並べれば作れる
採用の歩留まりとは、応募から入社までの各段階で、何人が次の段階に進んだかの割合です。難しい定義は要りません。支援の現場で使っている表は、応募管理画面の対応状況をそのまま14列にしたものです。
応募総数・未対応・選考前辞退・書類送付依頼・書類選考中・書類不合格・面接調整開始・面接日確定・面接合格・面接不合格・選考中辞退・内定通知・内定辞退・採用。この14列を、応募総数以外を足すと応募総数に一致するように埋めます。0件の列も空欄にせず0と書きます。これだけで、どの段で何人が止まり、何人が落ちたかが1行で見えます。
Excelで作る場合の注意は2つです。1つは、応募数を「応募完了数」で数えること。媒体によっては応募開始数という数字が別にあり、入力途中の離脱や社内の動作確認が混ざります。もう1つは、率の分母を「1つ前の段」にすること。応募総数を分母にした率を並べると、後ろの段ほど小さく見えて、どこで落ちたかが分からなくなります。数字の取り方そのものが揺れる問題は採用KPIが急に落ちたら、現場より先に「計測の入り口」を疑うで扱っています。
平均と比べても打ち手が出ない理由
平均値と比べたくなる気持ちは分かります。ただ、採用の歩留まりの平均は、職種・媒体・採用の型で大きく変わるため、自社の判断材料にはなりません。
採用支援の現場で成功した案件を並べると、応募160名から2名を採用した「量×厳選」型と、応募2名から責任者1名を採用した「少数精鋭」型の2つに分かれます。前者の応募から採用までの歩留まりは1%台、後者は50%です。どちらも採用単価では成功で、どちらも平均と比べれば「異常値」です。歩留まりの平均と比べると、成功している採用のほうが悪く見えることがあります。この2つの型は「応募数は多いほど良い」は誤解。応募数と決定率の逆相関の話で詳しく書いています。
もう1つ、段を進むほど応募者の顔ぶれが変わることも、平均を使いにくくしています。マイナビ「中途採用実態調査2026年版」(人事1,600件)では、応募者について「未経験者が多い」と答えた企業が42.4%、「経験者が多い」が24.5%でした。一方、入社者については「未経験者が多い」34.6%、「経験者が多い」30.3%と、差が縮んでいます。応募の段階と入社の段階では、残っている人の構成が違います。全体の歩留まり率は、段ごとに違う人が落ちた結果の合計値で、1つの数字にすると意味が薄れます。
応募単価もクリック率も良いのに、面接に1人も進まなかった
平均と比べる見方の危うさがはっきり出た実例があります。ある企業の営業職の求人で、1か月の応募が48名、応募単価は4,250円、広告のクリック率は10.73%でした。応募単価は支援の現場で見る水準より明らかに安く、クリック率も高い。入口の指標はすべて良好でした。
ところが、面接調整以上に進んだ人は0名でした。応募者の多くが求人の要件と離れており、書類の段階で止まっていたためです。入口の数字を平均と比べていれば「順調」で終わっていた月です。歩留まりの表を段ごとに見て初めて、「応募は取れているが、要件に合う人が来ていない」という落ちている段が特定できました。翌月は配信を量から属性へ振り直し、原稿を書き直しています。
応募単価は、決定率とセットでしか意味を持ちません。応募単価が安いことと、採用が進んでいることは別です。
落ちている段で、原因の置き場所が決まる
14列の表を5つの段に畳むと、落ちた段ごとに原因の置き場所が決まります。支援の現場では次のように読んでいます。
- 未対応・選考前辞退が多い。原因は連絡の速さです。応募から連絡までの日数が延びるほど、選考前辞退は増える傾向があります。マイナビ「2026年8月度 中途採用・転職活動の定点調査」では、転職活動をしている正社員は3.8%です。動いている人が少ない市場で、その人は複数社に同時に応募していると考えるのが自然です。支援の現場では、応募から24時間以内の打診を基本にしています
- 書類不合格・面接不合格が多い。原因は求人原稿の要件です。来てほしい人の条件と、求人票に書いた応募資格がずれていると、ここで落ちます。応募者のうち要件外が過半数なら、面接のやり方より先に原稿を直します。採用要件と求人票の応募資格は別物。ズレたまま出すと入口で落とすが該当します
- 面接調整開始から面接日確定に進まない。原因は日程調整の往復です。候補日を複数出さずに1日ずつ提示している、返信が翌営業日になっている、といった運用の問題で、原稿でも条件でもありません
- 選考中辞退・内定辞退が多い。原因は条件です。合う人は来ているので、入口は正しい。給与の内訳、配属、勤務地、入社日など、入社前に確定していない項目が残っていると、ここで落ちます。定着率向上の取り組みは、入社前に確定させた6項目で半分決まるの6項目が、そのまま辞退の原因一覧になります
- そもそも応募が少ない。これは歩留まりではなく露出の問題です。職種名・写真・媒体を見直す段で、歩留まりの表に打ち手はありません
打ち手は、1と3が運用、2が原稿、4が条件と、置き場所が3つに分かれます。症状別に先に決めておく考え方はスカウト返信率の平均は追わない。1か月後の症状で打ち手を決めるで書きました。歩留まりの表は、この症状を毎月機械的に出す道具です。
書類通過率を平均と比べる意味は、さらに薄くなっている
段の中でも、書類の段は平均との比較が特に効かなくなっています。ベイジ「【2026年版】AI時代の転職活動実態調査」(1,500人)では、転職活動で生成AIを使う用途の1位は履歴書・職務経歴書の作成・添削で49.38%でした。書類の体裁が均質になれば、書類で落とせる人は減り、書類通過率は上がります。通過率が上がったことは、母集団が良くなったことを意味しません。
支援の現場では、書類の段で見極めを強めるより、面接前の短い電話や、面接の場で課題を読んでもらう形に見極めの重心を移しています。書類通過率が去年より上がっていても、面接不合格が同じだけ増えていれば、落ちている段が1つ後ろに動いただけです。
表の作り方:平均の列を作らず「先月の自社」の列を作る
ここまでをExcelの表に落とすと、次の形になります。
- 列は媒体の対応状況ラベル14項目。応募総数以外の合計が応募総数と一致することを毎月検算する。0件も0と書く
- 行は月、または求人ごと。複数の求人を1つの表に混ぜない。型が違う求人を足すと率が壊れる
- 率は1つ前の段を分母にする。応募から連絡がついた率、連絡がついた人のうち面接が確定した率、面接した人のうち内定した率、内定のうち入社した率の4つで足りる
- 平均の列は作らない。代わりに先月の自社の列を置く。比べる相手は業界平均ではなく、先月の自社の同じ段
- 落ちている段を1つだけ赤くする。複数の段が同時に悪くても、先に直すのは1つ。入口から順に直すと、後ろの段の数字が変わる
月に1回、この表を埋めて赤い段を1つ決めるだけで、「歩留まりが悪い」という会話が「書類の段で要件外が6割」という会話に変わります。打ち手が出るのは後者です。
まとめ
- 採用の歩留まりの表は、媒体の対応状況ラベル14項目をそのまま並べれば作れる。応募数は応募完了数、率の分母は1つ前の段
- 平均と比べても打ち手は出ない。量×厳選型(応募160名→採用2名)と少数精鋭型(応募2名→採用1名)は、どちらも成功で、どちらも平均から外れる
- 応募48名・応募単価4,250円でも、面接調整以上0名という月があった。入口の指標は決定率とセットでしか意味を持たない
- 落ちている段で原因の置き場所が決まる。未対応・選考前辞退は運用(24時間以内の打診)、書類・面接不合格は原稿の要件、選考中・内定辞退は条件
- 生成AIで書類が均質化し、書類通過率を平均と比べる意味はさらに薄い。見極めは面接前の電話と面接の場へ
- 表には平均の列を作らず、先月の自社の列を置き、赤くする段は1つにする
自社の応募管理画面を開いて、先月の対応状況ラベルを14列に写してみてください。合計が応募総数に合った時点で、落ちている段はもう見えています。