「求職者がChatGPTやGoogleのAIモードで会社を調べているらしい。採用でもLLMO対策が必要なのでは」。採用担当の方から、こうした相談が増えています。検索すると「AIに引用されやすい書き方」「構造化データ」といった施策が並び、何から手をつければよいか迷うところです。
リクプル編集部が株式会社KD3の支援の中で、ある企業グループの人事チームと「AIでの見え方」をテーマに打ち合わせをしたとき、最後に整理した「進めていただくこと」は、AI専用の施策ではありませんでした。この記事の主張は1つです。採用のLLMO対策は新しい施策ではない。AIが要約する元の情報=求人情報を職種ごとに1つに揃えることで、その最初の一歩は古い求人を消すことです。
求職者は、AIで会社を調べてから応募している
ベイジの「【2026年版】AI時代の転職活動実態調査」(n=1,500)では、転職活動で生成AIを使った人は58.73%でした。20代・30代では66%台です。用途の1位は履歴書・職務経歴書の作成・添削(49.38%)ですが、2位に企業・業界リサーチ(19.18%)が入っています。
つまり、応募前に「この会社はどんな会社か」「この求人の条件はどうか」をAIに聞く求職者が、すでに一定数いるということです。そのときAIが答えの材料にするのは、採用サイト、求人媒体、ハローワーク、過去の求人情報など、ネット上に残っている情報全部です。
AIは「古い求人」と「媒体ごとのずれ」もまとめて要約する
ここで問題になるのが、AIは情報を選り分けてくれないことです。支援の現場で見る求人情報には、次のような状態がよくあります。
- 終わった求人が残っている:募集を締め切った職種や、2年前の給与で出した求人が、媒体や求人まとめサイトに残っている
- 媒体ごとに条件が食い違う:求人媒体Aは月給22万円〜、ハローワークは20万円〜、採用サイトは「当社規定による」のように、同じ職種で数字が揃っていない
- 職種ごとの情報が1か所にない:採用サイトに「募集職種一覧」はあるが、職種ごとの募集要項ページがなく、条件は媒体を見ないと分からない
人が自分で検索していた頃は、求職者が「これは古い情報だな」と読み飛ばしてくれました。AIに要約させると、古い条件も食い違った条件も、ひとつの答えの中に混ざって返ってくる可能性があります。「給与は20万〜22万円程度とされています」のように、どの求人とも一致しない要約になることもあるでしょう。
これはAIに読ませる特別な書き方で直る問題ではありません。元の情報が揃っていないことが原因です。
実際に整理した「進めていただくこと」は求人情報の整備だった
先の打ち合わせでは、生成AIでの企業検索や求人の見え方の事例を1時間ほど共有したうえで、その企業グループに進めていただくことを次のように整理しました。
- 現業職の求人を、固定残業代込みの月給表示に揃える(固定残業の時間数・金額・超過分の支給の3点をあわせて明示)
- 採用サイトに職種ごとの募集要項ページを設ける。あわせて、媒体ごとの記載のずれと、古い求人が残っていないかを確認する
- 月1回、地域の相場を確認して求人に反映し、AIでの見え方と応募の状況を確認する
並べてみると、どれも「AI時代になったからやる」施策ではなく、求人情報として本来そうあるべき状態です。先方の担当者も「ホームページを取引先目線で作っていたので、採用向けに切り替える時期だと感じていた」と話していました。AIの話題は、後回しになっていた求人情報の整備に手をつけるきっかけとして効いた、というのが実感です。
なお、この整理は1社での打ち合わせから出たもので、AIでの見え方の改善がどれだけ応募に効くかの実測はまだありません。ここでは「何から手をつけるか」の順番として読んでください。
採用のLLMO対策は4点に落とす
打ち合わせの内容を、他社でも使える形に直すと次の4点になります。上から順に、手間が小さく効果が見えやすいものです。
1. 古い求人を消す
終わった募集、条件が変わる前の求人を、媒体の管理画面・求人まとめサイト・ハローワークで確認し、掲載終了にします。自社で消せないものは、掲載元に削除を依頼します。いちばん手間が小さく、いちばん混乱の元を減らせる作業です。
2. 媒体ごとの条件のずれをなくす
同じ職種の給与・勤務時間・休日・勤務地を、全媒体で横に並べて見比べます。数字が違うものは、正しいほうに揃えます。給与に幅がある場合も、下限と上限を全媒体で同じにします。
3. 職種ごとの募集要項ページを1つ作る
採用サイトに職種ごとの募集要項ページを置き、そこを「正本」にします。ベイジの「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」では、転職者が採用サイトでまず見たい情報の1位は募集要項(51.1%)でした。AIのためというより、もともと求職者が最初に探している情報です。
4. 月1回、AIに自社の求人を聞いてみる
「(会社名)の(職種)の求人の給与と勤務条件は?」とAIに聞き、返ってきた要約が正本の募集要項と一致しているかを見ます。食い違っていれば、どこかに古い情報か、ずれた情報が残っているサインです。同じタイミングで地域の相場も確認し、条件の見直しが必要かを判断します。
「AI向けの書き方」は、揃えたあとで考える
AIに拾われやすい原稿の書き方を工夫する余地は、たしかにあります。ただ、元の情報がばらばらなまま書き方だけを工夫しても、AIはばらばらの情報をまとめて返します。順番は「揃える」が先、「書き方」は後です。
揃えるときに気をつけたいのは、固定残業代込みの月給表示のように、見かけの数字が変わる変更です。全媒体で一斉に揃えないと、かえってずれが増えます。また、固定残業代は時間数・金額・超過分の支給を併記しないと誤解を招きます。書き方は固定残業代の書き方は、45時間分でも「1行の併記」で変わるを参考にしてください。
まとめ
- 転職活動で生成AIを使う人は58.73%、用途の2位は企業・業界リサーチ(19.18%)。応募前にAIで会社を調べる求職者はすでにいる
- AIは古い求人も媒体ごとのずれもまとめて要約する。原因は書き方ではなく、元の情報が揃っていないこと
- 採用のLLMO対策は①古い求人を消す ②媒体ごとのずれをなくす ③職種ごとの募集要項ページを正本にする ④月1回AIに自社の求人を聞いて確かめるの4点
- 見かけの数字が変わる変更(固定残業代込みの月給表示など)は、全媒体で一斉に揃える
- 「AIに拾われる書き方」は、情報を揃えたあとで考える
まずは今日、自社の会社名と職種名でAIに求人の条件を聞いてみてください。返ってきた答えが、いまの求人と同じかどうか。それが採用のLLMO対策の出発点です。