「土木の施工管理は建築より高い。うちの土木の募集も、建築より高く出さないと応募が来ない」──施工管理の採用相談で、こうした前提を置いている会社は少なくありません。施工管理の土木と建築の違いを調べると、年収や難易度の話が多く出てきますが、求人を出す側が知りたいのは「募集の金額を工種で変えるべきか」のはずです。
リクプル編集部は求人相場ウォッチで、施工管理(建築・土木・設備/正社員)の求人10,703件を実査しています。結論から言うと、内訳の基本給で土木が2万円高く出る差は、施工管理技士の要否を揃えると確定しなくなりました。見えていたのは工種の差ではなく、どちらの工種の求人が資格を要求しているかの差です。
基本給では、土木が建築より2万円高く出る
実査の対象は、全国47都道府県の公的職業紹介に出ている施工管理の正社員求人です(2026年10月17日時点・10,703件)。工種は、職種名と仕事内容の記載から機械的に判定しました。
- 土木:4,235件
- 建築:3,352件
- 電気・通信1,028件/設備・管1,017件/その他・判別不能815件/プラント・機械256件
求人票に出ている月給(基本給+定額手当+固定残業代)の下限の中央値は、土木26.0万円・建築25.9万円とほぼ同じです。ところが、同じ求人の内訳にある基本給で並べると差が出ます。
- 土木の基本給:25.0万円
- 建築の基本給:23.0万円(差は2.0万円弱・95%信頼区間1.7〜2.0万円)
この向きは5つの地域ブロックすべてで同じでした。これだけを見ると「土木のほうが高く払われている」と読みたくなります。
差の正体は、資格を求める割合の違い
施工管理で月給を大きく左右する要因の一つに、施工管理技士(1級・2級)を必須にしているかがあります。工種ごとに、この要求の割合を出すと次のようになります。
- 施工管理技士を必須にしている求人:土木54.4%(うち1級必須29.5%)/建築26.7%(うち1級必須15.2%)
- 施工管理技士の記載がない求人:土木19.5%/建築39.9%
土木の求人は半数超が施工管理技士を必須にしており、建築は4割近くが資格の記載すらありません。資格を要求する求人ほど月給が高いのは、施工管理では繰り返し確認されている関係です。1級必須の月給下限は30.0万円、施工管理技士の記載がない求人は24.8万円で、5.2万円の差があります(95%信頼区間5.0〜5.6万円)。工種ごとの基本給の差は、この資格要件の構成の違いを、そのまま映している可能性があります。
資格要件を揃えると、土木と建築の差は確定しない
そこで、施工管理技士の要否が同じ求人どうしで、土木と建築の基本給の中央値を比べました。
- 1級が必須:土木26.2万円(1,250件)/建築26.5万円(509件)
- 必須(2級または級の指定なし):土木25.0万円(1,055件)/建築24.0万円(385件)
- あれば尚可:土木23.1万円(1,104件)/建築23.0万円(1,121件)
- 記載なし:土木22.0万円(826件)/建築22.0万円(1,337件)
4つの層のどれでも、差の95%信頼区間は0を含みます。たとえば1級必須どうしでは、土木と建築の差は−1.4〜1.3万円で、向きすら決まりません。資格の記載がないどうしでは、どちらも22.0万円です。
実は、この結論は今回が初めてではありません。リクプル編集部は、以前の実査で「基本給では土木が建築より高い」と読める結果が出ていましたが、前回(2026年9月)の実査でその解釈を撤回しています。その結論が、今回の10,703件の実査でも同じ形で再現しました。工種そのものが月給の理由になっているとは、いまのところ言えません。
金額を工種で変える前に、決めること3点
求人票を作る側にとっての意味は、「土木だから高く出す」「建築だから抑える」という発想が、競合との比較で空振りしやすいということです。支援の現場では、工種ではなく次の3点を先に決めると、募集の設計がぶれにくい傾向があります(経験則であり、今回の実査で検証した数字ではありません)。
- 施工管理技士を必須にするか、あれば尚可にするか。必須にすると比較される月給帯が上がります。1級必須30.0万円に対し、記載なしは24.8万円。金額を競合に合わせる前に、競合の求人が資格を必須にしているかを確認します
- 経験を問うか、問わないか。施工管理技士の効き目は、経験を問わない求人でいちばん大きく出ます。経験不問の求人だけで揃えると、1級必須28.0万円・記載なし23.5万円で、差は4.5万円(信頼区間4.2〜6.6万円)。経験必須の求人だけに揃えると差は2.3万円(2.0〜3.0万円)です。なお、経験を必須にした求人では、資格の記載がなくても27.7万円で、「あれば尚可」や2級の必須と並びます。経験者を求める募集では、資格の記載の有無は月給にほとんど表れていません(前者の経緯は施工管理の採用は資格で月給が5.5万円動く。前回の結論を撤回しますに書きました)
- 資格の記載を、求人票に書き漏らさない。建築では資格の記載がない求人が39.9%あります。「必須」でも「尚可」でもない曖昧な状態は、応募する側が自分の資格で応募できるか判断できません。必須にしないなら「あれば尚可」と明記し、取得支援の有無を書きます
未経験者の採用では施工管理の未経験採用は職種名で決まる。実査7,972件の入口、施工管理全般の採用単価の考え方は施工管理の採用単価は、資格要件を緩めても下がらないにまとめています。後者の記事は初期の実査(148件)に基づく記述で、大規模な実査で結論が書き換わっている点がありますので、あわせて最新の記事をご覧ください。
施工管理の採用が難しいのは、工種に関係なく同じ
念のため書いておくと、施工管理の採用難易度が高いこと自体は工種を問いません。厚生労働省の一般職業紹介状況では、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は約6.1倍(令和8年4月分の職業別。出典: 厚生労働省 一般職業紹介状況(令和8年4月分))。同じ統計の全職種計は1.18倍(令和8年8月分・季節調整値。出典: 厚生労働省 一般職業紹介状況(令和8年8月分))で、職種として売り手市場です。数字は毎月変動します。そのなかで、工種を理由に募集の月給を上下させる前に、資格要件の設計を見直すほうが、手を打ちやすい部分です。
この数字の読み方と限界
- 工種は、職種名と仕事内容の記載からの機械判定です。求人票の「事業内容」欄は法人全体の説明で複数の工種が並ぶため判定に使っていません。判別できなかった815件(7.6%)は工種別の表に含めていません
- 実査は公的職業紹介1媒体に固定しています。民間の求人サイトの求人は含まれません。執筆時点では、媒体が変わると資格要件の構成が変わる可能性を否定できません
- 集計は月給の下限のみです。賞与・歩合の実支給額・残業代の実支給額は含まず、年収の比較にはそのまま使えません
- 「差は確定しない」は「差がない」という意味ではありません。信頼区間が0をまたぐ層でも、件数が増えれば差が見える可能性は残ります
まとめ
- 施工管理の求人10,703件では、内訳の基本給の中央値が土木25.0万円・建築23.0万円と約2万円開いている(5地域ブロックすべて同じ向き)。月給の額面(提示額)では土木26.0万円・建築25.9万円でほぼ同額
- 差の背景は資格要件の構成。施工管理技士を必須にしている求人は土木54.4%・建築26.7%、資格の記載なしは土木19.5%・建築39.9%
- 施工管理技士の要否を揃えると、1級必須・2級必須・あれば尚可・記載なしの4層すべてで、土木と建築の差の信頼区間は0を含み、確定しない
- 「土木が高い」の解釈を撤回した前回の結論が、今回も再現した。工種は月給の理由として確かめられていない
- 金額を工種で変える前に、①施工管理技士を必須にするか ②経験を問うか ③資格の記載を曖昧にしない、の3点を先に決める
自社の施工管理の募集が、土木か建築かにかかわらず、競合の求人と同じ資格要件で比べられているかを確認してみてください。月給を直す前に、要件を揃えて比べるところからが出発点です。