「施工管理は経験者を採れないので、未経験可で出すことにした」。建設業の採用相談で、いちばん多く出てくる方針転換です。ところが職種名と仕事内容はそのままで給与欄だけを少し下げて出す形になりがちで、応募が増えないまま掲載期間が終わることが少なくありません。
リクプル編集部(株式会社KD3)は2026年8月28日に、施工管理の正社員求人7,972件を実査しました。経験要件で分けて見たところ、未経験を実際に採っている求人は、給与ではなく職種名から違いました。「施工管理補助」「施工管理アシスタント」「見習い」と名乗る735件では、経験不問の割合が65.9%。それ以外の求人の30.6%と比べて倍以上です。
この記事では、その構造を実査データで示したうえで、施工管理の求人を未経験可で出すときに原稿のどこを変えるのかを整理します。数字はすべて公的職業紹介に出ている正社員求人の月給下限の中央値で、データは「求人相場ウォッチ(施工管理)」で公開しています。
まず前提:施工管理の公開求人の3分の1は「経験不問」だった
実査した7,972件を、求人票の「必要な経験等」欄で3つに分けた件数はこうなりました。
- 経験が必須——2,848件(35.7%)
- 経験はあれば尚可——2,425件(30.4%)
- 経験不問(未経験可)——2,699件(33.9%)
3分の1が未経験可です。施工管理は採りにくい職種の代表格で、厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年4月分)」の職業別で見ると建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は約6倍。全職種計の1.18倍(令和8年7月分・季節調整値)の5倍前後という水準です。経験者だけを待っていられないので未経験に開く、という判断そのものは市場の実態に沿っています。
中途採用全体で見ても未経験者の受け入れは広がっていて、リクルートワークス研究所「中途採用実態調査(2025年度実績、正規社員)」では中途採用に占める未経験者比率が31.9%と報告されています。問題は「未経験可にするかどうか」ではなく、未経験可にした求人がどう書かれているかです。
未経験を採っている求人は、職種名から違う
ここが今回いちばんお伝えしたい点です。7,972件を職種名の区分で分けると、次のようになりました。
- 所長・幹部候補——76件
- 施工管理(本務)——7,020件
- 補助・アシスタント・見習い——735件(9.2%)
- 営業を兼務——141件
「施工管理補助」「施工管理アシスタント」「見習い」と名乗る735件のうち、65.9%(約484件)が経験不問でした。それ以外の7,237件では経験不問が2,215件=30.6%ですから、倍以上の開きがあります。
逆から言えば、未経験可の求人2,699件のうち8割強は「施工管理」という職種名のまま出ています。経験不問と書いてはいるものの、名乗りは経験者向けの求人と同じ、という状態です。
これは求職者の検索の入り方と噛み合いません。「施工管理 未経験」で調べる人は、自分が対象に含まれる求人かどうかを、まず職種名で判断します。一覧画面に並ぶのは職種名と給与と勤務地で、必要な経験の欄はクリックした先です。職種名が「施工管理」のままだと、経験不問と書いてあってもクリックの前に落ちます。支援の現場でも、未経験可に切り替えた求人で応募が動くのは、職種名か仕事内容の見出しのどちらかを書き換えたときという傾向があります。
職種名を変えると、月給の相場も2万円ずれる
ただし、職種名を変えることは給与欄を変えることとセットです。職種名の区分別に、求人票に出ている提示額(基本給+定額的に支払われる手当+固定残業代)の下限を並べると、こうなります。
- 所長・幹部候補(76件)——29.8万円
- 施工管理・本務(7,020件)——25.5万円
- 補助・アシスタント・見習い(735件)——23.5万円
- 営業を兼務(141件)——23.1万円
本務と補助で2.0万円の差です。同じ求人の内訳にある基本給で引き直しても、本務24.0万円に対し補助21.7万円で、どちらも95%信頼区間は重なりません。「補助」という名乗りは、応募条件を緩めるだけでなく、相場そのものが1段下に立っている枠だということになります。
経験要件で分けた提示額も同じ向きです。経験が必須28.0万円/あれば尚可25.0万円/経験不問24.3万円。基本給では25.0万円/23.0万円/22.0万円でした。
つまり選択肢は2つあります。本務の職種名のまま未経験可で出して25.5万円前後の相場で戦うか、補助・アシスタントとして23.5万円前後の入口を作るか。後者を選ぶなら、原稿には「補助から本務へ上がるときに月給がいくら動くのか」を書いておかないと、入口の低さだけが残ります。実査では本務と補助の差が2.0万円ですから、そこが提示できる幅の目安になります。
「未経験可」で出すと、値段の理由が資格に移る
未経験可の求人の中でも、月給には差が出ています。経験不問の求人だけに揃えて、資格要件で並べ直すとこうなりました。
- 1級施工管理技士が必須(274件)——28.0万円
- 施工管理技士が必須・2級/級の指定なし(252件)——26.6万円
- 資格はあれば尚可(520件)——24.0万円
- 資格の記載なし(1,653件)——23.2万円
1級必須と資格の記載なしの差は4.8万円で、差の95%信頼区間は4.0万〜6.5万円。経験必須の求人だけで比べたときの差(2.0万〜3.5万円)より大きく、資格の効き目は経験を問わない求人でこそ強く出ます。この点は施工管理の採用は資格で月給が5.5万円動くという記事で詳しく書いています。
採用側の実務に翻訳すると、こうなります。「未経験可・資格不問」で出した求人は、23.2万円という相場の一番下の層に自社を置くことになります。そこには1,653件が並んでいて、条件で差がつかないぶん、勝負は勤務地・年間休日・仕事内容の書き方に移ります。
逆に「未経験可だが、入社後に2級の取得を支援する」と書けるなら、24.0万〜26.6万円の層と同じ土俵に乗せられます。実査では資格取得支援の有無まで機械判定していませんが、資格要件を条件ではなく「入社後に何が起きるか」として書き換えるのは、未経験可の求人で使える数少ない差別化です。
求人原稿でどう書き分けるか
ここまでを原稿の作業に落とします。
1つめは、職種名で対象者を宣言することです。未経験を主対象にするなら「施工管理補助」「施工管理アシスタント(未経験歓迎)」のように、職種名の段階で自分が対象だと分かる形にします。経験者も同時に採りたいなら、原稿を分けて2本出すほうが確実です。1本の求人で両方を狙うと、給与レンジが下限23万円・上限40万円のように広くなり、求人票の給与の幅で書いたとおり、どちらの層も自分の金額として読めなくなります。施工管理は上限が下限の中央値1.50倍・差13.5万円と、もともと幅が広く出やすい職種です。
2つめは、職種名を変えたときの給与を相場に合わせることです。「補助」と名乗って本務の25.5万円で出せば条件としては強く見えますが、仕事内容の欄が本務と同じなら、名乗りだけが違う求人になります。実査の補助枠は65.9%が経験不問で、提示額23.5万円・基本給21.7万円。この位置関係を踏まえて、自社がどちらの枠を作るのかを先に決めてください。
3つめは、固定残業代の扱いです。施工管理は固定残業代の記載がある求人が2,060件(25.8%)あり、時間数まで読めた2,032件の中央値は月25時間、45.4%が30時間以上、21.4%が40時間以上、最長は77時間分でした。未経験の応募者にとって、この時間数は入社後の生活が変わるかどうかの情報です。固定残業代の書き方で整理したとおり、金額・時間数・超過分の別途支給の3点を1行で併記してください。
4つめは、運転免許です。実査した求人の87.6%が普通自動車運転免許を必須にしていました。未経験可で入口を広げたつもりでも、免許の要否を書き忘れると選考の途中で止まります。逆に免許不要で成立する現場なら、それ自体が9割の求人と違う条件です。
なお、職種名の付け方が採用の成否を分けるのは施工管理だけの話ではありません。製造業では実態と職種名がズレてそもそも求人が見つけてもらえないという別の壊れ方をしていました。同じ「職種名」でも壊れ方は業種で違うので、他職種の結論をそのまま持ち込まないでください。
まとめ
- 施工管理の公開求人7,972件のうち経験不問は2,699件(33.9%)。未経験可は例外的な設計ではありません
- ただし「補助・アシスタント・見習い」と名乗る735件では経験不問が65.9%で、それ以外の30.6%の倍以上。未経験を実際に採っている求人は職種名から違います
- 逆に言えば、未経験可の求人の8割強は「施工管理」という職種名のまま出ています。経験不問と書いても、一覧画面では職種名で判断されます
- 職種名を変えると相場も動きます。提示額は本務25.5万円・補助23.5万円、基本給は24.0万円・21.7万円で信頼区間は重なりません
- 経験不問の求人の中では、資格が値段の理由になります。1級必須28.0万円に対し資格の記載なしは23.2万円(差の95%信頼区間4.0万〜6.5万円)
- 原稿では①職種名で対象者を宣言する②名乗りに給与を合わせる③固定残業代を3点で併記する④運転免許の要否を書く——この4点を先に決めてください
未経験可にするという判断は、給与を下げる判断ではありません。どの枠を新しく作るのかという判断です。実査データは「求人相場ウォッチ(施工管理)」で全件公開しているので、自社の求人がどの層に並ぶのかを確かめる土俵合わせにお使いください。