「年齢不問」と書いてある求人に応募したのに、書類で落ちた。年齢のせいではないかと思っても、確かめるすべがない。反対に「35歳以下」「キャリア形成のため」と書かれた求人を見て、なぜこの求人だけ年齢を書けるのか不思議に思った人もいるはずです。「求人 年齢不問 嘘」「求人 年齢制限 キャリア形成」という検索が並ぶのは、そのためでしょう。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業の採用を支援し、求人票を作る側にいます。その立場から先に結論を言うと、求人票の年齢欄は会社の希望を書く欄ではありません。法律で決まった理由に当てはまるときだけ、決まった書き方で制限を書ける欄です。だから会社の本音は、年齢欄ではなく別の欄に出ます。この記事では、その読み方を正直にお伝えします。
結論: 年齢欄は「不問」か「理由つきの制限」の2択。本音は別の欄に出る
ハローワークの企業向け入力案内は、年齢欄についてこう書いています。法律に基づく例外事由に該当する場合を除き、年齢を不問としなければならない。「年齢制限あり」を選んだ場合は、年齢の範囲と、該当する事由、具体的な理由を入力する(ハローワーク「求人情報の入力方法について」)。
つまり求人票を作る側に許されているのは、「不問」と書くか、決められた理由を添えて制限を書くかの2つだけです。「30代まで」という希望があっても、そのまま書く欄はありません。載せられなかった希望はどこへ行くのか。それがこの記事の本題です。
内幕①: 制限を書けるのは6つの理由だけ。求人票の年齢欄はこの一覧で読める
年齢制限を書ける理由は、ハローワークが一覧にしています(ハローワーク「年齢制限該当事由について」)。入力画面に出る略称と中身を、求職者向けに言い換えると次の6つです。
- 定年を上限: 定年年齢の手前までを、期間の定めのない契約で採る。上限だけ書ける
- 法令の規定により年齢制限がある: 深夜業など法律で年齢が決まっている仕事。下限だけ書ける
- キャリア形成: 長く勤めてもらう前提で、若い人を期間の定めのない契約で採る。上限だけ書ける
- 技能・ノウハウの継承: その職種で人が極端に少ない年齢層だけを採る。30〜49歳の範囲で上限と下限の両方を書く
- 芸術・芸能の分野: 役柄などで年齢が必要な場合
- 高年齢者等の特定年齢層の雇用促進: 60歳以上の方、または国の施策の対象になる年齢層だけを採る
求職者側から見ると、この一覧は求人票の年齢欄を翻訳する表になります。「〜64歳以下(定年を上限)」なら、定年が65歳だと分かります。「60歳以上」とあれば、シニアを採ることが目的の求人です。上限と下限が両方あって30〜49歳の中に収まっていれば、その年齢層の社員がいない会社だと読めます。
内幕②: 「キャリア形成」の4文字は、35歳未満・経験不問・新卒と同じ処遇のセット
検索で多いのが「年齢制限 キャリア形成」です。求人票に「35歳以下(キャリア形成)」のように書かれているとき、この4文字には条件が束になっています。厚生労働省のQ&Aによると、この事由は基本的に35歳未満の若年者を想定したもので、使うには「期間の定めのない労働契約」であること、「新規学卒者と同等の処遇」であること、そして職業経験を不問とすることが求められます(厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」)。
同じQ&Aは、この事由で年齢制限をする求人に「○○の経験者募集」「経験者優遇」「経験があれば尚よい」と書くことはできない、と明記しています。経験不問は、募集する職種の経験だけでなく職業に就いた経験そのものを問わないという意味です。経験者が応募してくるのはもちろん差し支えありませんが、求人票の条件としては書けません。
求職者側に言えることは2つです。「キャリア形成」つきの求人は、本当に未経験で入れる入口だということ。そして、35歳を超えている人は応募対象から外れている、と素直に読んでいいということです。年齢不問で経験を求めている別の求人を探すほうが、時間を無駄にしません。
内幕③: 「年齢不問」の求人に想定年齢がないわけではない。本音は「必要な経験」と「月給の下限」に移る
ここが、求人を作る側としていちばん正直に書きたい部分です。支援の現場の実感として、「年齢不問」と書いた求人のすべてが、年齢をまったく気にしていないわけではありません。打ち合わせで「できれば30代まで」と希望が出ることは珍しくないのです。
ただし、それを年齢で選考に反映することは認められていません。厚生労働省のリーフレットは、形式的に年齢不問とすればよいのではなく、年齢不問としながら年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決めることは法の規定に反する、としています(厚生労働省「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」)。
では、年齢に書けなかった希望はどこへ行くのか。求人を作る現場では、おおむね次の2か所に移ります。
- 「必要な経験」の欄: 「○○の実務経験3年以上」のような条件。ここに経験年数が入ると、応募できる年齢層の下側が自然に決まります。逆に、長く働いた人には有利に働く欄です
- 月給の下限: 若手を想定した求人は、下限が新卒に近い水準に置かれがちです。求人票の月給の内訳と下限の読み方は、求人票で本当に見るべき3行を解説した記事で詳しく書いています
つまり「年齢不問」の求人は、年齢欄ではなく「必要な経験」と「月給の下限」が自分の年代に向けて書かれているかで読みます。経験年数が書かれ、下限がそれに見合っていれば、年齢ではなく経験で人を選ぶ求人です。経験不問で下限も低ければ、若手を想定している可能性があります。これは「嘘」というより、書けないことが別の欄に表れた結果です。
「60歳以上歓迎」「定年を上限」は正直な欄。60歳前後の求人の読み方
「求人 年齢制限 60歳」という検索も多くあります。60歳前後の方にとって、年齢欄が正直に働く場面は2つです。
ひとつは「60歳以上」と下限が書かれた求人。これは高年齢者の雇用促進を目的とした例外事由で、シニアを採ることを最初から決めている求人です。Q&Aは「60歳以上の方歓迎」という書き方も、この事由に合致するため違法とはならないとしています。
もうひとつは「〜64歳以下(定年を上限)」のように定年が見える求人。定年を定めている会社は、その対象となる社員を募集するとき定年年齢を記載することが必要とされているので、この数字から入社後に何年働けるかが逆算できます。再雇用制度の有無は面接で確かめる項目です。
数字も見ておきます。厚生労働省の転職者実態調査では、転職者全体のうち現在正社員として働いている人は73.9%ですが、60〜64歳では35.8%、65歳以上では16.5%でした(厚生労働省「令和7年 転職者実態調査」個人調査 表8)。60歳を超える転職では正社員以外の形が多数です。「雇用形態」と「定年」の欄を、年齢欄と並べて読んでください。
応募前と面接で、年齢の扱いを確かめる方法
年齢を直接聞くのは、聞く側も答える側も気を遣う話題です。年齢そのものではなく、年齢が影響する「条件」のほうを聞くのがコツです。
- 応募前に、年齢欄の書き方を翻訳する。「キャリア形成」なら35歳未満・経験不問の入口。「定年を上限」なら定年年齢。上限と下限が両方あれば、その年齢層がいない会社。年齢不問なら、「必要な経験」と「月給の下限」を見る
- 面接では「私と同じくらいの年代で、中途で入社された方はいらっしゃいますか」と聞く。実在する人の有無を聞く質問なので、採用側はこの聞き方を失礼とは受け取りません
- 「定年と、その後の再雇用はどうなっていますか」も聞いてよい質問です。定年年齢は求人票に書かれる前提の情報なので、答えに迷う会社はほとんどありません
- 「平均年齢」が書かれていれば、自分との差ではなく幅を聞く。「いちばん若い方と、いちばん上の方はどのくらいですか」で、職場の年齢構成が見えます
年齢を理由に応募を断られた、年齢だけを理由に不採用と言われた、という場合は、Q&Aが案内しているとおり、求人者の所在地を管轄する都道府県労働局またはハローワークが窓口です。法律に照らした判断は個別の事情によるので、専門機関に相談してください。この記事は、求人票の読み方と確認の仕方の話です。
「年齢不問」の隣にある「未経験歓迎」の読み方は、未経験歓迎の求人で落ちる理由を解説した記事もあわせて読んでみてください。年齢不問・ブランク可で、定年65歳・再雇用70歳までと条件を具体的に語っている会社の例は、建築施工管理の仕事を紹介したインタビュー記事で読めます。働く人の年代や空気を入社前に確かめたい方は、リクプルのインタビュー記事もご覧ください。
まとめ
- 求人票の年齢欄は「不問」か、法律で決まった6つの理由つきの制限しか書けない。会社の希望をそのまま書く欄ではない
- 「キャリア形成」の4文字は、35歳未満・期間の定めのない契約・経験不問・新卒と同等の処遇のセット。本当に未経験で入れる入口でもある
- 「年齢不問」の求人にも想定年齢が残ることはある。年齢で選考するのは法の規定に反するため、本音は「必要な経験」と「月給の下限」に移る
- 「60歳以上」と「定年を上限」は正直な欄。60歳を超える転職では正社員以外の形が多数で、雇用形態と定年の欄を並べて読む
- 面接では年齢ではなく「同年代の中途入社の有無」「定年と再雇用」「年齢の幅」を聞く。年齢を理由に断られた場合の窓口は労働局・ハローワーク