「賞与 年2回」。求人票でよく見るこの一行だけを見て、実際にいくらもらえるのか分かる人はまずいません。「賞与 実績4ヶ月」と書かれた求人と、「賞与 規定による」と書かれた求人。この2つはまったく情報量が違います。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業側の採用を支援し、求人票を作る側にいます。この記事では、その立場だから知っている賞与欄の書き分けの事情を、求職者のみなさんに正直にお伝えします。
ちなみに転職者が入社前に感じる不安の2位は「希望の収入が維持されるか」で37.35%(出典: ベイジ「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」)。年収を左右する賞与が、求人票でいちばん曖昧に書かれているのは皮肉な話です。
結論: 賞与欄は「実績」>「規定」>「あり」の3段階
先に結論です。求人票の賞与欄は、書かれ方によって情報としての強さが3段階に分かれます。
- 「実績◯ヶ月」──過去に実際に支給された結果。3つのなかで唯一、検証できる数字が入っている
- 「規定による」「業績による」──賞与の制度そのものは社内にある。ただし金額も支給も約束していない
- 「賞与あり」のみ──ほぼ情報ゼロ。悪意とは限らないが、読み手が得られるものはない
大事なのは、下の段ほど「悪い会社」というわけではないことです。書き方の差は、企業の姿勢の差であると同時に、後述するような求人票を作る現場の事情でも生まれます。だからこそ、書かれ方から実態を推測する読み方が要ります。
内幕①「賞与あり」しか書かれない求人票が生まれる理由
求人を作る現場にいると、「賞与あり」だけで止まる求人票には、だいたい次のどれかの事情があると感じます。
- 数字を書くと約束になってしまうのが怖い──賞与は業績で動くため、「4ヶ月」と書いた年に業績が落ちると、入社した人の期待を裏切ることになる。だから書かない、という判断は実際にあります
- 支給実績がまだ安定していない──創業から日が浅い、事業を転換した直後など、平均を出せるほどの履歴がない
- 単純に、入力欄を埋めていないだけ──求人媒体の入力項目は驚くほど多く、任意項目は空欄のまま公開されがちです。採用に慣れていない企業ほどこうなります
つまり「賞与あり」だけの求人は、賞与が少ない会社とは限らず、求人票を作り込めていない会社である可能性のほうが高いというのが支援の現場の実感です。判断材料が足りないだけなので、応募前に落とすのではなく「これは聞くべき項目だ」と印をつけておくのが正解です。
内幕②「実績4ヶ月」の「4ヶ月」は、月給4回分ではない
ここが最大の誤解ポイントです。「賞与 実績4ヶ月」と書かれていると、多くの人が手取りに近い月給の4倍を想像します。しかし賞与の月数は、多くの会社で基本給(または賞与の算定基礎額)をベースに計算されます。
ここで効いてくるのが、求人票の月給表記です。求人票の「月給28万円」には、固定残業代や各種手当が含まれていることが珍しくありません。仮に月給28万円のうち基本給が21万円だとすると、実績4ヶ月の賞与は28万×4=112万円ではなく、21万×4=84万円が目安になります。同じ「4ヶ月」でも、月給に占める基本給の比率で金額が3割近く変わるのです。
実際、私たちが求人票の給与内訳を職種ごとに集計した事務職の求人相場ウォッチでも、提示額と基本給の関係は職種や求人によってかなり違いがありました。賞与の月数は、基本給とセットで初めて金額になると覚えておいてください。
もう1点、「誰の実績なのか」も重要です。実績月数は多くの場合全社平均や標準的な等級のモデルで、入社1年目がそのまま同額をもらえるとは限りません。初年度は算定期間が短く按分される、あるいは支給対象外という運用もよくあります。
内幕③「規定による」は、拒否ではなく「制度はある」の合図
「賞与 規定による」という表記に、はぐらかされたと感じる人は多いと思います。ただ求人を作る側の感覚では、これは「賃金規程に賞与の条項があります」という意思表示に近い言葉です。制度が無い会社は、そもそもこの言葉を選びません。
とはいえ、規定があること=毎年出ることではありません。多くの規定は「会社の業績および本人の評価により支給する」という条件つきで、業績が悪ければ支給しない選択が制度上できるようになっています。「規定による」は、制度の存在を示すが、金額と支給の確実性は示さない。この理解が正確です。
なお「賞与なし」と明記されている求人も、必ずしも不利とは限りません。賞与相当分を月給に上乗せして年俸的に払う設計の会社もあり、その場合は月給の水準自体が高くなります。賞与の有無ではなく、年収の総額で比べてください。
「賞与の記載なし」をどう扱うか
賞与欄が空欄の求人も相当数あります。ここで知っておいてほしいのは、賞与は月々の給与とは性格が異なり、支給の有無や金額が各社の制度に委ねられているという点です(個別の契約や規程の解釈が問題になる場合は、労働局の相談窓口や社会保険労務士など専門家にご相談ください)。
したがって「記載なし=賞与なし」と決めつける必要はありませんが、記載がない以上、年収の計算に入れてはいけないのは確かです。求人票に「想定年収400万円」とある場合も、それが月給×12なのか賞与込みなのかで意味が変わります。年収表記を見たら、まず12で割ってみる。月給表記と一致すれば賞与は含まれていない、大きく上回れば賞与込みの試算だと判断できます。
面接・応募前に確認する方法
ここからが実践です。賞与は聞きにくい話題だと思われがちですが、聞き方さえ選べば採用側は失礼と受け取りません。むしろ入社後のミスマッチを防ぎたいのは企業側も同じです。
- 「直近3年の支給実績を、月数で教えていただけますか」──単年ではなく複数年で聞くのがコツ。ブレ幅そのものが、その会社の業績の安定度を表します
- 「賞与の算定は、基本給がベースになりますか」──前述の「4ヶ月の正体」を確認する質問。金額を直接聞くより角が立たず、答えも具体的に返ってきます
- 「入社初年度の賞与は、按分などの扱いになりますか」──初年度の生活設計に直結します。ここを曖昧にしたまま入社すると、最初の1年でつまずきます
- タイミングは2次面接以降や条件面談で。内定後に提示される労働条件通知書で、賞与の記載を必ず現物確認してください
もうひとつ、求人票の段階でできる確認があります。同じ会社が過去に出した求人を探して、賞与欄の書き方が変わっていないかを見ることです。以前は「実績4ヶ月」と書いていた会社が今回は「規定による」に変わっていたら、業績や制度に変化があった可能性が読み取れます。逆に何年も同じ月数を書き続けている会社は、それだけ支給が安定しているという証拠です。
数字の出方は、その会社の誠実さのサインでもある
求人を作る側から見ると、賞与の実績を数字で開示できる会社は、社内で数字が共有され、社員に説明できる状態にある会社です。逆に「聞かれたら答える」姿勢の会社は、入社後の評価や昇給の説明も同じくらい曖昧なことが多い──これも現場の実感です。
とはいえ、求人票の1行だけで会社の全体像を判断するのは無理があります。給与の幅についても同じ構造があり、「給与25万〜45万」の求人で、提示が下限寄りになりやすい理由で詳しく解説しています。
そして最終的に、賞与や給与の「実際のところ」がいちばんよく分かるのは、そこで働いている人の言葉です。リクプルは「入社前から、リアルに分かる。」をコンセプトに、実際に働く人のインタビューと募集要項をセットで掲載しています。数字と働き方のリアルを確かめてから応募したい方は、掲載中のインタビュー記事をご覧ください。
まとめ
- 賞与欄は「実績◯ヶ月」>「規定による」>「賞与あり」の順で情報量が強い。ただし下の段=悪い会社ではない
- 「実績4ヶ月」の4ヶ月は月給4回分ではなく、基本給ベースで計算されるのが一般的。月給に固定残業代が含まれるほど実額は下がる
- 「規定による」は制度がある合図。ただし金額と支給の確実性は約束していない
- 記載なしの賞与は年収計算に入れない。「想定年収」は12で割って月給表記と突き合わせる
- 面接では「直近3年の支給実績(月数)」「算定は基本給ベースか」「初年度の扱い」の3点を、2次面接以降に確認する