「調理師の月給は平均でいくらか」。調理職の求人を出すとき、まず相場を調べる会社は多いはずです。ところが、求人票の月給欄に並ぶ数字は、基本給だけの会社と、手当や固定残業代を足した会社が混ざったものです。そのまま並べて「うちは安い」「うちは高い」と判断すると、読み違えます。
リクプル編集部は株式会社KD3で、調理師・調理スタッフの求人相場ウォッチを続けています。2026年10月25日時点の公的職業紹介の正社員求人8,005件(全国47都道府県)を、月給欄への上乗せの種類で分けて見ました。この記事の主張は1つです。固定残業代の入った調理師の求人は、月給欄の数字が上乗せなしより3.4万円高く見える一方、内訳の基本給は2.0万円低い。月給は、基本給まで開いて比べる。
調理師の月給欄は、3種類の求人が混ざっている
8,005件の月給欄(月給の下限)は、中央値で22.0万円でした。内訳の基本給の中央値は19.8万円で、同じ求人でも2.2万円のずれがあります。このずれの正体を、月給欄に何が含まれているかで3つに分けました。
- 上乗せなし(月給欄=基本給):2,933件(36.7%)
- 定額手当あり(固定残業代なし):3,328件(41.6%)
- 固定残業代あり:1,744件(21.8%)
「月給欄が基本給と同じ」求人は、調理師では4割弱です。残りの6割強は、資格手当や職務手当などの定額手当か、固定残業代のどちらかを月給欄に含んでいます。調理師の相場を1つの数字で語ると、この3種類を混ぜて平均した値を見ていることになります。
固定残業代ありは月給欄25.4万円、基本給は20.0万円
3つの群の、月給欄と内訳の基本給の中央値は次のとおりです。
- 上乗せなし:月給欄22.0万円/基本給22.0万円
- 定額手当あり:月給欄20.1万円/基本給17.5万円
- 固定残業代あり:月給欄25.4万円/基本給20.0万円
月給欄だけを見ると、固定残業代ありの求人は上乗せなしより3.4万円高く出ます。ところが基本給で見ると、固定残業代ありのほうが2.0万円低くなります。月給欄の高さは、基本給の高さではなく、残業代の分が足されていることの表れです。
この比較は、働く場所(飲食店か病院か)を揃えたものではありません。飲食店は月給が高く、病院や介護施設は低い傾向があるため、群ごとの施設の構成が混ざっています。厨房の種類による月給の違いは調理師の採用は「どの厨房か」で月給が4.4万円違うで整理しています。ここで言えるのは、求人票に出る数字の読み方として、月給欄と基本給は別に見たほうがよいということまでです。
固定残業代の時間数は、中央値27時間。4件に1件は40時間以上
固定残業代のある1,744件のうち、時間数が読み取れた1,707件の中央値は27時間でした。40時間以上の求人は423件(24.8%)で、最長は77時間でした。金額の中央値は月4.3万円です。
調理職の求人票は、固定残業代の時間数が「固定残業代に関する特記事項」の自由文に書かれていることが多く、月給欄だけを見ていると、何時間分の残業が含まれているかが分かりません。同じ方法で他の職種を実査したときは、固定残業代の想定時間の中央値がトラックドライバーで35時間、自動車整備士で20時間でした(固定残業代は何時間分が普通か)。調理師の27時間は、その間に位置しています。
ただし、27時間という数字が「適切な時間数」という意味ではありません。4件に1件が40時間以上という分布を見ると、求職者が時間数を見て敬遠する会社がある一方で、書き方次第では不安を与える求人が混ざっていることが分かります。
定額手当も、基本給を大きく下げて見せる
もう1つの上乗せである定額手当は、固定残業代とは性質が違います。定額手当ありの求人は、月給欄が上乗せなしより1.9万円低く、基本給は4.5万円低く出ます。名称は資格手当・職務手当・食事手当・処遇改善手当などで、残業とは無関係です。
支援の現場では、基本給が低いと、賞与や退職金の計算の基準が低く見えると受け取られる傾向があります。月給欄を20万円台に乗せるために手当を積むか、基本給を厚くするかは、見た目の月給だけでなく、求職者が内訳まで読んだときの印象を左右します。
調理師の求人原稿で、確認する3点
ここからは、実査の数字を踏まえたリクプル編集部の考えです。
- 相場と比べるときは、自社の月給欄の中身を先に分ける。固定残業代込みの月給を、上乗せなしの相場22.0万円と比べると、実際より高く見えます。自社が固定残業代を含むなら、基本給で比べます
- 固定残業代は時間数と金額を、月給欄のすぐ近くに書く。固定残業代を含む求人では、基本給の額、固定残業代の時間数と金額、超過分を追加で支払うことを明示するのが、職業安定法の指針で求められています(執筆時点)。書き方は固定残業代の書き方で扱っています
- 定額手当は名称と金額を分けて書く。「各種手当含む」と1つにまとめず、資格手当や食事手当を項目で示すと、基本給との関係が読みやすくなります
数字を読むときの注意
この実査は公的職業紹介1つの求人票に基づいています。月給は下限額の比較で、賞与・夜勤手当・早朝手当などの月給欄の外側の支給は含みません。上乗せの種類による差は、働く場所や地域の構成の違いを含んだ数字で、固定残業代そのものが基本給を下げていると示すものではありません。時間数は求人票の自由文から機械的に読み取っており、読み取れなかった求人は集計から除いています。
まとめ
- 調理師の月給欄は上乗せなし36.7%・定額手当41.6%・固定残業代21.8%の3種類が混ざっている
- 固定残業代ありは月給欄25.4万円で上乗せなしより3.4万円高いが、基本給は20.0万円で2.0万円低い
- 固定残業代の時間数は中央値27時間、4件に1件(24.8%)が40時間以上、最長77時間
- 定額手当ありは基本給が上乗せなしより4.5万円低く出る
- 相場と比べるときは月給欄の中身を分けて、基本給で比べる。固定残業代は時間数と金額を月給のそばに書く
自社の調理師の求人票を開いて、月給欄に何が含まれているかを一度書き出してみてください。