「電気工事士の求人を出しているのに、応募が来ない。競合の同業他社の月給は調べたのに」。電気工事士の採用で、競合というと同じ地域の電気工事会社を思い浮かべる方が多いと思います。
リクプル編集部が公的職業紹介の電気工事士求人4,834件を読んだところ、募集している会社の業種によって、月給下限の出発点が3.0万円違うことが分かりました。同じ「電気工事」の仕事でも、求職者の手元には、専業会社だけでなく、元請け側の会社の求人も並んでいる可能性があります。
実査4,834件:募集している会社の業種で、月給下限が3.0万円違う
2026年10月22日時点で、全国47都道府県の電気工事士の正社員(月給制)求人を最後のページまで巡回し、4,834件を同一の基準で集計しました。「募集している会社がどんな会社か」は、求人票の産業分類だけで機械的に振り分けています。
- 電気工事業(専業): 3,566件(73.8%)・月給下限の中央値22.0万円
- 総合建設・建築・土木: 94件(1.9%)・同25.0万円
差は3.0万円で、差の信頼区間は1.8〜3.3万円と0を含みません。設備工事業(管・機械設置・通信)は22.7万円、発注側・メーカー・その他産業は22.8万円で、専業よりやや高い程度でした。
地域・経験・手当を揃えても、向きは変わらない
こうした差は、地域や経験要件の構成の違いで見えているだけのことがあります。そこで条件を揃えて比べ直しました。
- 5つの地域ブロックすべてで同じ向き: 首都圏27.7万円対25.0万円、関西・東海27.1万円対23.5万円、北海道・東北24.9万円対20.3万円など
- 3つの経験区分すべてで同じ向き: 実務経験必須27.4万円対25.0万円、経験があれば尚可23.3万円対22.0万円、経験不問24.9万円対21.6万円
- 固定残業代なしに揃えても残る: 24.0万円対21.8万円。定額手当なしに揃えると25.0万円対22.0万円
- 資格不問・歓迎に揃えても残る: 25.0万円対22.0万円
基本給で見ても、総合建設側が22.0万円、専業が20.5万円で、差の信頼区間は1.0〜3.2万円です。手当や固定残業代で月給欄を厚く見せているだけ、という説明では収まりません。
確定しないこと:上限額と、ブロック別の金額
一方で、確定していない点もあります。月給レンジの上限額は総合建設側39.7万円、専業35.0万円ですが、差の信頼区間が0を含み、差があるとは言えません。年間休日の中央値は総合建設側117日、専業110日でした。
もう1つ、総合建設側は94件と少なく、地域ブロックごとでは12〜27件しかありません。ブロック別の金額は参考値として読み、「向きが同じ」ことだけを確かな点として扱ってください。この実査は公的職業紹介に載っている求人の相場で、民間媒体の非公開求人は含みません。
「電気工事士の競合」を、同業の専業だけで見ない
建設系の技術職は、求人が人を上回りやすい分野です。厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年4月分)」では、建築・土木・測量技術者の有効求人倍率が約6倍で、全職種平均(1.18倍)の約5倍とされています(厚生労働省。電気工事士そのものの倍率ではありません)。
求職者が同じ技能で応募先を探すとき、画面に出るのは電気工事の専業会社だけではありません。支援の現場では、求職者が職種名で検索して、専業会社と元請け側の会社の求人を同じ一覧で見る傾向があります。専業会社の求人原稿だけを比べて月給を決めると、比較対象の置き方がずれているかもしれません。
実査の中では、専業会社が中央値22.0万円の「低い側」に位置しています。月給を競合の専業に合わせて決めるより先に、求職者が見ている一覧にどの業種の求人が並んでいるかを確認するほうが、判断の順序として適切です。
月給で並べないとき、求人原稿で書けること
専業会社が元請け側の会社と月給で並ぶのは、現実には難しい場合があります。月給を動かせないなら、求人票の別の欄で違いを見せることになります。
- 経験の書き方を分ける: 実務経験が必須の求人は25.0万円、経験不問は22.0万円と、経験が最も効く要件です。「経験があれば尚可」は不問と同じ待遇で並んでいます。くわしくは「電気工事士の採用で月給差を作っているのは、資格ではなく経験だった」を参照してください
- 手当は基本給と分けて書く: 定額手当を積むと、基本給が1.1万円下がる傾向が実査で出ています。「求人票の手当は月給を上げない」で詳しく書きました
- 固定残業代は時間数まで書く: 電気工事士の求人では固定残業代の記載が15.0%で、想定時間数の中央値は21時間です。実査の経緯は「電気工事士の採用単価。「月給欄では盛れない」を644件で一部撤回」で整理しています
- 年間休日を数字で書く: 総合建設側の中央値117日に対し、専業は110日です。休日の少なさを月給で補えていない求人ほど、求職者には不利に見えます
まとめ
- 電気工事士の月給下限は、専業会社22.0万円・総合建設・建築・土木25.0万円で、差は3.0万円(信頼区間1.8〜3.3万円)
- 地域ブロック5つ・経験区分3つのすべてで向きが同じ。固定残業代・定額手当・資格要件を揃えても残る
- 確定しないのは上限額の差とブロック別の金額。総合建設側は94件で、参考値として読む
- 競合は同業の専業だけとは限らない。求職者が見る一覧に、元請け側の求人も並ぶ前提で月給を考える
- 月給で並べないときは、経験要件・基本給の内訳・固定残業代の時間数・年間休日の4つで違いを見せる
※本記事の数値は、公的職業紹介(ハローワークインターネットサービス)の公開求人を対象にした、2026年10月22日時点の実査にもとづきます。求人の業種区分は産業分類による機械的な振り分けで、実際の会社の事業内容と一致しない場合があります。