「営業職は、どの業種で募集するかで月給の相場が決まる」。求人票を作るとき、同じ業種の求人を探して金額を合わせている会社は多いと思います。「営業職 業種」で検索する人も、どの業種なら給料が高いのかを知りたいはずです。
リクプル編集部は株式会社KD3で、営業職の求人相場ウォッチを続けています。2026年10月28日時点の公的職業紹介の営業(正社員・月給)求人8,213件(全国47都道府県)を、求人票の産業分類で10業種に分けて見ました。この記事の主張は1つです。営業職の月給は、業種で並べると順位が入れ替わる。求人票に出ている提示額で業種の相場を決めると、基本給の水準を見誤る。
提示額の順位は、基本給にそのまま引き継がれない
まず、求人票に出ている月給の下限(営業手当などの定額手当と固定残業代を含む提示額)の中央値を、業種別に並べます。
- 人材サービス(131件):25.2万円
- 建設・工事(1,300件):25.0万円
- 不動産(419件):25.0万円
- 運輸・物流(216件):25.0万円
- その他サービス(1,413件):24.5万円
- 卸売(商社・1,666件):23.9万円
- 情報通信・広告(440件):23.6万円
- 製造(メーカー・1,499件):23.3万円
- 金融・保険(173件):23.0万円
- 小売(956件):22.5万円
次に、同じ求人の内訳にある基本給で並べ直します。
- 人材サービス:22.0万円
- 建設・工事:21.5万円
- 製造(メーカー)、その他サービス、不動産:いずれも21.0万円
- 金融・保険:20.9万円
- 情報通信・広告:20.7万円
- 卸売(商社):20.4万円
- 小売:20.0万円
- 運輸・物流:19.0万円
提示額で並べると3位タイだった運輸・物流が、基本給では10業種の最下位になります。不動産も、提示額では3位タイなのに基本給では製造と同じ21.0万円です。反対に製造(メーカー)は、提示額では8位でも基本給では3位タイに上がります。
運輸・物流は、提示額と基本給の差が6.0万円ある
順位が入れ替わる理由は、提示額と基本給の間にある差です。業種ごとに、提示額の中央値から基本給の中央値を引いた差を見ます。
- 運輸・物流:6.0万円
- 不動産:4.0万円
- 建設・工事、卸売(商社)、その他サービス:いずれも3.5万円
- 人材サービス:3.2万円
- 情報通信・広告:2.9万円
- 小売:2.5万円
- 製造(メーカー):2.3万円
- 金融・保険:2.1万円
この差は、営業手当や職務手当などの定額手当と、固定残業代の合計です。運輸・物流の営業は、提示額25.0万円のうち6.0万円が基本給の外にあります。製造や金融は、同じ2万円台前半です。提示額が同じ25万円でも、業種によって、基本給の土台は19万円から21万円まで動くということです。
差の大きさは、手当で月給を大きく見せている求人の多さを示しますが、入社後の手取りが少ないとは限りません。ただ、賞与や退職金を基本給で計算する会社では、基本給の差がそのまま受け取る額の差になります。求職者が最終的に比べるのは、この基本給の側です。
全体では、固定残業代を積むと基本給は下がる
営業全体では、固定残業代のある求人(2,948件)の提示額の中央値は25.0万円、ない求人(5,265件)は23.0万円で、2.0万円高く出ています。ところが同じ求人の基本給で並べ直すと、固定残業代ありが20.0万円、なしが21.0万円で、向きが逆になります。
固定残業代の想定時間数の中央値は22時間で、2,925件中1,068件(37%)が30時間分以上でした。固定残業代の書き方は固定残業代の求人票の書き方で整理しています。業種別の差の背景に、この手当の積み方があると考えるのが自然です。ただし今回の業種別の集計では、業種ごとに固定残業代の有無までは切り分けていません。
業種で相場を読むときの限界
業種別の数字は、求人票の産業分類欄から機械的に分類したものです。件数が薄い業種もあり、人材サービス(131件)、金融・保険(173件)、運輸・物流(216件)は参考値として読んでください。また、業種ごとに地域や経験要件の構成が違うので、業種そのものが月給を決めているとは言えません。
たとえば経験要件は、営業全体では月給に効いています。経験必須の求人(1,057件)の提示額は25.9万円、経験不問(5,504件)は23.4万円で、差は2.5万円です。業種の違いに見える差の一部は、経験者を求める業種かどうかで説明できる可能性があります。営業職の月給を動かす要素の整理は、営業の採用単価は「商材」では決まらないにあります。
求人票を作るときの考え方
ここからは、実査の数字を踏まえたリクプル編集部の考えです。
- 同業種の提示額に合わせて月給欄を作らない。他社の提示額がどんな内訳で作られているかを見ないまま金額を合わせると、基本給の土台が競合より低い求人票になることがあります
- 自社の提示額を、基本給・定額手当・固定残業代に分けて書く。公的職業紹介の求人票は、この3つが分けて表示されます。内訳が見える求人票のほうが、手当の積み方で大きく見せている求人との比較で不利になりません
- 基本給で並べたときの自社の位置を確認する。同じ営業職でも、基本給の中央値は20.8万円です。自社の基本給がこれを下回るなら、手当で補って見せるより、基本給の見直しを先に検討します
- 固定残業代を使うなら、時間数と超過分の扱いを同じ欄に書く。営業職の想定時間数は中央値で22時間です。30時間を超える設定にする場合は、理由も添えます
数字を読むときの注意
この実査は公的職業紹介1つの求人票に基づき、47都道府県の検索結果から4件に1件を等間隔で抜いた求人票を取得しています。全数調査ではなく、民間の求人サイトや非公開求人は含みません。月給は下限額の比較で、賞与やインセンティブの実績額は含まれません。業種は産業分類から機械的に分類しており、中央値同士の差と、求人ごとの差の中央値は一致しない場合があります。
まとめ
- 営業職の提示額は、人材サービス25.2万円から小売22.5万円まで10業種で2.7万円の幅がある
- 基本給で並べ直すと順位が入れ替わり、運輸・物流は提示額で上位でも基本給は19.0万円で最下位
- 提示額と基本給の差は、運輸・物流6.0万円、不動産4.0万円、金融・保険2.1万円と業種で大きく違う
- 業種別の数字は経験要件や地域の構成を含む。業種で相場を決め打ちしない
- 求人票は提示額・基本給・手当・固定残業代の内訳を並べて書き、基本給で自社の位置を確認する
自社の営業職の求人票を開いて、月給欄の金額を内訳に分けたときの基本給が、いくらになるか確認してみてください。