「事務職の求人に『残業は少なめ』と書いているのに、面接で『実際は何時間ですか』と聞かれる」「残業なしと書くと、嘘になりそうで怖い」。事務職の採用担当者から、こうした悩みを聞くことがあります。「一般事務 残業」「一般事務 残業 平均」「一般事務 残業なし」といった検索が出ているのも、求職者が同じ点を気にしているからでしょう。
リクプル編集部は株式会社KD3で、事務職の求人相場ウォッチを続けています。2026年10月31日時点の公的職業紹介の正社員求人11,174件(全国47都道府県)で、残業の書かれ方を調べました。この記事の主張は1つです。事務職の求人票は、すでに8割近くが月平均の時間外を数字で書いている。「残業少なめ」とだけ書く求人は、数字を書く競合と並んだときに情報が足りなく見えるということです。
事務職の求人の78.0%は、月平均の時間外労働を書いている
今回の11,174件のうち、月平均の時間外労働時間が記載されていたのは8,719件(78.0%)でした。その中央値は10時間、最長でも45時間です。月に10時間は、1日あたり30分ほどの残業にあたります。
つまり事務職の求人では、「月10時間程度」を数字で示すことが標準になっています。残業が多い職種として見られがちなほかの職種と比べて、事務職は残業の少なさを数字で示しやすい職種です。数字で書ける会社が書き、書かない会社だけが「実際はどうなのか」を疑われやすくなります。
この傾向は事務職だけのものではありません。Indeed Hiring Labの調査では、残業に言及する求人は2019年1月の約10%から2026年7月には26.6%に増え、そのうち「1〜20時間」が13.6%、「残業なし・原則定時」が8.7%、「ほとんどなし」が7.2%でした。また、残業時間を数字で記載した求人の87%は20時間以下でした(出典:Indeed Hiring Lab「求人の残業開示は広がっている、沈黙もまた」2026年9月16日)。民間媒体を含む全職種の求人での数字で、今回の公的職業紹介の求人とは母数が異なります。それでも、残業を数字で書く流れが広がっていることは確かです。
「残業なし」と書ける求人は、実は多くない
月平均の時間外が書かれた8,719件の中央値は10時間で、最長が45時間でした。中央値が10時間ということは、半数の求人は10時間より多く書いているということです。事務職の残業は「ほぼゼロ」ではなく、「月に10時間前後が普通」と考えるのが実態に近いでしょう。
だから「残業なし」と書いて、月に数時間でも発生する会社は、入社後に「聞いていた話と違う」と受け取られるリスクがあります。支援の現場では、残業の「少ない・ない」の期待値のずれが、早期離職の理由として挙がることがあります(実査の件数ではなく、リクプル編集部の見立てです)。それなら、実績をそのまま書くほうが安全です。
固定残業代がある求人は12.7%。想定時間の中央値は16時間
残業の書き方でもう1つ見ておきたいのが、固定残業代です。今回の11,174件のうち、固定残業代の記載があったのは1,414件(12.7%)でした。想定時間数の中央値は16.0時間、上位4分の1は21.5時間以上で、40時間以上が80件、最長は89時間です。金額の中央値は2.80万円でした。
固定残業代のある求人は、提示額が23.0万円と、固定残業代のない求人の20.0万円より3.00万円高く見えます。ところが基本給は19.5万円と19.2万円で、差は0.30万円にとどまります。月給の3万円の上乗せは、ほぼ残業代の先出しです。月平均の実績が10時間の会社で、固定残業代に16時間以上を見込んでいる場合、「実績より長い時間を契約している」ことになります。求職者から見ると、ここに疑問が出やすい部分です。
残業は3つの数字で書く
ここからは実査を踏まえた、リクプル編集部の考えです。事務職の求人票で残業を書くときは、次の3つを数字で並べるのがおすすめです。
- 月平均の時間外:直近1年の実績を「月平均◯時間」で書く。繁忙月があるなら「決算期は月◯時間」と添える
- 固定残業代の有無:ある場合は、金額と時間数、超過分は別途支給することを同じ行に書く
- 残業が増える時期と理由:月末の締め処理、決算、繁忙期など、いつ・なぜ増えるかを一言で書く
「残業少なめ」「ほぼ定時退社」だけでは、求職者は自分で時間を想像するしかありません。数字を書いておけば、面接での確認が減り、入社後のずれも小さくなります。事務職の求人票では、PCスキルの書き方でも月給の見え方が変わることを事務職の求人票のPCスキル欄で整理しました。事務職の採用の進め方全体は事務職の採用単価は、募集要件でなく「どこに出すか」で決まるも参考になります。
数字を読むときの注意
この実査は公的職業紹介1つの求人票に基づいていて、民間媒体にだけ出ている求人は含みません。月平均の時間外労働時間は求人票に書かれた数字で、実際の勤怠記録ではありません。書いていない2,455件(22.0%)の残業の実態は分かりません。固定残業代の時間数は、範囲で書かれている場合は小さい側の値を採っています。月給は下限額の比較で、残業代の実支給額は含みません。
まとめ
- 事務職の求人の78.0%が月平均の時間外を記載。中央値は10時間、最長45時間(11,174件)
- 固定残業代の記載は12.7%。想定時間の中央値は16時間、40時間以上が80件
- 固定残業代のある求人は提示額が3.00万円高いが、基本給の差は0.30万円
- 求人票は、月平均の時間外・固定残業代の時間数・増える時期を数字で書く
自社の事務職の求人票を開いて、残業が数字で書かれているか、固定残業代の時間数が実績と離れていないかを確認してみてください。