事務職の求人票で、「PCスキル:Word・Excelの基本操作」と1行書いて終わらせていないでしょうか。応募資格欄は、求人票の中でも埋めやすい欄です。
リクプル編集部が事務職の求人10,480件を読んだところ、PCスキル欄に関数・マクロまで書いている求人は、基本操作どまりの求人より月給下限が1.8万円高いことが分かりました。今回は、PCスキル欄に何をどこまで書くかを、実査データから整理します。
実査10,480件:PCスキル欄が書かれている求人は74.0%
2026年10月18日時点で、全国47都道府県の事務職(一般事務・営業事務・経理事務ほか)の正社員求人を、公的職業紹介から集計しました(N=10,480)。求人票には「必要なPCスキル」の欄があります。
- 記載あり: 7,753件(74.0%)。内訳はエクセル5,935件・ワード5,497件・入力2,028件が中心
- 関数まで書いている求人: 276件。マクロまで書いている求人は17件
- 記載なし: 2,727件(26.0%)
つまり、4件に3件の求人はPCスキルを書いていますが、その大半は「エクセル」「ワード」という道具の名前までです。関数やマクロのように、何ができる人を求めているかまで書く求人は、全体の3%に届きません。
関数・マクロまで書く求人は、月給下限が1.8万円高い
PCスキル欄の水準ごとに、月給下限(手当込みの提示額)の中央値を比べました。
- 関数・マクロまで求める: 299件・22.0万円
- Word・Excelの基本操作: 5,704件・20.2万円
- PCスキル欄の記載なし: 2,727件・20.1万円
- その他の記載: 1,750件・20.0万円
関数・マクロと基本操作の差は1.78万円です。基本給で並べても0.97万円高く、差の信頼区間は0.50〜1.44万円で、0を含みません。基本操作と記載なしの間には、ほとんど差がありませんでした。
経験不問に絞っても、差は残る
「関数まで求める求人は、そもそも経験者向けだから高いだけでは」という疑問が出ます。そこで経験不問の求人だけに絞って比べると、差は0.95万円で、信頼区間は0.37〜1.50万円でした。経験要件の裏返しだけでは説明できない差です。
ただし、注意点が2つあります。1つ目は、関数・マクロの299件は全体の2.9%で、層として薄いことです。ほかの層と比べた数字は、参考値として読んでください。2つ目は、因果が分からないことです。PCスキルを高く設定したから月給が上がったのではなく、関数を日常的に使う経理などの業務内容が、高い月給と結びついている可能性があります。
書く価値があるのは「水準」より「具体さ」
実査から言えるのは、「関数と書けば月給が上がる」という話ではありません。見えてきたのは、次の2点です。
- 基本操作どまりの記載と、記載なしの求人は、月給下限がほぼ同じ(20.2万円と20.1万円)。「Excel可」と書くだけでは、求人の条件として差がつかない
- 関数・マクロまで書く求人は少数ながら、月給が高い側に位置している。具体的に書ける求人は、仕事の中身が具体的な求人でもある可能性がある
経理・会計事務では、簿記を「必要な免許・資格」欄に挙げた求人が583件あり、挙げていない求人より1.02万円高い水準でした。経験必須の求人どうしでは1.24万円高いものの、こちらは信頼区間の端が0に触れます(0.00〜2.08万円)。方向は同じですが、断定はできません。
PCスキル欄に書く3つのこと
求職者は、採用サイトで募集要項を最初に見る傾向があります。ベイジの調査(2024年度版)では、転職者が採用サイトでまず見たい情報の1位は募集要項で51.1%でした(ベイジ「中途採用における採用サイト利用実態調査」)。PCスキル欄は、その募集要項で、応募するかどうかを分ける項目の1つです。支援の現場では、次の3点を入れておくと、応募前のずれが減る傾向があります。
- 使う場面を書く: 「Excel」ではなく「月次の売上表を集計する」「請求書の一覧を管理する」のように、業務の中で何をするかを書く
- 使う関数やツールを名指しする: SUMIF・VLOOKUP・ピボットテーブルなど、日常的に使うものを書く。「入社後に教える」ものと「入社前から必要なもの」を分ける
- 求めるレベルを一言で添える: 「関数は先輩が組んだ表を使える程度」「自分で式を組める方」など、応募者が自己判定できる書き方にする
PCスキルを書きすぎると、応募の間口が狭まります。経験不問で募集する場合は、「入社後に研修で習得できる」ことを同じ欄に添えておくと、応募を絞りすぎずに済みます。
月給欄とPCスキル欄は、セットで読まれる
PCスキル欄を具体的に書いても、月給欄の内訳が不明確なままでは、応募者の疑問は残ります。事務職は、提示額が同じ20.0万円でも、基本給が17.8万円の求人と20.0万円の求人に分かれるためです。手当と基本給の関係は「求人票の手当は月給を上げない。実査1.6万件でわかった基本給の削られ方」で、事務職の採用単価については「事務職の採用単価は、募集要件でなく「どこに出すか」で決まる」で書いています。
公的職業紹介の求人票の書き方は「ハローワークの求人票の書き方。応募を分けるのは「仕事の内容」欄」も参考になります。医療事務のように別の力学で動く職種は「医療事務の採用が難しいのは、業界ではなく「職種」で相場が下がるから」で整理しています。
まとめ
- 事務職の求人の74.0%がPCスキル欄を書いているが、大半は「エクセル」「ワード」という道具の名前までにとどまる
- 関数・マクロまで求める求人は月給下限22.0万円で、基本操作どまり20.2万円より1.78万円高い。経験不問に絞っても差は残る
- 基本操作と記載なしは、ほぼ同額(20.2万円と20.1万円)。「Excel可」だけでは条件の差にならない
- 関数・マクロの求人は299件(2.9%)と薄く、因果も分からない。参考値として読む
- PCスキル欄には、使う場面・使う関数やツール・求めるレベルの3点を書く
※本記事の数値は、公的職業紹介(ハローワークインターネットサービス)の公開求人を対象にした、2026年10月18日時点の実査にもとづきます。月給下限は手当込みの提示額の中央値で、賞与や残業代は含みません。