「採用 LP 制作」で検索すると、出てくるのは相場・デザイン事例・テンプレートの記事です。見積もりを取る前に知りたい情報としては正しいのですが、支援の現場でつまずくのは、たいてい公開したあとです。
リクプル編集部が株式会社KD3の採用LP(採用専用のランディングページ)の制作支援で繰り返し見てきたのは、公開後に「このページから何人応募したのか」が誰にも答えられない状態です。制作会社は納品して終わり、発注側は計測の仕組みを知らない、広告を回す会社はまた別、という分担の隙間に数字が落ちます。この記事の主張は1つです。採用LPの制作は、相場やデザインより先に「納品後に数字を見る人」を決めてから頼む。実際に制作のみを請け負い、納品時に運用を発注側へ引き継いだ案件で、何を決めたかをもとに説明します。
採用LPは公開した日に終わらない。終わるのは、数字が読めるようになった日
採用LPは、求人票や広告からの着地先です。求人サイトの短い募集要項では書ききれない仕事内容・一日の流れ・社員の声を1ページにまとめ、応募やLINE相談のボタンにつなげます。マイナビの2026年8月度 中途採用・転職活動の定点調査では、応募者の反応向上に効果があった施策として「採用ホームページ」を挙げた企業が45.8%と最も多く、着地先を整える価値は企業側でも認識されています。
ただし「効果があった」と言えるのは、効果を測れた会社だけです。閲覧数、応募ボタンまで到達した人数、実際に応募した人数が追えなければ、採用LPは「作った」という事実しか残りません。支援の現場では、公開から3か月たっても閲覧数すら見ていない会社が珍しくない傾向があります。原因は怠慢ではなく、見る役割を誰にも割り当てていないことです。
「計測の設定方法を教えてほしい」に、手順で答えてはいけない
ある企業の採用LPを制作のみの契約で請け負った案件で、納品の直前に発注側からこう依頼されました。「運用は自社で行う方針なので、計測の設定方法と注意点を教えてほしい」。
ここで管理画面の操作手順を書いて返すこともできます。しかし支援の現場の経験では、手順で答えると、納品後の無償サポートが無期限に続く傾向があります。「設定したが数字が出ない」「広告会社から別のタグを頼まれた」「数字が倍になった」と、計測に関する相談が制作会社に戻り続け、責任の境目があいまいなまま時間だけが使われます。発注側にとっても、誰に聞けばよいかが定まらない状態は不利益です。
返したのは、操作手順ではなく責任の境目を引く引き継ぎの文書でした。構成は6項目です。
納品時に引き継ぐ6項目
- 発注側で決めてもらうこと。公開環境・計測・更新を担当する会社(または社内の担当者)を決め、納品データの受け渡し先を知らせてもらう。この文書は「そのまま運用会社へ転送して差し支えない」と添える
- 制作側から渡すもの。ページのHTML・画像一式、計測用のスクリプト、計測項目と設定箇所をまとめた引き継ぎ資料
- 計測設定の切り替え。発注側が管理するアクセス解析(GA4など)のアカウントを用意してもらい、制作側が検証用に入れていた計測タグは引き継ぎ時に削除する
- 計測できる項目と、できない項目。ページの閲覧、各セクションへの到達、応募やLINEボタンのクリックまでは計測できる。LINEの友だち追加数や実際の相談・応募件数はページ側では分からない
- 公開・運用時の作業と担当。公開環境への設置、タグの切り替えと動作確認、問い合わせ先の確認、問い合わせ対応の担当者。広告の運用・集計・募集条件の更新・保守は発注側(または運用会社)が持つ
- 納品後の追加対応。修正や設定の追加は、内容を見て別途範囲と見積もりを案内する
6項目のうち、発注側が見落としやすいのが3番目と4番目です。順に説明します。
二重計測は「足した」ときに起きる。制作側のタグは外してもらう
制作会社は、動作確認のために自社の計測タグをページに入れていることがあります。ここに発注側や広告会社が自社の計測タグを「追加」すると、同じ閲覧が2つのアカウントに記録されます。1つのアカウントだけ見ていれば問題は起きませんが、あとから別の会社が「数字が合わない」と気づいて混乱するのが典型です。さらに悪いのは、制作会社のタグを流用して発注側が数字を見ているケースで、制作会社との契約が切れた時点でアカウントごと見られなくなります。
原則はシンプルです。計測アカウントは発注側の名義で用意し、制作側のタグは納品時に外す。制作側から見ると、外すことは自分が作ったページの成果を後追いできなくなることと引き換えです。事例として公開したい場合は、外す前に発注側のアカウントへの閲覧権限を依頼しておくのが筋です。広告アカウントの名義について同じ問題を扱った記事が採用代行(RPO)の費用相場より先に、広告費の名義を確認するにあります。計測も広告も、名義が他社にあるものは、契約が切れた日に消えると考えてください。
計測が切り替わる日は、数字が「段差」を作る日でもあります。切り替え前後で閲覧数が変わっても、ページの反応が変わったとは限りません。計測の変化と成果の変化を切り分ける考え方は採用KPIが急に落ちたら、現場より先に「計測の入り口」を疑うにまとめています。
LINEボタンのクリック数は、応募数でも相談数でもない
採用LPで計測できるのは、ページの上で起きた行動までです。応募ボタンやLINEボタンを押した人数は分かりますが、その先で友だち追加したか、相談のメッセージを送ったか、応募フォームを送信したかは、LINEやフォームの側でしか分かりません。
支援の現場では、「LINEボタンのクリック30件」が報告の場で「問い合わせ30件」に化けてしまう傾向があります。クリックした人の多くは友だち追加の画面で離脱しますから、実際の相談件数は数件ということも珍しくありません。引き継ぎでは「クリック数と相談・応募件数は別物で、後者はLINE側・フォーム側で管理する」と明記し、問い合わせ対応の担当者を決めてもらいました。担当者が決まっていないと、相談が来ても返信が遅れ、ページがいくら見られても採用につながりません。
もう1つ、ページを経由しない応募があります。厚生労働省の令和7年 転職者実態調査では、転職活動の方法(複数回答)として「求人サイト・求人情報専門誌・新聞・チラシ等」が45.1%、「企業のホームページ」は13.5%でした。採用LPを見たあとに求人サイトから応募する人、電話で直接問い合わせる人は、ページの計測には出てきません。面接で「何を見て応募したか」を聞き、ページの数字と突き合わせる担当も、運用側に置いておく必要があります。
見積もりを取る前に、社内で決めておく3つ
ここまでを踏まえると、採用LPの制作を依頼する前に社内で決めておくことは3つです。
- 納品後に数字を見る人。社内の担当者か、広告の運用会社か。月に1回、閲覧数・ボタンのクリック数・応募件数を並べて見る人を名前で決める
- 計測アカウントの名義。自社名義で用意し、制作会社にはそこへタグを設置してもらう。制作会社のタグは納品時に外してもらう
- 納品後の追加の扱い。募集条件の変更や文言の修正を自社でできるか、制作会社に都度頼むか。頼む場合の範囲と費用の決め方を見積もりの段階で確認する
3つ目は採用サイトの制作でも同じ論点で、更新権・ソースコードの譲渡・保守の範囲を採用サイトの制作費用は相場で比べない。差が出るのは公開後の3点で整理しています。採用LPの場合は、ここに「計測を誰が持つか」が加わります。
見積もりの比較はそのあとで構いません。相場より安い見積もりでも、納品後に数字を見る人がいなければ、そのページは「作った」以上の成果を出しません。逆に、数字を見る人が決まっていれば、ページの弱い箇所は公開後に直せます。
まとめ
- 採用LPの効果は測れた会社にしか分からない。公開後に数字を見る人を、制作を頼む前に決める
- 制作会社に「計測の設定を教えて」と頼むと、責任の境目があいまいになる。納品時に引き継ぎの文書を出してもらい、運用会社へ転送できる形にする
- 引き継ぎの6項目:発注側で決めること/渡すもの/計測の切り替え/計測できる項目とできない項目/運用時の作業と担当/納品後の追加対応
- 計測アカウントは自社名義。制作側のタグは納品時に外す。足すと二重計測になり、流用すると契約終了と同時に見られなくなる
- LINEボタンのクリック数は相談数ではない。相談・応募件数はLINE側・フォーム側で数え、問い合わせ対応の担当者を決める
すでに採用LPを公開している会社は、まず「先月このページを何人が見て、何人がボタンを押したか」を即答できる人が社内にいるかを確かめてください。いなければ、ページを直す前に、見る人を決めるところからです。