求人票に「従業員数 110人」と書かれていた。けれど面接に行ってみたら、その場所にいるのは10人ほどだった──こういう食い違いは、決してめずらしいことではありません。「求人票 従業員数 違う」「従業員数 就業場所」といった検索が並んでいるのは、同じ違和感を持つ人が多いからです。
転職者が入社前に最も不安に感じることの1位は「人間関係がうまくいくか」(49.17%)だという調査があります(ベイジ「中途採用における採用サイト利用実態調査(2024年度版)」)。何人の中で働くのかを知りたいのは当然です。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業の採用を支援し、求人票を作る側にいます。この記事では、その立場から従業員数の欄がどう入力されているのかを正直にお伝えします。結論を先に言うと、この欄はあなたが毎日いる場所の人数を答えるようには設計されていません。
内幕①: 従業員数は「求人ごと」ではなく「事業所登録」で入力される
まず、いちばん誤解されているところです。ハローワークの求人では、従業員数は求人票を1件ずつ作るときに書く欄ではありません。会社が最初に一度だけ行う事業所登録のなかにある欄です。
ハローワークの案内にはこう明記されています。「登録した内容は、今後申し込む『求人票』に共通して掲載され、求職者に提供されます」(ハローワーク「事業所登録シートの書き方」)。
つまり同じ会社が出すすべての求人に、同じ従業員数が載るということです。募集する職種が変わっても、募集する場所が変わっても、この数字は変わりません。求人を作る現場の実感として、ここを求人ごとに見直す会社はほとんどありません。
内幕②: 欄は2つある。「企業全体」と「事業所全体」
従業員数の欄は1つではなく、2つあります。同じ「事業所登録シートの書き方」の記入例を見ると、そのまま書かれています。
- 従業員数(企業全体): 110人【平成31年4月1日時点】
- 従業員数 事業所全体: 25人(うち女性13人/うちパート15人)
公式の記入例そのものが、企業全体110人に対して事業所全体25人という数字になっています。もし求人票で目に入ったのが大きい方の数字だったら、それは会社ぜんたいの人数です。
さらに注目してほしいのは、企業全体の欄に「○年○月○日時点」という日付が付くことです。記入例の日付は平成31年4月1日。つまりこの欄は「いつの時点の人数か」を添えて申告する数字で、登録したときのまま更新されないことがあるという前提で作られています。求人票の発行日と、この人数の時点は別物だと考えてください。
内幕③: 「事業所全体」も、あなたの就業場所の人数とは限らない
では小さい方の「事業所全体」なら自分の職場の人数か、というとそうでもありません。ここが「求人票 従業員数 就業場所」という検索の核心です。
ハローワークの入力ガイドには、こう書かれています。「事業所所在地のほかに、工場や支店、店舗など、最大20箇所まで就業場所として登録できます」(ハローワーク「事業所情報の入力のしかた」)。そして求人を申し込むときに、就業場所を「事業所所在地と同じ」か、登録済みの就業場所か、その都度入力するかから選びます(ハローワーク「求人情報の入力方法について」)。
整理すると、就業場所は求人ごとに選べるのに、従業員数は事業所登録に紐づいたまま動かないという構造です。本社所在地で登録した会社が支店の求人を出しても、載っている従業員数は本社を含む事業所の数字です。求人票の従業員数と、面接に行った場所の人数が合わないのは、多くの場合ここが原因です。
派遣・請負の求人では、従業員数は「派遣元」の数字
「求人票 従業員数 派遣」という検索も立っています。派遣の求人では、就業場所の欄に派遣先を入れるルールがあります。「『派遣』『請負』の求人の場合には、派遣先・請負先の事業所名・所在地を入力してください」(前掲「求人情報の入力方法について」)。
一方で従業員数の欄は、求人を出した会社=派遣元の事業所登録の数字です。派遣先の職場に何人いるかは、この欄からは分かりません。派遣・請負の求人では、従業員数と就業場所が別の会社を指していると理解しておくと混乱しません。
「うちパート」と「役員」の読み方
記入例の「事業所全体25人・うちパート15人」は、読み方を知ると情報量がぐっと増えます。ハローワークの入力ガイドでは「パート」を「正社員より就業時間が短い従業員」、「フルタイム」を「正社員のほか、正社員と同じ就業時間の従業員は、雇用形態や社内での呼称にかかわらずフルタイムになります」と説明しています(前掲「事業所情報の入力のしかた」)。
つまり区分の基準は契約の種類ではなく就業時間です。25人のうち15人がパートなら、フルタイムで働いているのは10人前後。ただしその10人が全員正社員とは限らず、フルタイムの契約社員も同じ側に数えられます。「うちパート」は正社員数を示す欄ではないということです。
「求人票 従業員数 役員」という検索については、正直に書きます。私たちが確認した範囲では、ハローワークの入力ガイドに「役員を含めるか」を指示する記載は見当たりません。だから会社ごとの判断で入力されており、役員や代表者を含めている会社も、従業員だけで数えている会社もあります。小規模な会社では、この差が数字の印象を変えます。この欄を1人単位で信頼しないのが安全です。
従業員数が少ないこと自体は、悪い情報ではない
「求人 従業員数 少ない」という検索もありますが、支援の現場の実感としては、少人数の事業所ほど求人票の情報は実態に近い傾向があります。事業所が1つなら企業全体と事業所全体がほぼ一致し、書いてある数字がそのまま職場の人数になるからです。
逆に注意したいのは、企業全体だけが大きく、事業所全体が書かれていない求人です。悪意があるとは限りませんが、あなたが働く場所の規模については何も答えていません。数字の大きさより、2つの数字が両方書かれているかを見るほうが判断材料になります。
入社前に確かめる方法
ここまでの内幕を踏まえると、確認すべきことは4つに絞れます。どれも面接で普通に聞ける質問です。
- 「今回の就業場所には、何名の方が働いていますか」──求人票の数字を疑う質問ではなく、場所を特定して聞き直す質問です。採用側はこれを失礼とは受け取りません
- 「そのうち同じ職種・同じシフトに入る方は何名ですか」──30人の事業所でも、自分と同じ時間帯にいるのが2人なら働き方はまったく違います
- 「求人票の従業員数はいつ時点の人数ですか」──企業全体の欄は日付付きで申告する数字なので、この質問は的を外していません
- 「事業所は全国に何箇所ありますか。配属先が変わる可能性はありますか」──従業員数が複数拠点の合計かどうかが、この一問で分かります
自分で調べられることもあります。会社名で公式サイトの会社概要を見れば、拠点数と従業員数の内訳が書かれていることが多く、求人票の数字がどちらを指しているかの見当がつきます。人数の内訳が分かると、離職率の話もあわせて確認しやすくなります(離職率の調べ方)。求人票全体の読み方は求人票で本当に見るべき3行もあわせてご覧ください。
そして最終的に人数以上に知りたいのは「その人数のなかで、どう働いているか」だと思います。これは条件欄には出てこない情報です。リクプルは「入社前から、リアルに分かる。」をコンセプトに、実際に働く人のインタビューと募集要項をセットで掲載しています(掲載中の求人一覧)。
まとめ
- 従業員数は求人ごとの欄ではなく事業所登録の欄。同じ会社のすべての求人に同じ数字が共通して載る
- 欄は「企業全体」と「事業所全体」の2つ。公式の記入例は企業全体110人/事業所全体25人で、規模の見え方がまったく違う
- 企業全体の欄には「○年○月○日時点」の日付が付く。登録時のまま更新されていないことがある
- 就業場所は最大20箇所まで登録でき、求人ごとに選べる。従業員数は動かないので、面接に行った場所の人数と合わないことがある
- 派遣・請負の求人では、従業員数は派遣元の数字。就業場所(派遣先)の人数とは別の会社を指している
- 「うちパート」は就業時間による区分で、正社員数ではない。役員を含めるかは入力ガイドに指示がなく会社判断
- 確認は「就業場所の人数」「同じ職種・シフトの人数」「いつ時点の数字か」「事業所は何箇所か」の4問