内定が出て、雇用条件を見て初めて気づく。「試用期間3か月」と書いてある。──その3か月、給料はどうなるのか。求人票に書いてあった月給がそのまま出るのか、それとも下がるのか。
私たちリクプル編集部は、ふだんは企業側の採用を支援し、求人票そのものを作る側にいます。この記事では、その立場だから知っている「試用期間の条件が求人票に書かれない理由」と、入社後3か月の手取りを応募のうちに確定させる方法を、正直にお伝えします。
結論: 「下がるか」より「どこが下がるか」で手取りが決まる
先に結論です。試用期間の給与は、会社によって「まったく同条件」「基本給は同じで手当だけ出ない」「基本給ごと下げる」「そもそも時給制」の4パターンに分かれます。そして求職者にとっての痛みがいちばん大きいのは、実は3番目や4番目ではなく2番目の「手当だけ出ない」であることが多い、というのが求人を作る現場での実感です。
理由は単純で、手当は金額が大きいわりに、求人票の「月給◯◯万円」の中に溶けて見えないからです。「基本給は下げません」と言われて安心したのに、実際の初月の振込がイメージと数万円ちがう、という食い違いはここで起きます。
内幕①: 求人票に試用期間の条件が書かれないのは、隠しているからではないことが多い
求人原稿を作るとき、私たちは企業に賃金規定や就業規則を出してもらいます。求人票には試用期間の有無と長さを正確に書く必要があるからです。
そこで実際に起きるのは、こういうことです。規定に「試用期間 3か月」とは書いてあるのに、その間の給与の扱いが数字で書かれていない。「試用期間中の待遇は別途定める」で止まっていたり、そもそも運用でなんとなく決まっていたりする。中小企業ではまったく珍しくありません。
すると原稿を書く側は、書けないので「試用期間3か月」とだけ書いて出すことになります。求職者から見れば情報が欠けた求人票ですが、その裏側は「悪意ある省略」ではなく「会社側も条件を言語化できていない」ことのほうが多い。これは、後で述べる「聞けば普通に答えてもらえる」の根拠でもあります。
逆に言えば、試用期間中の条件まで数字で書いてある求人票は、それ自体が「社内の制度が整っているサイン」として読めます。求人票の情報量は、そのまま会社の管理体制の解像度です。
内幕②: 下がるのは基本給より「手当」。ここが月給欄からは見えない
「試用期間中は本採用時と同条件」と説明する会社でも、実務では手当の扱いが分かれます。よくあるのは次のような線引きです。
- 資格手当──資格の証明書を提出して本採用後から、という運用がある
- 役職手当・現場手当──担当や現場が確定してから支給開始になる
- 住宅手当・家族手当──本採用後の申請扱いにしている会社がある
- 固定残業代──研修中で残業がないため、その分がまるごと乗らない
そして求人票の「月給」は、これらを込みで書かれていることが多い。私たちが職種別に求人票を実査している求人相場ウォッチでも、同じ求人の中で「提示されている月給」と「その内訳の基本給」には無視できない開きがありました。看護師では358件すべてで内訳が読め、提示額の中央値23.5万円に対し、同じ求人の基本給の中央値は20.0万円。保育士では1,078件すべてで内訳が読め、21.0万円に対して18.0万円でした。
つまり月給欄の数字のうち、そこそこの割合が「手当」でできている。試用期間中にその一部が乗らないなら、「基本給は下げません」は必ずしも「求人票の月給がそのまま出ます」を意味しません。求人票の月給がどう積み上がっているかという話は、給与レンジの内幕を書いた記事もあわせて読んでみてください。
「試用期間の給料は平均いくら下がるのか」に答えがない理由
検索すると「試用期間 給料 平均」「いくら下がる」といった疑問が並びます。ただ、ここに一律の相場はありません。上の4パターンのどれを採るかは会社ごとの制度設計であって、業界や職種で決まっていないからです。
強いて傾向を言えば、月給制の正社員募集では「同条件」または「手当が一部出ない」が多く、下げ幅を明示している会社ほど下げ幅は小さい、というのが現場の実感です。大きく下げる会社ほど求人票に書かない、という関係にもなりがちです。
なお、試用期間中であっても最低賃金など法令上の基準は当然かかりますし、「試用期間だから」で何をしてもよいわけではありません。提示された条件が法令に照らして問題ないかの判断は、労働基準監督署や社会保険労務士・弁護士などの専門家に相談してください。この記事は、あくまで求人票の読み方と確認の仕方の話です。
求人票のこの1行を見る──書き方でパターンが読める
求人票の「試用期間」欄は、書き方でかなり情報が出ます。読み分けの目安はこうです。
- 「試用期間3か月(本採用時と同条件)」──いちばん安全。ここまで書く会社は制度が言語化できている
- 「試用期間3か月(期間中の給与は月給◯◯万円)」──下げ幅が明示されている。金額が分かるので比較でき、判断しやすい
- 「試用期間3か月」だけ──条件不明。悪い会社とは限らないが、必ず聞くべき求人
- 「試用期間3か月(時給◯◯円)」──期間中は時給制。月ごとの手取りが勤務日数で変わるので、生活設計は最少月で行う
- 「試用期間中は契約社員」等の記載──雇用形態そのものが変わる。社会保険・賞与算定・有給付与の起算まで影響しうるので、条件面談で必ず個別確認を
あわせて賞与と昇給の起算も見てください。「賞与年2回」と書かれていても、試用期間の3か月が算定期間から外れると、初年度の支給額はイメージよりかなり小さくなります。ここは賞与の「実績」と「規定」の違いと同じ構造の落とし穴です。
応募のうちに手取りを確定させる、失礼にならない聞き方
ここが実践パートです。試用期間の条件は、聞かれて気を悪くする採用担当はまずいません。むしろ「入社後の生活まで具体的に考えている応募者」という評価になります。前述のとおり会社側も言語化できていないことがあるので、答えにくそうなら「後日で構いません」と添えれば十分です。
- 「試用期間中の月給は、求人票に記載の金額と同じという理解でよろしいでしょうか」──イエス/ノーで答えられる形にするのがコツ。曖昧な答えなら次の質問へ
- 「試用期間中に支給されない手当はありますか」──基本給の話でごまかされない、いちばん効く1問。これで「手当だけ出ない」パターンを潰せます
- 「初月の総支給額の目安を教えていただけますか」──金額そのものを1つ確定させる。控除前の総支給で聞くと、相手も答えやすくなります
- 「賞与と昇給の算定は、入社日起算でしょうか、本採用日起算でしょうか」──初年度の年収がここで数十万円変わることがあります
- 「試用期間中の雇用形態は正社員のままでしょうか」──契約社員スタートの会社を早期に見分けられます
そして最後に、労働条件通知書(雇用条件通知書)に試用期間中の給与額が書かれているかを、入社の返事をする前に必ず確認してください。口頭の説明と書面が食い違ったときに手元に残るのは書面です。書面に記載がなければ、「試用期間中の月給も明記していただけますか」とお願いして問題ありません。これは求職者の当然の権利であり、断る会社はまず健全ではありません。
そもそも条件が最初から見える求人を選ぶ
リクプルは「入社前から、リアルに分かる。」をコンセプトに、実際に働く人のインタビューと募集要項をセットで掲載しています。給与や働き方の実態を確かめてから応募したい方は、掲載中のインタビュー記事をご覧ください。
まとめ
- 試用期間の給与は「同条件/手当だけ出ない/基本給ごと下げる/時給制」の4パターン。痛みが大きいのは意外にも「手当だけ出ない」
- 求人票に条件が書かれていないのは、隠しているというより会社側が言語化できていないことが多い。だから聞けば答えが返ってくる
- 月給欄は手当込みで書かれる。「基本給は下げない」=「求人票の月給がそのまま出る」ではない
- 「試用期間3か月」だけの記載は必ず確認。時給制・契約社員スタートの記載があるときは条件面談で個別に詰める
- 効く1問は「試用期間中に支給されない手当はありますか」。最後は労働条件通知書の記載で確定させる