「営業職 求人票 書き方」で探している方の多くが、月給の欄で止まっています。ルート営業の募集だから月給は控えめに書くべきか、新規開拓の募集だから高めに書かないと人が来ないのではないか、という迷いです。
リクプル編集部が株式会社KD3の求人相場ウォッチで営業の正社員求人7,668件(全国47都道府県・2026年10月16日時点)を実査した結果から言えることは1つです。ルート営業か新規開拓かで、月給は変えない。両者の基本給の差は0.3万円で、統計的に差があるとは言えませんでした。差が出るのは上限額だけで、その差も「経験者を求めているかどうか」でほぼ説明がつきます。求人票で差をつける場所は、月給ではなく仕事の中身の書き方と上限の根拠です。
営業の求人票の半分は、営業スタイルが冒頭に書かれていない
実査では、職種名と仕事内容の冒頭200字に出てくる言葉から、営業スタイルを機械的に分類しました。「ルート営業」「既存顧客」「新規開拓」「飛び込み」「反響」といった言葉です。結果、7,668件のうち4,049件、53%は冒頭200字から営業スタイルを判別できませんでした。
仕事内容の後半に書かれている求人は数えられていないので、まったく書いていない求人の数ではありません。ただ、求職者が一覧から求人を開いて最初に読む範囲に、ルート営業なのか新規開拓なのかが書かれていない求人が半分あるということです。
厚生労働省「令和7年 転職者実態調査」では、転職者が今の勤め先を選んだ理由の1位は「仕事の内容・職種に満足がいくから」の40.2%で、「賃金が高いから」の18.8%の2倍以上です。営業職にとっての仕事の内容とは、営業スタイルそのものです。既存のお客様を回るのか、新しいお客様を探すのか、問い合わせに対応するのか。これが冒頭にない求人票は、月給をいくらにしても、最初の判断材料を渡していません。
ルート営業と新規開拓で、基本給は0.3万円しか違わない
営業スタイルが読み取れた求人について、月給の下限を比べます。求人票に出ている提示額(営業手当などの定額手当と固定残業代を含む額)と、同じ求人の内訳にある基本給の両方です。
- 新規開拓が中心(517件)。提示額の中央値24.5万円、基本給20.7万円
- 既存顧客と新規開拓の両方(762件)。提示額24.0万円
- ルート営業・既存顧客中心(2,072件)。提示額23.7万円、基本給20.4万円
新規開拓とルート営業の提示額の差は0.8万円で、これは統計的に0ではないと言えます(差の95%信頼区間0.21万円から1.50万円)。ところが同じ求人の基本給で並べ直すと、20.7万円と20.4万円で差は0.3万円。信頼区間は−0.20万円から+0.80万円と0をまたぎ、差があるとは言えません。
つまり、提示額の0.8万円の差は、新規開拓の求人のほうが手当や固定残業代を多く積んでいる分です。入社時に約束される基本給は、ルート営業でも新規開拓でも同じ水準で出されています。「新規開拓は大変だから高めに」「ルート営業は楽だから低めに」と、市場は書き分けていません。
差は上限にある。ただしその差は「経験者を求めているか」で説明できる
月給の上限額で並べ直すと、差は大きくなります。新規開拓が中心の求人は上限の中央値32.6万円、ルート営業は30.3万円で、差2.3万円は信頼区間(1.00万円から3.27万円)が0をまたぎません。ここだけ見ると「新規開拓のほうが高い」と読めます。
ところが、経験不問の求人どうしで比べると、この差は0.5万円(信頼区間0.0万円から1.8万円)まで縮みます。理由は、新規開拓の求人のほうが経験必須の割合が高いからです。新規開拓の16.2%に対し、ルート営業は9.6%です。
経験要件そのものの効き方は、営業全体でははっきり出ています。経験必須の求人(1,025件)の提示額は25.4万円、経験不問(5,113件)は23.3万円で、差2.1万円は5つの地域ブロックすべてで同じ向きでした。上限額では35.0万円対30.0万円と、差が5.0万円に開きます。
ここから求人票の書き方に戻ると、結論は単純です。上限を高く書きたいなら、営業スタイルではなく経験要件と達成条件をセットで書く。「新規開拓なので上限35万円」ではなく、「法人営業の経験3年以上で、月の受注○件を達成した場合に35万円」という形です。根拠のない上限は、求職者に読み飛ばされます。「経験者優遇」と書いただけでは月給が動かないことは「経験者優遇」では月給が上がらない。10職種5万件で見た経験要件の相場で、10職種分まとめています。
反響営業は下限も上限も最も高い。書くなら「新規開拓なし」を明示する
営業スタイルの中で、提示額も上限額も最も高かったのは反響営業(問い合わせ対応が中心)でした。268件と件数が少ないので断定はしませんが、提示額の中央値25.0万円、上限の中央値35.0万円です。
支援の現場では、反響営業の求人が高く出る背景を、飛び込みや新規開拓がないことが求職者にとって分かりやすい条件だからだと読んでいます。求人票を書く側から見ると、反響営業を募集するなら「反響営業」の4文字だけでなく、「飛び込み営業なし」「新規開拓なし」「お問い合わせいただいたお客様への対応が中心」と、やらないことを明示するほうが伝わります。
逆に、実態が新規開拓中心なのに「反響もあります」と書くと、入社後にずれます。営業スタイルは月給を動かさない代わりに、入社後の定着を動かします。書くのは実態の比率です。「既存のお客様への訪問が8割、紹介からの新規が2割」のように、割合で書くと最も正確に伝わります。
月給欄で盛らない。固定残業代は時間数とセットで1行に
営業スタイルで月給を変えない代わりに、月給欄そのものの書き方で差がつく場所があります。固定残業代です。
実査した7,668件のうち、固定残業代のある求人は2,696件(35.2%)でした。固定残業代ありの提示額は中央値25.0万円、なしは22.8万円で、2.2万円高く見えます。ところが同じ求人の基本給で並べ直すと、ありが20.0万円、なしが21.0万円と上下が入れ替わります。固定残業代の想定時間数は中央値22.5時間で、読み取れた求人の37%が30時間分以上、最長は81時間分でした。
マイナビ「2026年8月度 中途採用・転職活動の定点調査」では、応募や入社を検討するときに重視する情報の1位は「給与・手当・賞与」の59.4%です。最も見られる欄で内訳が読めないと、応募の前で止まります。固定残業代を含めるなら、「月給25万円(基本給20万円、固定残業代4.5万円・25時間分、超過分は別途支給)」と1行に書きます。書き方そのものは固定残業代の書き方は、45時間分でも「1行の併記」で変わるで、営業が月給欄を盛れてしまう職種である背景は営業の採用が難しいのは、月給欄を「盛れてしまう」職種だからで書いています。
営業職の求人票に書く順番
ここまでを、求人票を書く手順に落とします。
- 冒頭200字で営業スタイルを割合で書く。「既存のお客様への訪問が8割、紹介からの新規が2割」のように。反響営業なら「飛び込み営業なし」「新規開拓なし」と、やらないことも書く
- 月給の下限は営業スタイルで変えない。比べる相手は同じ地域の営業求人。首都圏25.3万円、北海道・東北22.5万円と地域差は2.8万円あり、同じ求人の基本給で並べ直しても残る。地域の相場は営業の求人相場ウォッチで公開している
- 上限を高く書くなら、経験要件と達成条件をセットで書く。「法人営業経験3年以上、月の受注○件達成時」のように。営業スタイルを上限の根拠にしない
- 固定残業代は基本給・時間数・超過分の扱いを1行に併記する。提示額が相場より高い求人は、その差が固定残業代で埋まっていることが多く、支援の現場では求職者も内訳を見る前提で読んでいると考えている
- 普通自動車免許は必須にしてよいが、月給の根拠にはしない。実査では89.1%の求人が免許必須で、地域をそろえて比べると免許の要否で月給は変わらなかった
- 未経験可なら、最初の3か月に何をするかを書く。実査した求人の67%が経験不問で、営業は未経験の入り口が広い職種。マイナビ「中途採用実態調査2026年版」でも、応募者について「未経験者が多い」と答えた企業は42.4%。未経験者が最初に知りたいのは月給の上限ではなく、同行から独り立ちまでの道筋
まとめ
- 営業の求人票7,668件のうち、53%は冒頭200字に営業スタイルが書かれていない。転職者が勤め先を選ぶ理由の1位は仕事の内容(40.2%)で、営業にとっての仕事の内容は営業スタイルそのもの
- ルート営業と新規開拓で基本給は20.4万円と20.7万円、差0.3万円で統計的に差がない。提示額の差0.8万円は手当と固定残業代の分
- 差は上限(30.3万円と32.6万円)にあるが、経験不問どうしで比べると0.5万円に縮む。新規開拓の求人は経験必須が16.2%とルート営業の9.6%より多い
- 上限を高く書くなら、営業スタイルではなく経験要件と達成条件をセットで書く
- 反響営業は提示額25.0万円・上限35.0万円と最も高い。書くなら「飛び込みなし」「新規開拓なし」と、やらないことを明示する
- 固定残業代は35.2%の求人にあり、基本給で並べると20.0万円と21.0万円で逆転する。時間数と超過分の扱いを1行に併記する
自社の営業職の求人票を開いて、冒頭200字にルート営業か新規開拓かが書かれているか確認してみてください。書かれていなければ、月給欄を直す前にそこから直します。