「ハローワーク 求人票 書き方」で検索すると、記入例や各欄の説明が並びます。採用担当者から受ける相談は「無料なので一応出しているが、どう書けばいいか分からない」「有料媒体と同じ原稿をそのまま写している」というものが多く、求人票を見せてもらうと、仕事の内容欄が「一般事務」「製造業務全般」「営業および付随業務」の1〜2行で終わっています。
リクプル編集部が株式会社KD3の採用支援で求人原稿を書くとき、有料媒体の原稿とハローワークの求人票で変えるのは文字数だけで、力の入れどころは変えません。この記事の主張は1つです。ハローワークの求人票は固定欄が多く、会社が自由に書けて応募に差が出る欄は実質「仕事の内容」1つしかない。無料だからと職務名を並べて済ませると、月給で負けていなくても選ばれない。欄の構造から順に説明します。
ハローワークの求人票は、自由に書ける欄が少ない。だから1欄に集中する
ハローワークの求人票は、職種・仕事の内容・賃金・就業時間・休日・加入保険・事業内容・会社の特長・求人に関する特記事項と、欄と文字数が定められています(執筆時点の様式です。各欄の文字数の上限は求人者マイページの入力画面でご確認ください)。賃金や休日の欄は数字を入れるだけで、書き方で差はつきません。会社の側で文章を書ける欄は、仕事の内容・事業内容・会社の特長・特記事項の4つに絞られます。
この4つのうち、求職者が最初に読み、応募するかどうかを決めるのが仕事の内容欄です。ハローワーク自身が公開している求人申込書の記入例(奈良労働局「大卒等求人申込書 記入例」)でも、仕事の内容欄は「最も重要視する項目の一つです。詳しい記入をお願いします」と案内されています。新卒向けの記入例ですが、中途でも同じです。
Web媒体の求人原稿は、改行や画像の崩れで読まれなくなる事故が多く、公開前の「壊れ」潰しが先に来ます(求人票の書き方のコツは、公開前にスマホの「壊れ」を潰すこと)。ハローワークの求人票は欄が固定されているため壊れません。代わりに起きるのは「省略」です。数百字の枠に何を残すかが、そのまま応募の差になります。
仕事の内容欄が「職務名の羅列」で終わる求人票は、月給で勝っていても選ばれない
求職者が求人票を見て決めているのは、月給だけではありません。厚生労働省「令和7年 転職者実態調査」では、転職者が現在の勤め先を選んだ理由の1位は「仕事の内容・職種に満足がいくから」40.2%で、「賃金が高いから」18.8%を大きく上回っています。一方で、応募を検討するときに見る情報として「給与・手当・賞与」を挙げる人は59.4%、「休日休暇・福利厚生」は46.7%です(マイナビ「2026年8月度 中途採用・転職活動の定点調査」)。給与と休日で候補を絞り、仕事の内容で決める。この順番で読まれています。
ところが、ハローワークに出ている求人の多くは、月給欄で差がつきません。リクプル編集部が公的職業紹介の正社員求人を職種ごとに実査している求人相場ウォッチでは、工場・製造職8,183件のうち60.7%が提示額と基本給が1円単位で同額で、年間休日120日以上の求人と105日未満の求人で月給欄の差は0でした(工場の人手不足対策は月給欄の外で決まる)。同じ月給、同じ休日の求人が並ぶ中で、求職者が最後に読み比べるのは仕事の内容欄です。そこが「製造業務全般」の6文字では、比べようがありません。
数百字に残す4点:1日の流れ・割合・最初の3か月・相手と道具
有料媒体向けに書く求人原稿は、支援の現場では冒頭の呼びかけから仕事内容まで数千字になることがあります。ハローワークではそれを数百字に圧縮しますが、残す情報の優先順位は決まっています。次の4点です。
- 1日の流れ。出社後に何をして、何時ごろに何が入り、何時に終わるか。「8:30朝礼→午前は前日分の伝票入力→13:00から来客対応→16:00に翌日の準備」のように時刻で書く。求職者は自分がその席に座る姿を想像できるかで決めます
- 仕事の割合。「電話応対3割、データ入力5割、来客対応2割」のように、何が何割かを書く。「など」「全般」「その他付随業務」は割合で置き換えます。割合が書けない仕事は、採用する側も何をさせるか決まっていない仕事です
- 最初の3か月に任せる範囲。入社日から何を任せ、何はまだ任せないか。「最初の3か月は先輩に同行し、見積は4か月目から」と書くと、未経験者は安心し、経験者は到達の速さを読みます
- 相手と道具。誰と話す仕事か(法人の担当者・施設の利用者・一般のお客様)、何を使う仕事か(会計ソフト名・車種・工作機械の種類)。固有名詞があるほど、経験者は自分が即戦力かどうかを判断できます
この4点を入れると、「一般事務」の6文字は「伝票入力5割・電話応対3割・来客対応2割。会計ソフトは○○。最初の3か月は入力のみ」という具体に変わります。文字数は増えますが、枠を超えることはまずありません。超える場合は、特記事項欄に回します。
職種欄は検索語で決めない。実態の名前で書く
仕事の内容欄の前に、職種欄でつまずく求人票も多くあります。ハローワークの求人は職種名で検索されるため、「検索されやすい職種名にしたい」という相談を受けますが、検索語に寄せた職種名は、仕事の内容欄と食い違った瞬間に応募者を入口で落とします。「営業」と書いて中身がルート配送なら、営業を探す人は応募せず、配送を探す人は見つけられません。
職種名は実態の名前で書き、検索語は仕事の内容欄の中に自然に含めるのが実務の順番です。職種名の決め方で起きる事故は求人の職種名を「検索されやすさ」で決めると事故る。実査3万件の結論で扱っています。
特記事項欄に回すべき項目:残業の実績・固定残業代の内訳・寮費・変更の範囲
仕事の内容欄に入りきらない情報を押し込むと、肝心の4点が削れます。次の項目は、仕事の内容欄ではなく「求人に関する特記事項」欄に書きます。
- 残業の実績。通常月と繁忙期の平均時間。ハローワークの記入例でも、残業が増える時期は特記事項欄に書くよう案内されています
- 固定残業代の内訳。何時間分でいくらか。月給欄に含めている場合は、ここで1行の併記がないと基本給が読めません(固定残業代の書き方は、45時間分でも「1行の併記」で変わる)
- 寮・社宅の費用と入居条件。「寮完備」の4文字だけでは不安材料として読まれます。寮費と自己負担、入居できる期間
- 変更の範囲。就業場所と業務の変更の範囲は2024年4月から明示が必須になった項目で、求人票の専用欄に加えて、具体的な説明が要る場合は特記事項欄に書きます(求人票の「変更の範囲」は、書き方より先に聞く相手を分ける)
事業内容と会社の特長の2欄は、仕事の内容欄を読んだ人が「この会社で」と思えるかを補う欄です。沿革や理念より、取引先の業種、従業員数の内訳、平均年齢といった、求職者が自分の居場所を想像できる数字を優先します。従業員数欄は事業所の人数をそのまま書く欄なので、全社の人数を書きたい場合は会社の特長欄に添えます。
「無料だから」手を抜くと、損をする場所が2つある
ハローワークの求人票を簡単に済ませる理由は「無料だから」に尽きます。ただし、手を抜いて損をする場所が2つあります。
1つは、ハローワークを使う求職者が今も3割いることです。厚生労働省「令和7年 転職者実態調査」では、転職活動の方法として「ハローワーク等の公的機関」を使った転職者は29.6%でした。5年前の34.3%から4.7ポイント減っていますが、求人サイト(45.1%)に次ぐ経路です。無料で3割の求職者に届く接点を、6文字の仕事の内容で使っている状態です。
もう1つは、ハローワークの求人票が他の場所にも出ることです。執筆時点では、求人の申し込み時に希望すると、求人情報が民間の求人サイトや職業紹介事業者にも提供される仕組みがあります。ハローワークの求人票は、ハローワークの中だけで読まれる文章ではありません。「製造業務全般」は、提供先でもそのまま「製造業務全般」です。
仕事の内容欄を書き直しても、ハローワークが「待つ」設計の媒体であることは変わりません。書き方を直したうえで、企業側から動ける接点を1つ足す設計はハローワークで応募が来ないのは「待つだけ」の設計だからで扱っています。書き方と媒体設計は、どちらか一方では効果が半分になります。
まとめ
- ハローワークの求人票は固定欄が多く、会社が文章で差をつけられる欄は実質「仕事の内容」1つ。Web原稿の「壊れ」の代わりに「省略」が起きる
- 転職者が勤め先を選んだ理由の1位は仕事の内容(40.2%)。月給と休日で候補を絞り、仕事の内容で決めている
- ハローワークの求人は月給欄で差がつきにくい(工場・製造8,183件の60.7%が提示額=基本給)。差は仕事の内容欄に出る
- 数百字に残す4点は1日の流れ・仕事の割合・最初の3か月・相手と道具。「全般」「など」「付随業務」は割合で置き換える
- 職種欄は検索語でなく実態の名前。残業の実績・固定残業代の内訳・寮費・変更の範囲は特記事項欄に回す
- ハローワークを使う転職者は29.6%で今も求人サイトに次ぐ経路。求人票は提供先の民間サイトでも同じ文章で読まれる
自社のハローワーク求人票の仕事の内容欄を開いて、時刻と割合が1つでも書かれているかを確認してみてください。どちらもなければ、月給を上げる前に、無料で直せる場所があります。