「保育士の募集要項、月給はほかの園と変わらないのに、応募の差が出る」。リクプル編集部の実査では、この感覚を裏づけるデータが出ました。
ハローワークの保育士求人6,585件を読むと、運営する法人の種類によって、月給はほぼ同じなのに賞与の月数だけが大きく違うことが分かりました。月給欄だけで勝負している募集要項は、この差を伝えられていません。今回は、保育士の募集要項に賞与月数を書く意味を考えます。
実査6,585件:認可保育所は、月給では法人の違いが見えない
ハローワークインターネットサービスに載っている保育士の正社員(月給制)求人を、2026年10月20日時点で実査しました(N=6,585)。保育所の種類の中でも件数の多い認可保育所で、株式会社など営利法人が運営する園(995件)と社会福祉法人の園(1,403件)を比べています。
- 提示額(手当込みの月給下限): 株式会社23.0万円・社会福祉法人23.1万円(差の信頼区間は−0.2〜+0.3万円で、差は確定しない)
- 基本給: 株式会社18.7万円・社会福祉法人19.2万円(差は0.5万円)
月給欄を並べると、ほぼ同じです。求職者が募集要項の月給欄だけを見れば、どちらの法人も同じ条件に見えます。
違ったのは賞与の月数。差は1.7か月
求人票に書かれた賞与月数の中央値は、株式会社2.3か月、社会福祉法人4.0か月でした。差は1.7か月で、信頼区間は1.5〜2.0か月です。この差は、首都圏から中国・四国・九州・沖縄までの5つの地域ブロックすべてで再現しました。
賞与月数を求人票に書いている比率にも差があります。株式会社は72.7%、社会福祉法人は94.7%です。放課後等デイサービスでも同じ構造で、賞与月数は株式会社2.0か月に対して社会福祉法人3.8か月、記載率は48.4%対92.6%でした。
賞与月数の記載がある求人だけで、提示額×12か月に基本給×賞与月数を足して年収の目安を出すと、社会福祉法人353万円、株式会社331万円。差は22万円です(信頼区間17〜27万円)。月給で見えない差が、年収の目安では開きます。賞与月数は前年度実績や見込みの記載で、支給の約束ではありません。
株式会社の園が、月給以外で持っているもの
ただし株式会社の園が不利なわけではありません。同じ実査では、株式会社の園の年間休日の中央値は121日で、社会福祉法人の116日より多くなっています。固定残業代のある求人の比率も、株式会社15.3%、社会福祉法人3.9%と違います。
法人の種類によって、月給・賞与・休日の「どこで勝負しているか」が違うということです。社会福祉法人は賞与で、株式会社は休日で条件を作っていると読めます。どちらも、募集要項に書かなければ求職者には伝わりません。
月給欄だけで勝負すると、賞与の強みを捨てることになる
株式会社の園にとっての課題は、賞与月数を書いていない求人が27.3%あることです。賞与を出していても、求人票に書かなければ、求職者は賞与なしの条件と同じに見ます。
社会福祉法人の園は賞与月数を94.7%が書いているので、書くこと自体は差になりません。差になるのは、書き方です。「賞与年2回」だけでなく「前年度実績4.0か月」まで書く園と、書かない園では、同じ月給でも募集要項の説得力が変わります。
介護の分野でも、社会福祉法人と株式会社で月給差が出る構造は確認されています。くわしくは「社会福祉法人の採用は月給で負けていない。株式会社との差1.4万円の正体」で解説しています。
賞与欄は「年2回」で終わらせず、実績まで書く
では、賞与欄に何を書けばよいのでしょうか。次の3点が入っていると、求職者が他の園と条件を比べやすくなります。
- 前年度の支給月数: 「賞与年2回(前年度実績 計◯か月)」のように、実績の数字を書く
- 何を基準に計算するか: 基本給のみが基準なのか、手当を含むのかを書く。月給の手当が大きい園ほど、ここで印象が変わる
- 入社初年度の扱い: 入社月によって初年度の支給額が変わる場合は、その旨を書く
賞与は園の業績や法人の判断で変わるため、「支給を約束するものではありません」の一文も添えておくと、入社後のトラブルを避けられます。賞与月数を書くことは、強みを伝えるだけでなく、入社後のミスマッチを減らす作業でもあります。
募集要項は、通勤圏の求人票と並べて見られる
保育士の月給は、求人票の上では幅が狭い傾向があります。そのため、近隣の園の求人票と並べられたとき、月給欄では差がつきません。施設の種類で見ても、地域を揃えると相場が再現しないことは「保育士採用の競合は近隣の園ではない。実査7,246件の施設区分」で書きました。
月給欄を厚くしても採用単価が動かないことは「保育士の採用単価は、月給欄の厚みでは動かない。求人1,078件の実査」のとおりです。月給を動かせないなら、同じ欄の隣にある賞与月数・年間休日・基本給の内訳で、違いを見せるのが現実的です。手当を月給に組み込む書き方の影響は「求人票の手当は月給を上げない。実査1.6万件でわかった基本給の削られ方」を参照してください。
まとめ
- 認可保育所の月給は、株式会社23.0万円・社会福祉法人23.1万円でほぼ同じ。月給欄だけでは法人の違いが見えない
- 違ったのは賞与月数。株式会社2.3か月・社会福祉法人4.0か月で、差は1.7か月。5つの地域ブロックすべてで再現した
- 賞与月数を求人票に書いている比率は、株式会社72.7%・社会福祉法人94.7%。書かない求人は賞与なしと同じに見える
- 株式会社の園は年間休日が多く(121日対116日)、社会福祉法人の園は賞与で勝負している。自園の強みを募集要項に書く
- 賞与は「前年度実績◯か月」まで書く。実績・見込みの記載であり、支給の約束ではないことを添える
※本記事の数値は、ハローワークインターネットサービスの公開求人(執筆時点・2026年10月20日の実査)にもとづきます。年収の目安は賞与月数の記載がある求人だけで機械的に換算したものです。