「首都圏の介護施設は月給が高く、地方では人が取られてしまう」。地方で介護施設の採用を担当していると、求人サイトの月給欄を見て、そう感じることがあるかもしれません。確かに、求人票の月給欄だけを見れば首都圏は高く出ます。
リクプル編集部は株式会社KD3で、介護職・ヘルパーの求人相場ウォッチを続けています。2026年10月27日時点の公的職業紹介の正社員求人12,442件(全国47都道府県)を地域5ブロックに分けて調べました。この記事の主張は1つです。首都圏の介護求人の月給が高く見えるのは、基本給ではなく手当が厚いため。地方の施設は、月給欄の額で張り合わず、基本給と手当を分けて見せるほうが戦いやすい。
月給欄では首都圏と関西・東海が2.0万円開く
求人票の月給下限(処遇改善手当などの定額手当を含む提示額)の中央値は、地域ブロックごとに次のとおりです。
- 首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉):2,394件、23.9万円
- 関西・東海:3,307件、21.9万円
- 甲信越・北陸・北関東:1,573件、20.4万円
- 中国・四国・九州・沖縄:3,468件、19.8万円
- 北海道・東北:1,700件、19.8万円
首都圏と関西・東海の差は2.0万円(信頼区間1.8〜2.2万円)で、最も低い2地域とは4.1万円開いています。求人サイトの月給欄をそのまま並べると、首都圏が圧倒的に高いように見えます。
基本給で見ると、首都圏と関西・東海はほぼ並ぶ
同じ求人の内訳にある基本給の中央値は、地域ブロックごとに次のとおりです。
- 首都圏:17.7万円
- 関西・東海:17.5万円
- 甲信越・北陸・北関東:17.0万円
- 北海道・東北:16.5万円
- 中国・四国・九州・沖縄:16.3万円
首都圏と関西・東海の差は0.2万円で、差の信頼区間は0〜0.4万円でした。月給欄で2.0万円開いていた差が、基本給では0.2万円に縮みます。最も低い中国・四国・九州・沖縄とでも、差は1.4万円です。
差の正体は、提示額と基本給のあいだの手当
月給欄の額から基本給を引いた差額(中央値)を地域別に見ると、その開きの出どころが分かります。
- 首都圏:5.9万円
- 関西・東海:4.5万円
- 中国・四国・九州・沖縄:3.6万円
- 甲信越・北陸・北関東:3.5万円
- 北海道・東北:3.3万円
首都圏だけが、手当を厚く積んでいる形です。基本給の差が小さいのに月給欄の差が大きいのは、この手当の積み方の違いによるものです。手当が月給の中身を基本給から入れ替える構造は、求人票の手当は月給を上げないで整理しました。賞与が「基本給の◯か月分」で決まる施設では、基本給の差が年収の差に直結するため、月給欄だけで比べると読み違えます。
地方の施設は、月給欄で張り合わない
ここからは実査を踏まえた、リクプル編集部の考えです。地方で介護職を採用する施設にとって、首都圏の求人は月給欄で見ると手の届かない水準に見えます。しかし基本給で見ると、差は思ったほど大きくありません。次の3点を確認します。
- 月給欄の額で首都圏に合わせようとしない。手当を足して月給欄だけ追いつかせると、基本給を削って手当に回す形になりやすく、賞与の計算にも不利になる
- 基本給と手当を分けて書く。基本給が地域の中央値(北海道・東北16.5万円、中国・四国・九州・沖縄16.3万円)以上なら、それを求人票の前面に出す。賞与が基本給の◯か月分なら、金額まで書く
- 比べる相手は同じ地域の求人にする。自社の月給欄を、地域ブロックの中央値と基本給の両方で並べて見直す
法人の種類や施設区分による月給の見え方の違いは、社会福祉法人の採用は月給で負けていないで扱っています。介護職の基本給が提示額の約8割にとどまる点は、介護職の採用単価は、月給の提示額を上げても下がらないにまとめています。夜勤の手当の書き方は介護の夜勤手当は月給欄に入らないを参照してください。
数字を読むときの注意
この実査は公的職業紹介1つの求人票に基づいていて、民間の介護専門サイトにだけ出ている求人は含みません。地域ブロックは5つに分けた集計で、都道府県ごとの差は見ていません。月給は下限額の比較で、賞与・夜勤手当の実支給額、住宅手当や家賃補助の実質価値は含みません。首都圏は生活費が高いため、実質的な手取りの価値は別途考える必要があります。
まとめ
- 月給欄(提示額)は首都圏23.9万円、関西・東海21.9万円で2.0万円開く
- 基本給は首都圏17.7万円、関西・東海17.5万円で、差は0.2万円
- 差の正体は手当。提示額と基本給の差額は首都圏5.9万円、他地域は3.3〜4.5万円
- 地方の施設は、月給欄で張り合わず基本給と手当を分けて書く
自社の求人票の基本給を、地域ブロックの中央値と並べてみてください。